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第76話(トム)
さて、どうしたもんだか。
先程とは打って変わりシャワーから出たバスローブ姿のカイトは明らかに態度がぎこちない。
カイトは何に緊張しているのか?
僕はというと、秘書のエレナと運転手のウィルへ連絡を入れてからすぐにカイトと入れ替わりでバスルームへと逃げた。
僕はカイトが好きだが、カイトの気持ちはまだ知らない。
触れても分からないからね。
船ではキスをしたけど、もしカイトに恋愛感情が無ければただのセクハラだ。
バスルームで鏡に映る自分を見る。立派な中年男だ。
10代の男の子への恋愛感情をストレートに伝えるべきだろうか?
もし拒絶されたら?
この歳でソレは辛いだろ。
だけど、、、
はっきりと自覚してしまったのも事実だ。
「この僕がまた恋愛で悩む日が来るとはね」
今までは相手の心が読めた。
楽勝だった。
それが今ではこんなに緊張している自分に驚きさえ感じている。
「僕がリードすべきだな」
覚悟を決めるとシャワーを浴びてカイトの居るリビングへ戻った。
「カイト」
「なに?」
ソファーに座るカイトの前にバスローブ姿で跪いてカイトの手を取った。
「本当はタキシード姿でビシっと決めたかったが許してくれ。
君が好きだ。僕と付き合って欲しい。勿論恋人として。僕は本気だ。男性と付き合う事も初めてだが、君を本気で愛して、、、」
最後まで言う前にカイトがキスで塞いだ。
「あんた物好きだね」
悪戯小僧の様な顔をしている。
「大人を揶揄うべきじゃない」
「揶揄ってないよ」
「じゃあ」
「トムと付き合うよ。
でも俺なんかで良いのかよ?グェネスパルトロウとか、スカーレットヨハンセンみたいな女優と付き合うような男が」
「君が良いんだと最初から言ってるだろう?」
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