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第70話(スティーブ)

マイクはガルシアからの連絡の通り南岸のモーテルでブライアンと一緒だった。 僕が悪い。 すぐにマイクを救出していたら。 マイクを救ったのはブライアンだ。 僕じゃない。 自分に対する怒りを鎮めるのに精一杯だった。 なぜ僕じゃない? マイクを誰よりも愛している僕がなぜ1番に助けられなかった? あの時、僕はどうするべきだった? 船に乗る数百人の乗員乗客全員の命と引き換えにしてでもマイクを助けるべきだったのか? その決断を、数百人の罪無き人々の生命の責任を僕は背負えるのか? 抱え上げたマイクをモーテルの外へ待機させていたSUVの後部座席へと降ろす。 「車を出してくれ」 運転手のエージェントへ声を掛けるとマイクの隣へ乗り込んだ。 「スティーブ、海で探してくれたんだろ?海水の匂いがする」 探して探して見つけられなかったけれど。 「マイク、少し冷静になりたい」 「わかった」 マイクの表情に、また自分への怒りが込み上げる。 僕はマイクを傷つけてばかりだ。 愛したいだけなのに。

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