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第80話(トム)
株は大暴落。損害賠償に会社への問い合わせやクレーム。
ここまでは、予想通りだ。
カサドールという謎の武装集団に、ネオヒューマンズが大暴れした事件だ。テレビからゴシップ紙までが大々的に僕のクルーズ船を報道するかと思ったが。
翌朝にはクルーズ船は事故扱いになっていた。
死者は無し、怪我人は居たが、すべて漏電による火災事故として処理されている。
WIAの影響力の大きさを物語っているようだ。
全てが無かった事にされていた。
僕はエレナと警察の事情聴取を受け、弁護士や保険会社とのやり取りに忙殺される一日となった。
クタクタになって何とか自宅に着くとそのまま寝室へ直行した。
「ハニー、ライトを」
音声認識で灯を付けようてしたが反応が無い。
「ハニー?」
「コーヴィンさん」
真っ暗な寝室の奥から突然、知らない男の声がした。
「誰だ?!」
ベッドサイドにあるアンティークのソファー椅子に誰かが座っている。
「私はジョンソン•スミス。WIAの長官だ」
「良い加減にしてくれ。またWIAか。今日はもうウンザリなんだよ。
それにウチのセキュリティどうなってる?!明日はセキュリティ部門の部長はクビだな。ゆるゆるじゃないか」
「コーヴィンさん、あなたに私から仕事のオファーを持って来ました」
「こんな深夜に?WIAの経営相談?経営相談なら毎週火曜16:00まで。秘書のエレナを通してくれ」
「そんな話しじゃない事は分かっているだろ?」
顔が見えないが、白人男性のようだ。
年齢は50代ぐらいか?
「ところでコーヴィンさん、中華料理はお好きですか?」
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