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第81話(マイク)
クルーズ船の事件から丸二日。
体調不良ながらも土日の花屋の営業を何とかこなした。
幸い、土日はホテルやレストランへの定期配送や早朝からの花の納品もない。
俺は日曜日の営業を終えて簡単な店仕舞いを済ませる。
「こんな所かな」
店に鍵を掛けて出ようとした時、ドアが外から開いた。
「マイク」
「スティーブ?」
金曜の事件ぶり。
「マイク、、、ちょっと話せる?」
「ここで?」
「君が良ければ」
「大丈夫」
「金曜はすまなかった。散々なデートになって」
「俺の方こそ。ブライアンとは何でもないから」
「ああ、わかってる。僕も船で会った女性の事、説明してなかった」
「機密情報だろ?」
「彼女はナディール上院議員。前に潜入した違法な武器取引の上客リストにいた。僕は月曜日、彼女のパソコンへウィルスを仕込む為にパーティーで近づいた、、、って聞きたいのはソコじゃないな。
彼女を確かにパーティーで口説いたけど、睡眠薬を使って眠らせた。
彼女とは本当に何もなかったんだ。ソレが真実」
「そっか、、、」
俺は何を言えば良いんだろう?
この二日間ずっと考えてた。
俺の存在は、スティーブの足枷になってるんじゃないのか?
もし今後、任務で何かある度に沢山の人達を救うスティーブの足を俺は引っ張り続けるのか?
やっぱり俺たちは一緒に居るべきじゃない?
ハワードは言った。
《彼はその沢山の命よりもあなたの命を選びかねない精神状態になっています。》
俺はスティーブの何の役にも立ってない。
それどころか、俺は、、、
少し、冷静になる時間が必要なのかも?
気不味い沈黙を破る様に、スティーブは跪いて小さな箱を両手で大切そうに取り出した。
「僕はここで君を食事へ誘った時から決めていたんだ」
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