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第52話(トム)
「社長」
いかん、、、駄目だぞ。カイトはダメだ。
「社長」
いくらタイプだからって10代の男の子だぞ。
犯罪だ。いや、確か19歳だったな。正確には犯罪じゃない。酒だって本当はもう飲める。
いや、問題はそこじゃない。
「社長!!」
エレナの半ギレの声にやっと思考が現実へ戻ってきた。
「失礼、なんだったかな?」
「社長、ブレナン博士です」
「ああ!ブレナン博士!ご無沙汰しています」
「ミスターコーヴィン、心ここにあらずね」
「失礼」
「いいのよ、あなたは昔からそう」
ブレナン博士とは二十年来の付き合いだ。以前、僕が買収したバイオ研究所の主任研究者だった。
それにブレナン博士とは一度だけ寝た事もある。カイトには秘密だが。
「それより、紹介するわ。ウィリアム•ハワード。私の夫よ」
「コーヴィンさん、お会い出来て光栄です」
白髪の混じったブラウンの髪、優しそうだが
握手をすると、この穏やかそうな男が只者では無い事だけはわかった。
【トム•コーヴィン。WIAに引き込みたい。彼の交渉テクニックは使える】
WIA?はて?なんだっけな?
「やあ、今日は来てくれてありがとうございます。奥様には昔からお世話になってます。ミスターハワード、お仕事は何をなさってるんですか?奥様のような研究者の方ですか?」
「僕は普通の会社員ですよ。証券会社に勤務しています」
名刺にはSTAR LINE HOLDINGS CO., LTD.と書かれている。
【WIAニューヨーク支部長という肩書きは信頼を得るまでは出さない方がいいな。特殊諜報機関に関わりたがる投資家はいない】
へぇ〜特殊諜報機関か。見た目と違って意外と武闘派なのかな?
「ビジネスの話はいつでも歓迎ですよ!私のプライベートナンバーは奥様が知っていますのでいつでもご連絡を」
「ありがとうございます」
ウィリアム•ハワード。要注意人物だな。
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