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深く、だけど確実に_2

「失礼します…」 ノックをして会議室の扉を開けたのは芳野だった。 「どうした、芳野」 すかさず田原さんが反応する。 「確認してもらいたい書類があって田原さんを探していました」 中に入っていいですか?と聞く芳野に田原さんが俺にアイコンタクトをした。 俺に気を遣ってるのはすぐにわかったから、俺も瞬時に頷いて合意した。 だけど、自分のその行動が後に後悔を招くことになる 「わかった、入ってきていいよ」 「ありがとうございます。…これなんですけど」 「…あぁ!これね!…はいはいはいはい…!あ、これハンコが必要だな」 芳野が出してきたのは少し重要な書類だったらしい、田原さんはまじまじと書類をみながら「ごめん!ハンコ取りに行ってくるから芳野くんここでまっててー」と会議室を出ていってしまった 途端に俺は芳野と二人きりになってしまう、俺はパソコンで続きを見るわけにもいかず手持ち無沙汰になる。 さすがというべきか、芳野はそれに気づく。 「日下さんは田原さんと何してたんですか?」 「…えーっと、…少しな…」 「…少し?」 さすがに不自然だよな、でも先ほどの同行の事で心の中で芳野を外したこともあり内容は説明しづらい 「ふーん…」 「な、なんだよ…」 なんて返そうか悩んでいる俺を見ていた芳野は、しばらく俺を見つめていたが 「…っ!?おい!芳野っ!」 突然芳野は俺に急接近した 「…日下さんって嘘つくの下手くそ?」 くすりと笑う芳野と俺の顔の距離はそれはもう近い、今の言葉をよく聞いた言葉で例えるなら ”今にも唇同士が触れ合いそうな距離”というやつだった 「…っ!お前!!はな、れ…ろ、ょ…っ」 声をだすと自分の吐息やらなにやらが芳野にかかりそうで、それが妙に恥ずかしくて無意識に言葉尻が弱くなる 「顔、赤いですね、日下さん…、かわいい」 芳野は至近距離で不敵な笑みを浮かべ、いつの間にか腰には芳野の手が自然に添えられてた 「はっ、離れろよ!!」 俺は柄にもなくテンパっていた、だから気づくことができなかった 芳野は器用に俺の後にあるパソコン画面を盗み見ていたことに 「…なんですか?これ?」 俺が芳野の行動に気づいたのは至近距離で険しい顔になってつぶやいた芳野を見たときだった その時はもうすべてが遅かった。 やっと俺から離れた芳野はまだ険しい顔でさっきまで俺が見ていた動画を見ている。 「…はぁ」 一気に面倒になった俺はでかい溜息をついた 見られてしまった… 芳野が部屋に入る前にもっと身の周りを確認すればよかった、今更もう遅いが… 「この動画、なんですか?」 パソコンの動画をまじまじと眺める芳野に俺は諦めるしかなかった 「…、本物なんだ。それ…」 「本物?」 「近いうちに、いや、スケジュールに問題なければ今週中にでもこの動画の検証取材に行くつもりだ」 「…今週中ですか」 「急だからな、スケジュールを田原さんと調整してたところだ」 下手に隠すより、正直に話せばいいと俺も腹を括った 芳野が行きたいといい出したら止めればいいだけの話だ… 「すみません、入る前から会議室のドアで聞き耳たててました。日下さんに直接関わることなんですよね?」 「は?」 聞き耳立ててた?悪びれることなくしれっと言う芳野に逆に怒りが湧いてきた。 「あのな!そういう事はあんまりよくないぞ!!」 「安心してください、日下さん以外にはやらないので」 「そういう意味じゃなくて!!」 注意しても反省すらしない芳野に、さすがに頭にきて声を荒げた瞬間 また芳野が俺との距離を詰めてきた。 「守らせてください…」 「…っ、…?」 芳野の手が俺の肩に触れる。 「おい、俺、怒ってるんだけど…」 「盗み聞きしたこは謝ります。でも日下さんだって俺に話すつもりなかったでしょう?」 「…!」 こいつ、痛いところついて来やがった…

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