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第6話 俺の先輩

「はぁっ……ん、ン」  中に白岡先輩の指が入ってる。あの先輩の指が。  高校の時、ずっと好きだった。ずっと見るだけだった人。女子に人気があって、男子からも好かれてて、部員に信頼されて、かっこよくて。声をかけることなんてほとんどできなかった。  同級生だったら話しかけたりできるのだろうかと羨んでみたり、先輩のバスケを応援しているってことにしていくらでも見ていられるから、と後輩でいられることに喜んでみたり。  でも、一つ年上のこの人は俺よりも一年早く卒業してしまうから、悲しくて、寂しくて。  けれど、好きですと告白なんてできるわけもなかった人。 「あぁあっ!」  先輩の少しまた奥に入ってきて、自分のとは思えない甲高い、悲鳴じみた声が上がった。 「感じた?」 「!」 「急に締め付けてきた」 「あ、先輩っ」 「気持ちいい?」 「あっ……ン」  先輩の指が俺の中にある。 「せんぱ、ンンっ……ん、ぁっ……あっ……ン」  先輩の舌が口の中を弄る。 「あ、わかんなっんんん」 「そ?」  先輩の舌にただ必死に答えて、真似して舌を差し出した。 「お前」 「っ……ン」 「可愛いね」 「!」 「あった」  何が? なんて訊く余裕なかった。 「ここ、だろ?」  なぜか急に身体が飛び跳ねたから。 「あ、あ、あ、あ、何、指、あぁぁぁぁ!」 「すげぇ、熱い」 「あ、あ、あ、ダメっ、そんな指、あっ、あああっン、乳首、も、なんて」 「締めつけてくる」 「ああっ」  先輩があったと呟いた時に掠めた場所を撫でられる度に身体が跳ねて、言葉にならない嬌声しか出ないから。 「あぁあっン、ダメ、先輩、先輩っ、そこ」 「前立腺だよ」 「あ、や……」 「や、じゃないだろ。前、こんなにして」 「! や、ああああああ」  言われて、自分の下腹部を見て目を丸くした。そして、タイミングでまた中のそこを撫でられて、自分のペニスがピクンと跳ねてた。跳ねて、小さな口からとろりと透明な液が溢れてる。 「あ、何、ダメっ、これっ」 「中、の熱が上がった」 「あああああっ」  濡れた音がひどく艶かしい。忙しなくくちゅくちゅ音がする度に中にあるそれが撫でられて、また前が濡れて、身体がおかしくなってしまう。 「キス、好き?」 「あ、わからな、っんんんんっ」  舌を差し込まれながら、またもう少し奥まで指が入ってきて。 「ンンっ」  中を指が行き来する。あそこを通り過ぎられると切なくて、たまらない気持ちになる。 「あぁあっ」  乳首を喰まれながら、中を擦られて、困ってしまう。気持ち、い……い。 「あ、先輩」  気持ちいい。 「渡瀬」 「……先輩」  気持ち――。 「! ダメ、ですっそれ、は、汚いっからっ」  うっとりしかけていたけれど、そこはと慌てて手を伸ばした。うなじにキスをされ、乳首を舐められて、お腹のところにもキスをされて、とろけかけたけれど、そこはダメだと手を伸ばす。 「あ、先輩……ああ、そこ、はっ」  ダメっていうべきなのに。こんなの、シャワーも浴びてないのに、そんなところに口をつけてしまうのは汚いのに。 「あぁぁあっ」  先端の小さな口から透明な液を溢すペニスにもキスをされて、咥えられて、その舌使いにあがる声はどう聞いたって甘くて、とろけて、気持ち良さそうな喘ぎ声。 「汚くないよ。お前の身体は」  俺の身体は――。 「渡瀬」  他の人より? 「はぁ、すげぇ……股間、いったい」  貴方を買ったどの客よりも? 貴方が抱いた女性よりも? 