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第72話(トム)

「どちらまでお送り致しますか?」 エージェント•ハワードから別なエージェントへと引き渡され車に乗ると、行き先を聞かれた。 「僕もカイトもニューヨークのマンダリン オリエンタルホテルだ」 「トム?」 「君と話がしたい。2人きりで。船でも2人だけで食事する約束だっただろ?まあ、どうやら朝食になりそうだが」 「分かった。いーけど、親父に電話させて。俺、スマホ無くしたみたい。トムは持ってる?」 「ああ、どうぞ」 暗記している親父の番号へ連絡する。 「もしもし?」 「カイト?カイトか?ニュースで船で火災があったって聞いて何回も連絡したんだぞ!!無事なんだな?怪我は?」 「大丈夫、スマホ無くして連絡出来なくて。今トムと居る。助けてくれたんだ」 「そうか、そうか。取り敢えずよかったよ。トムは隣に?」 「うん」 「電話代わってくれ」 「トム、親父が代われって」 「OK、もしもし? ああ勿論だよ。分かってる。大丈夫だ。信じてくれ。ああ、じゃあまた」 トムは親父と短く言葉を交わすと電話を切った。 「親父はなんて?」 「また、酒を飲もうだって」 「またかよ、親父のやつ」 本当は『息子に何かあったら殺す』だったけどね。

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