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第21話(マイク)

シェルターへ花束を届けたら後は俺のオフ。 お気に入りの古書店で、ハーブ関連の蔵書を探す。 古い本の香りが立ち込めるレトロな店が好きだ。 いくつかの本を手に取って眺めていると背後に人の気配を感じた。振り返えろうとすると、突然後ろから抱き竦められた。 「マイク」 「え?ブライアン?」 「まだワイルドと別れてない?」 「別れてないよ」 「アイツに飽きたら俺が相手してやるって言っただろ?」 「スティーブとは別れる気は無いから!それより、今までどこ行ってたんだよ?」 ブライアンは、スティーブの家で半年前に別れてから今まで音沙汰無しだ。 「俺に会いたかった?」 「別に。でも心配はして、、、」 顎をグッと掴まれて、無理矢理後ろからキスされてしまった。 「んっ!!ちょっと!!やめろ!!」 「素直な方が可愛いぞ」 「本当にいきなりキスするのやめてくれ!!」 前回はブライアンとキスした事がスティーブに伝わって、大変だった。 「じゃあ次は事前に言う」 後ろから抱きしめたままブライアンは離さない。 「そうじゃなくて!」 「俺がそんなに嫌い?」 「嫌いじゃないけど、俺はスティーブを愛してるから」 「今は、だろ。 それよりコレ。俺の連絡先!」 ブライアンから名刺サイズのカードに電話番号が書かれた紙を渡された。 「もし、困った事が起きたら俺に連絡しろ。お前の事は俺が守る」 「どういう意味?」 「その時が来たら分かる。この番号は誰にも教えずにお前が持ってろ」 「スティーブにも秘密にしろって?」 「ああ、そうだ」 恋人に秘密を作って、良い結果になった事なんて一度も無い。 「スティーブには秘密を作りたく無い」 「誰にでも、秘密の一つや二つあるもんだ」 「俺は無いけど」 「じゃあコレが一つ目だ」 本当にブライアンはいつも強引。 「俺を信じろ」 ブライアンは不思議だ。 いつも強引なのに、優しい。 そして、どこか懐かしい。 まだ数回しか会っていないのに、俺の心にスッと入ってくる。 何故だか本能的に彼を信じても良いと分かっている。 「分かった」 そう返事するとやっと背後から抱きしめていた腕が解けた。 「ブライアン」 振り返るともうそこに彼は居なかった。

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