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第78話(スティーブ)
「ハワード支部長。お話があります」
残務処理で残っているハワードの支部長室へ行く。
「今回の件、あなたはどこまで絡んでいますか?まず、トム•コーヴィンと少年がネオヒューマンズだと知っていましたか?」
「いや、僕は知らなかった。カサドールがトム•コーヴィンを襲ったのも計算外だ」
「じゃあ、ナディール議員はどうですか?乗船していると知っていましたね?だから僕達に招待状を渡しあの船に乗せた」
「ああ、知っていた」
「なぜ、僕達とナディール議員を鉢合わせさせるような事を?今やっとナディール議員のパソコンから情報を引き出しているのに」
「君の反応が見たかった」
「どういう事ですか?」
「君がマイクの前でもナディール議員に対し任務を続けられるかどうか見たかったんだ」
やっぱりそうか。
「僕を試したんですか?」
「すまなかった。まさかこんな事態になるとは想像もしていなかったんだ」
エージェント•ハワードはスミス長官のお気に入りのベテランエージェントだ。騙し合いの天才。
「じゃあ、ブライアン•フォスターは?なぜ彼はあの場でマイクを助けられたんですか?」
「それは、俺が説明する」
突然背後からブライアンの声がした。
勢いよく振り返る。
気配は無かったはずだ。
「やあ、エージェント•フォスター。毎回ちゃんとセキュリティを通してくれるかな?」
「この方が早いから」
「どういう事ですか?」
「エージェント•ワイルド。今から君にレベル8の機密情報アクセスを与える。
フォスターはネオヒューマンズだ。コードネームはジャンパー。彼は瞬間移動出来る」
「瞬間移動!?」
「ああ。彼も万能じゃないがポイントを設定すればあらゆる場所へジャンプ可能だ」
「いつから?いつ覚醒した?」
「一年前だ」
「WIAを辞めた後か。でも、なぜWIAに戻らなかった?」
「前にも言ったが今はスミス長官に雇われてる。本当だ。
それにWIAにはまだ裏切りモノが居る。俺は動きやすいように組織には入ってない」
突然現れる原因は分かったが、、、
「ブライアン、なぜ君はマイクに関わる?半年前も今回も。二度も君はマイクを助けた。なぜなんだ?」
「マイクは、俺の未来の恋人だからだよ」
「何を言ってるんだ?!」
カッとなりブライアンの胸ぐらを掴み壁へ押し当てた。
「冗談を言っている気分じゃないんだ。首の骨を折られたくなかったら口を慎め」
だが、確かに掴んでいたブライアンが一瞬で消えた。
「痛てぇな。冗談じゃねえよ」
消えたと思ったブライアンは背後にまた現れた。
瞬間移動か。
「預言者が見たんだよ。俺とマイクの未来を」
「そんな」
「お前の恋人が、俺の未来の恋人だ」
「嘘だ」
中国の山東省(さんとうしょう)煙台市(えんたいし)で匿われている未来を見るネオヒューマンズ。それが預言者だ。
「信じない」
「預言者の的中率は86%以上だ」
「じゃあ、今この場で君を殺す。そうすれば残りの14%の未来になり予言は外れる」
「お前には無理だ」
「どうかな?」
一触即発の雰囲気にハワードが仲裁に入った。
「2人ともやめるんだ。今は内輪で揉めている場合じゃない。
それに、預言にはまだ続きがある」
「え?」
「マイクもネオヒューマンズだ。彼が覚醒した時、世界は終わる」
「どういう事ですか?!」
「分からない。だが、君を試すような真似をしたのは、マイクと世界を天秤に掛けた時、君は正しい選択が出来るのかが知りたかった。
マイクが覚醒すれば世界が終わる。
君は現にマイクを奪われたくないという理由だけで今、フォスターを殺すとまで言った。
君は君が思う以上に危険な道を進み始めているんだ」
背筋に冷たい汗が流れた。
僕は、一体どうするべきなんだ?
「預言の内容をもっと詳しく知りたい」
「預言者に質問は許されていない。そもそも預言者に会えるのはスミス長官だけだ」
「マイクの覚醒で世界が終わるなら、それを止める。いつどこで覚醒するかを知りたい」
「君が行っても会えないぞ。預言者はミストが守っている」
霧や蜃気楼を操るネオヒューマンズが預言者を隠しているのは知っている。
「それでも、行きます」
「落ち着け。スミス長官は次の新月に新たな予言を聞きに中国へ飛ぶ。そこに同行出来ないか私から直に打診しておく」
「待てません」
「でもそれが預言者に近づける最短ルートだ。
それに問題は予言だけじゃない。
カサドールが動き出している。我々よりも先にネオヒューマンズであるトム•コーヴィンを見つけ出しハンターを送り込んだんだ。
どうやってカサドールがネオヒューマンズを見つけ出したのかも分かっていない。
カサドールはネオヒューマンズを狩る。
マイクがいつ狙われてもおかしくないという事だ」
今、冷静にならなければマイクは守れないという事か。
「スティーブ、俺もお前もマイクを守りたいだけだ。今は争ってる場合じゃない」
「分かった。ブライアン、君とは停戦だ。マイクを渡すつもりは無いが」
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