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第22話 躍る初恋

 初恋なんてそんなものだ。  ほんの些細なことで一喜一憂できてしまう。  例えば、廊下ですれ違った時、目を合わせようかどうしようか、と迷って戸惑って。向こうからやって来る先輩は同級生に囲まれて、俺なんかには気がつかないかもしれない。挨拶しようにもあんなにたくさん話しかけられてるところに、どんなタイミングで挨拶したらいいのかわからない。先輩の隣の人が話しかけた時に自分の挨拶が重なったらどうしよう。楽しそうな会話に挨拶がかき消えたらイヤだな。 『よ、渡瀬』  あれこれ考えていたら、貴方から声をかけてくれた。 『こ、こんにちはっ』  俺は素っ頓狂な声で挨拶を返す。 『あぁ』  先輩がその下手くそな俺の挨拶に笑って通りすぎる。  ただそれだけでその後の一日がなんとも言えない幸福感で満ちる。高揚感に蕩ける。初恋なんて、そんな感じで――。 「ミキ」  初恋はいとも簡単上がって下がってを繰り返す。 「こ、こんばんは」  二日ぶりに会った貴方が優しく微笑みかけてくれる。  ――今夜、お願いします。  そうメッセージを送った五分後、貴方が返事をくれる。  ――りょーかい。っていうか、お願いしますっていう言い方に笑った。  その返事に、それなら次からなんて誘えばいいのだろうと考え込んでみたり、りょーかい、の文字を何度も何度も眺めてみたり。初恋は――。 「あっ……ン」  いとも簡単に俺を持ち上げて、振り回すんだ。  毎回同じホテルじゃ顔を覚えられてしまうから、別のホテルにした。今度は見事な‘夜景じゃなくて、ビジネス利用されることの多そうなホテル。だからか、隣にはオフィスビルが大きな道路を挟んでそびえ立っていた。まだいくつかの窓には煌々と明かりが灯っていた。 「あぁぁあっ」  そのオフィスビルの向かい側、ガラス窓に背を預けて、蕩けた声を上げている。 「ミキ」 「あ、あ、あ、先輩っ、の、指」 「キツくなるのな……ここ」 「あぁあっ!」  指が孔を中から解してくれるのを邪魔しないように、はしたなくも脚を大胆に拡げて、甘い声を上げた。 「あっ……だって」 「この前の居酒屋はここ、してないから」 「あっ!」  指を中で曲げられて、あそこを押し潰すように撫でられると、前が反応した。とろりと透明な蜜を小さな口から溢して、腹の上に蜜の溜まりを作ってしまう。 「痛い?」  フルフルと首を横に振った。 「い、たく……ない、です、ん……ン」  喘ぎに代わりそうになってしまうのを必死に堪えて、そう告げると、先輩がキスをくれた。孔を指でくちゅくちゅ音を立てて解しながら、舌を差し込んで、口の中でも同じような音を立てて、中を解してく。 「んんん、ンくっ……ン、ぁっ」  キスにも、前戯にも喘いで、孔で指にしゃぶりついて、唇で舌にしゃぶりついて。必死になって首を伸ばした。 「あっ……」  恥ずかしいほどの期待感が声に現れてしまってる。  先輩が、自分のベルトを外したから。かちゃかちゃと音を立てて、ベルトが外れて、先輩のそれが。 「あっ……先輩」  硬く勃起してくれてた。ちゃんと、大きくなってくれてた。  嬉しくて、つい手を伸ばして触って、先のとこ、亀頭のところを指でなぞって、硬くなってるのかを知りたくて掌でキュッとペニスの竿を握ってしまう。 「ミキ」 「っ、ぁ、すみませんっ」  無意識だったんだ。先輩が下着を下にずり下げた時にペニスが飛び出るように跳ねたのが嬉しくて、つい、無意識で手を伸ばして触ってしまった。  それを嗜められたと慌てて手を、引こうとしたら掴まれた。 「この前の続き、しようか」 「……ぇ、あ」  掴まれて、そして、指が孔から抜ける。 「居酒屋の続き……わかる?」  柔らかく、今からセックスできるようにと解された孔がキュッて口を窄めて、興奮が溢れ落ちそうなほど鈴口は濡れてしまう。  背後では、向かいのビルでまだ仕事をしている人がいるのに。  大きな大きな道路を挟んでいるからこっちのことなんてわからないだろうし、このホテルでこうして見せびらかすように情事に浸る男女なんて珍しくもないのだろうけれど。それでも――。 「ミキ」 「あっ……」  ひどく興奮した。 「先輩」  だって、居酒屋の個室ではここ、してもらえなかったから。 「ここ……に」  孔にはもらえなかったから。 「先輩の入れて、ください、ここ……に」  先輩の、もらえなかったから。 「硬いの、欲し……い」  浅い窓の縁ギリギリまで大胆にはしたなく脚を広げて、ヒクつく孔を二本の指で拡げてみせた。両手では無理だったんだ。片手で窓の縁に手をついてないと落ちてしまいそうで、片手になってしまった。片手で、指で孔を広げて、先輩に見せている。 「ミキ……上手じゃん」 「あっ……」 「向こうで仕事してる人たちがいるのに、ここでこんなやらしいことして、ミキ」 「あっ……あぁぁぁ」  ズブズブとここにペニスが入ってくるの、たまらない。 「あぁぁぁあっ!」  先輩のペニスが、入ってくる。 「あっ……ンっ、大き、い」 「っ」  入れてもらえて、震えるほど気持ちいい。 「あ、あ、あ、あ、あ、激し、いっ、あ、ああぁ!」  もっと奥まで先輩に入れてもらいたくて脚をもっと広げようとしたら、足が滑って、窓の縁から。 「ああっ!」 「掴まってな」 「あ、あ、あ、あ、先輩、イっちゃう、っこれ、あっ、ン」  落ちなかったんだ。先輩が抱いてくれたから、窓ガラスに押し付けるように俺のことをキツく抱き締めてくれて、腕を回して、言われるままに掴まった。 「あああああっ」  そしたら抱きながら、深く、激しく、奥を何度も何度も突いてくれた。 「あ、あ、あっ……先輩、先輩」 「中、すごいよ……絡み付いて。欲しかった? これ」 「ン、欲し、かった……ですっ、あ、あ、あ先輩のっ」  だって居酒屋でもおねだりしたのに、ここにはもらえなかったから。イかせてもらえて嬉しかったけれど、でも、ここに。 「たくさんして、欲しかったっ」  抱いて欲しかったから。 「ミキ」 「ン、んんんっ……ン」  ズボズボとペニスで孔を可愛がられながら、目の奥で星が点滅してた。 「あ、先輩、イクっ、あっ……もっ」 「いいよ、ここでイッて見せて」 「あ、あ、あ、イク、イクっ、イクっ」  初恋なんて簡単に一喜一憂してしまう。 「ああああああああっ」  落っこちないようにと、貴方にキツく抱かれながら、名前を呼ばれただけで、この腕の強さに、密着した熱に、この数日の沈んだ気持ちが溶けて、あっという間に消えるくらい、初恋は、とても簡単に躍るんだ。

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