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第7話(2)
そんな俺たちは今、月夜が生けた花の展示の最終確認をしている。
月夜は若い華道家として人気を得ている。
テレビや雑誌にと引っ張りだこだ。
だから彼の背後では月夜を一目見ようと、邪魔にならない程度にマスコミがいるわけだ。
だけどさ……。
なんか俺。視線がチクチク痛いんですが……。
俺、また予定を間違えたのかな?
視線を感じる方向に振り返れば女性記者数人と目が合った。ほぼ反射的に小さくお辞儀をする俺。
女性記者は顔を逸らし、なんでもないふうを装っている。
ああれ? 俺、彼女たちに何かしたっけ?
そ の途端、月夜に引っ張られ、おかげで俺は月夜に倒れかかる。
「きゃあああああっ!!」
途端に黄色い声が展示場に響き渡る。
……耳が痛い。キンキンする。
「亜瑠兎 、お仕置きね」
耳元でぼそりと告げられる言葉に、血の気が引いていく。
「ええっ?」
やっぱり、俺。何かしくじったのか?
ここ最近、やっと月夜の秘書として上手く立ち回れていると思ったのに……。
ひとりで冷や汗をかいていると、月夜は口を開いた。
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