「あ、先輩」 「……渡、瀬」 「もう……あの」  開いたこの身体は――。 「渡瀬、お前はさ、汚いどころか、むしろ」 「あっ」  両手で膝を割り開かれた。  そしてそこに大きくて、硬そうな、白岡先輩のペニスが。 「可愛いよ」 「あ、あっ…………あぁぁっ」  挿ってきた。 「っ、せ、まっ」 「あぁぁあっ」 「力抜け、渡瀬」 「あ、だって」  大きい。 「渡瀬」 「あ、あっ」  けれど、熱い。挿入された孔が溶けてしまいそうなくらいに熱い。 「息してみ? 渡瀬」  先輩が頭をそっと撫でてくれた。 「……あ」  好き、なの。それ。頭をぽんぽんってされるの。  今、先輩が俺の中にいる。  ずっと好きだった人。一つ上で、手なんて届かない人。話しかけるのもままならなくて、挨拶をするのさえぎこちなくて、下手で、いつもそんな俺に笑って挨拶を返してくれた人。 「あ、あ、あ」  その人が今、中にいる。  買ったんだ。今、この人のことは買ったから、誰にもあげない。俺の――。 「渡瀬……」 「あぁっ……ン」 「何? 急に緩めて挿れてくれた」  俺の先輩。 「渡瀬、もっと中、入るよ」 「あっ……ぁ」  ゆっくりと中を白岡先輩のペニスが突き上げる。ゆっくり奥まで入ってきて、その圧迫感に喉奥から溜め息が押し出されるようにふわりと溢れた。 「あっぅ……ン」  またゆっくり引いて、またゆっくり突かれて。 「あっ先輩っ」 「渡瀬」  目が合うと気恥ずかしかった。おかしな顔をしてたかもしれない。中に先輩がいることに夢中になってたから。太くて、硬くて熱い白岡先輩のペニスに。だから咄嗟に俯いてしまおうと思ったけれど、できなかった。 「く、っ……ん、ぅ、ンンっ」  キスされてしまったから。そして舌先を差し込まれて口の中を舌でも擦られて。 「っはぁっ、あ、あ、あ、あ、先輩っ」  孔もペニスで擦られて。喉元を晒すように背中をしならせ喘いでしまう。 「あっ! あぁぁぁぁ」  甘い、甲高い声しか溢れなかった。 「あ、あ、あ、先輩、あっ」  何も言葉にできないくらい、ペニスでさっきの場所を撫でられて擦られて、喘ぎ声しか零れなくなる。 「渡瀬」 「あ、せ、ぱいっ、あ、あ、あ、あ、っンん」 「すごいね、お前の中」 「あ、んんん」 「トロットロ」  だって、俺の中に先輩がいる。 「気持ちいい、お前の中」 「あっ……」  ずっと好きだった人が俺の中にいるんだ。 「あ、嬉し」  その言葉で達してしまいそう。先輩が、男の俺を抱いて気持ちいいと思ってくれるなんて。 「あぁ、もっと、奥も」  先輩が俺の身体で気持ち良くなってくれるのがたまらなく嬉しかった。 「おめでと、初体験」  だからきゅうって中を締め付けてしゃぶりつく。 「っ、渡瀬っ」 「あの場所も、ください……して、欲し」  手を伸ばした。俺のことを貫いて、突き上げてくる先輩に手を伸ばして。 「もっと、欲しい、ですっ、先輩」  捕まえた。 「あ、あ、あ、っあアっ、んんん、あ、先輩、せんぱ、あ、もっ」 「っ」 「あ、あ」  必死に先輩を。 「あ、っ、っ、っ」 「いいよ、渡瀬、イって」  まるで「ほら」と促すように、白岡先輩が腰をクイっと突き入れるのがたまらなく気持ち良くて。 「渡瀬」 「あ、ンンんっ」  そして、先輩の呼吸もどんどん乱れて、激しく中を擦り上げられて、そこから先は訳がわからなかった。ただ、何度も先輩のことを呼びながら、突き上げられる度に甘く啼いて、ただ。 「渡瀬っ」 「あ、あ、あ、っ、あああああああああ」  無我夢中で捕まえていた。

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