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第55話(カイト)
やっぱり、カッコいい。かも。
彫りの深い顔立ちに、キリっとした二重。顎髭も大人の男って感じ。
いっつも良い匂いするし、オシャレだし。
遊び慣れてるみたいだけど、多分、本当は優しい。
何でトムみたいなセレブが俺みたいなガキを構ってくんのか分かんないけど。
パーティー客に囲まれ握手を交わしているトムを見ていると、突然目が合った。
こちらに向かってコッソリ微笑まれる。
好きになるってこんな感じだっけ?
目が合うだけでドキドキする。
特別扱いされると嬉しくてふわふわ宙に浮いたような気分になる。
そんな事を考えていた時、ステージにトムが上がった。
ホールの照明が少し絞られ、ホールの真ん中にある楕円形のステージにライトが当たる。
ステージの右端側に立っていたからトムの顔があんまり見えないや。
「やあ、皆さん、こんばんは。今日はお集まり頂きありがとうございます。今日は我が社から皆様へ大事なご報告があります。
ところで、皆さん1969年7月20日は何の日かご存知ですか?
そう。
アポロ11号が有人飛行で2人の人間を世界で初めて月に着陸させる事に成功した日だ。
あれから半世紀。
ついに我が社の宇宙開発産業はNASAと提携し月面コロニー計画を始動します!」
NASAと月面コロニー計画?!すごい!!
拍手が盛り上がっていた時、一際大きな破裂音がした。
キャーーー
それと同時にホールの入り口付近から甲高い悲鳴が聞こえた。
なに?銃声?
ホールの入り口とステージわきから4人の武装した男達が乱入して来た。
「嘘だろ」
パーティー客はまるで津波のように出入り口へ雪崩れ込む。
一瞬でパーティー会場は大混乱だ。
ダダダダダダ
武装した男が天井へ向けた威嚇射撃をする。
セキュリティの2人がすぐにトムを守るため盾になり慌ててステージから下ろす。
そこへ武装集団はライフルのような銃身の長い武器を構え一斉に発砲する。
すると球に当たった人間が弾けるように一瞬で液状化して飛び散る。
セキュリティの2人は跡形もなく弾け飛んだ。
あまりの光景にカイトは身動きが取れない。
逃げなきゃ!!逃げなきゃ!!
でも、身体が動かない。
トムは両手を頭の横に上げ、ホールドアップの姿勢だ。
すると、無抵抗なトムに武装集団は銃口を向けた。
嘘だろ、嘘だろ、嘘だろ!!!
トムが殺される!!!
「や、、、やめろーーーー」
バリバリバリバリッ
指先に電気が走った。
いや、全身に雷が走った。
俺はトムを撃ち抜こうとしていた男に目掛けて両手を翳す。
身体を走り抜ける雷を無我夢中で指先から放った。
俺の記憶はここまで。
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