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第5話 レクチャー

 舌先が痺れる。  食べ物以外を口に入れたことなんてないから、どうしたらいいのかわからないまま、白岡先輩の舌に擦られて、絡まり合って、ただ翻弄された。 「あっ……」 「キスも初めて?」 「んっ違っ」  キスは、した。 「へぇ、キスだけはあるんだ」  貴方と。けれど言えるわけがない。それはこっそり盗んだだけだから。 「じゃあ、ここは?」 「あっ!」 「ここ……」  触れられた。 「は、じめて、です」  形を確かめるように撫でられて、ピクンと跳ねてしまう。 「あ、あっ……っあ」  スラックス越しでも充分に刺激的で、思わずしがみついてしまう。そしてしがみついたところで首筋に噛み付かれて、大きな掌で包み込まれた股間がたまらなくて。硬くしてるのを撫でられて擦られて、知らないことに戸惑う腰は勝手に揺れる。 「あ、あ、あっ」 「お前の反応がいいから、ほら」 「!」  そして、同じように硬くしている白岡先輩を触らされて。 「あ……っ、ん、ふ」 「渡瀬」  どうにかなってしまいそうだ。  ファーストキスは体育館倉庫の埃の匂いがした。  二回目のキスはさっきした。濡れて、息苦しくて、そして、白岡先輩にキスされてることに嬉しくて。 「あ、あ、あっ……ん、あぁ!」  首筋にキスなんてされても、そんなところに触れられたらくすぐったいだけのはずなのに、おかしなほど甘い声が上がる。自分の口から。その口を塞がれて、また白岡先輩の舌に舌が捕まる。 「ンンんっ」 「お前、敏感だね」 「っ、ん」 「うなじにキスしただけで、そんな顔して」 「こ、れはっ」  どんな顔をしてるのかわからないけれど、きっとおかしな顔をしてるんだろうと慌てて俯いた。 「興奮する……」  そして俯いた俺の耳元でこっそりとそう囁かれ、ベッドの上に転がされた。 「ああっ」  ワイシャツのボタンを外されながら、キスが首筋じゃないとこにもされる。ゾクゾクしてしまったのはボタンが三つ四つと外されて、そして。 「小せぇ乳首」 「あっ!」  白岡先輩がそこにもキスをくれたから。 「あっ、あっ」 「けど……」 「あっンっ」 「その反応、ハマる」  薄っぺらい胸板にくっついた二つの粒の片方を齧られて、もう片方は指に摘まれて、そんなところ、女性でもあるまいしと思うのに、あがる声はまるで喘ぎ声だ。 「へぇ、ちゃんと刺激してやると硬くなるんだな」 「やぁ……ンっ」  ほら、甘ったるくて。 「エロいな、これ」 「あ、あ、あ、あっ」  媚びてて、ひどい声。 「しかも、こっち、すごいけど」 「あっ! 待っ、っ」  阻止しようと手を伸ばしたけれど、わずかに遅かった。下着ごと、スラックスを脱がされて、はだけたワイシャツ一枚になった俺は心許ない格好にどうしたらいいのかわからない。 「お前、カウパーエロいな。ほら、濡れた音がする」 「や、ぁっ」  白岡先輩の手に溶かされてしまいそうだ。 「あ、あ、あ、ダメ、先輩っ」  くちゅくちゅとはしたない音を立てて扱かれて、恥ずかしいのに腰が揺れてしまう。その掌に包まれておかしくなりそうに気持ち良い。 「あ、あっ先輩」 「それ」  ペニスを人に初めて扱かれた。 「先輩って呼ばれるのさ」 「あ、あ、あ、ダメ、先輩っそんなしたら、ダメ」 「しかも、相手は実際に後輩だし」  ずっと好きだった人にペニスを扱いてもらってる。 「いけないことしてる気分になって興奮する」 「あ、あ、あっ先輩、先輩」 「渡瀬」 「あ、あ、ああああああっ!」  名前を呼ばれながら、きつくその手に握られて射精した。  知らない快感だ。 「あっ……ぁっ……」  自分で吐き出すための自慰にはない快感。 「あ、白岡、先輩? ぇ、待っ、そんなとこ、汚いっ、待っ、シャワーをっ」  快感に沈みそうになるけれど、必死になって手を伸ばした。貴方の手を汚してしまった。それだけでなくその手に今、撫でられた。後の――。 「いいよ。へーき……っていうか、汚くないから。ちっとも。俺の方がずっと」 「ダメ、ですっ触っちゃったらっ」 「明日も、買ってくれるってこと、だよな?」 「やっ、待っ」  たった今自分が吐き出した白を孔に塗り付けられて、恥ずかしいのに、申し訳なくて慌てて伸ばした手を掴まれ、そのままベッドに押しつけられた。 「そしたら場所、ラブホにするか、ローション用意しないと」 「待っ」  キスも、首筋への愛撫も、乳首の快感も、人の掌がくれる快楽も知らなかった。触られたことのない場所ばかり。味わったことのない快楽ばかり。それなのに反応して、身体が跳ねてしまう。感じてる自分にも戸惑うのに。 「っ」 「けど、全部初心っていうの、いいね」 「? え」  どうにかなってしまいそうなんだ。どれもこれも知らない。何もかも初めてで。たくさん妄想した。あのキスの続きをたくさん妄想してたくさん先輩に夢の中でなら抱かれたことがあるけれど。リアルのくれる快感はそんなものじゃなくて。 「舌出して?」 「あ、ンンっ……ふ、ぁっ」  味気なかった初恋が嘘みたいに濃密な味に変わる。 「キスはこうするんだ」 「あっあ、先輩」  ゆっくりと舌が入ってくる。ぬるりと柔らかく絡めとられて、舌の裏側を擦られるとたまらない心地になった。そんなところを触られたことがないから。 「答えてみな。同じことしてみればいいから」 「ん、ンン……んん」  誘われるがままに舌を自分からも絡めた。先輩の舌の裏側を擦って、舐めて、しゃぶって。 「上手」 「……ぁ」 「お前、高校の時から飲み込み早かったもんな」  そんなの覚えててくれたんだ。  先輩の頭の片隅にでも俺がいたなんて。どうしよう。嬉しくてたまらない。 「渡瀬」  名前を呼ばれるだけで嬉しいのに。 「あ、あ、あっ、待って、そんなとこ、あっ、っ……」  脚を拡げられた。 「渡瀬」 「あっ……ンン」 「優しく抱くよ。ちゃんと、丁寧に」 「あっ」  さっき精液を塗った孔をつぷりと抉じ開けられ、自分から堪えきれず溢れた甘い甘い声は濃密で、一瞬で今まで山のように妄想していた先輩とのセックスを全部塗り替えるほどだった。

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