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第4話(2)

 もう最後の方は涙が込み上げてきたせいで掠れてしまった。  ここで泣いたって、どうしようもない。  もう別れることは決まっているのに……。  余計、惨めになるだけなのに…………。  せめて泣き声だけは漏らさないよう、俺は強く唇を噛みしめた。 「亜瑠兎、違うよ。それは誤解だ」  何が違うっていうんだろう。  だって、どう考えたって月夜が見合いのことを教えてくれなかったのは、『知らせる価値がない』っていうことでしょう?  苦しい。  悲しいよ。  俺って結局は月夜にとって邪魔者なんだ。 「亜瑠兎……見合いの件は断ったんだ……。 いくら華道家の当主になるからと言っても、まだ学生には変わりないし……それに……俺はには好きな人が……付き合っている人がいるからと断った。 だから、もうそれは終わったことだ。 決着がついたことで亜瑠兎の気をもませることはないと思ったんだ。まさかこんな形で知られてしまうとは思ってもみなかった」

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