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第48話(トム)

エレナが耳打ちする。 「日本の高倉商事代表、高倉光宏氏です」 「タカクラシャチョウ、ゴブサタシテマス。 オアイデキテコウエイデス」 「トム•コーヴィンさん、日本語が相変わらずお上手ですね。 昨年のニューヨーク支社立ち上げにはご尽力頂きありがとうございました」 「また、なにかあればいつでもお力になりますよ」 ミスター高倉へ挨拶を交わすとエレナから別の招待客へと連れられる。 「社長、MCUテクノロジーのベンジーCEOです」 「ベンジー社長、先日は視察させて頂きありがとうございました」 「こちらこそ、有意義な話し合いが出来て感謝しているよ」 「ええ、ぜひ話を進めて行きましょう」 ベンジーCEOと握手を交わした。 【トム•コーヴィン。所詮、成り上がりの庶民。品の無い男だ。】 相変わらず、筒抜けの心の声は清々しいくらいの罵詈雑言に溢れているな。 ベンジーは要注意人物だ。僕を嫌ってる。 それに、ちょっと怪しい。 【この男に一体何の価値があるんだ。全く理解出来ない】 探りを入れたい所だが、なかなかボディータッチするほど心の距離は縮まらない。 まあ、いいさ。いずれ分かる。僕に隠し事は出来ない。

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