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第3話(17)

 恐る恐る目を開けて確認すると……。  そこには、月夜がいたんだ。  月夜の視線の先では隼翔さんが壁にもたれるようにして崩れている。 「隼翔……貴様!!」  月夜は隼翔さんを見下ろし、呻り声を上げている。  こんな月夜は見たことがない。  だけどどうしてここにいるの……?  だって今、俺が隼翔さんの家にいるのなんてたまたまはち合わせになっただけなんだ。  だから当然、月夜が知るわけもないのに。  肩で息をしている月夜の背中を見つめ、俺は今、目の前の出来事に呆然とする。 「帰るよ、亜瑠兎」  月夜は頽れている隼翔さんから視線を外して振り返ると、肌蹴ていた俺の服を簡単に直した。  俺の身体が宙に浮く。  月夜が、俺を横抱きにしたんだ。  月夜の突然の登場で意味もわからず、やや混乱気味の俺は、月夜の背中越しから隼翔さんを見下ろした。  すると彼は首をさすりながら苦笑していたんだ。

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