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第29話 奥

 寝室には一人用のベッドがあるだけ。衣類はウオークインクローゼットの中にあるから、この部屋はとても殺風景だ。他の部屋もたいして変わらないけれど、特にここは寝るだけでしか使ってなかったから。その殺風景な寝るだけの部屋に甘い熱が滲んでく。  ――ミキ、おいで。  部屋の中の案内も適当に済ませた俺を先輩が呼びつけて、色気たっぷりに微笑まれた。 「ん、ン……ん、ン」  俺は、自分の寝室で、立ったままの先輩の前に膝をつき、股間に顔を埋めて探り当てたチャックの金具を歯で噛んで下に下ろした。ベルトは先輩に手伝ってもらって外して、下着は。 「……ん、ン」  下着も、噛んで下ろした。  手を縛られているから使えないんだ。自分のネクタイで手を後で縛られてる。 「あ、っ……ん」 「……ミキ」  口を開けて、先輩のペニスを探すと、先輩の声がした。顔をあげると喉をまるで猫でも可愛がるように撫でられた。そして唇に丸い先端が触れる。  見えないから。ハンカチで目隠しをされてる。 「ん、んくっ……ん」  手を縛られて、目隠しをされて、それでも貴方のペニスにしゃぶりつきたくて、舌を出してる。 「上手……」 「あっ」  けれど、そう褒めてくれる先輩の顔は見えない。  見えないけれど、呼吸が乱れてるからきっと感じてくれてる。そう思うと興奮した。唾液が溢れてはしたなく唇の端から溢れてしまいそうだけれど、どうしようもない。だって手は後ろで縛られてるから。  とてもひどい格好だ。スーツを乱して、拘束されながら視界を塞がれながら、フェラに夢中になってる淫らな姿。  でも、先輩が、少しに熱を帯びた声で俺を呼んでくれる。  喉奥で息を詰まらせてくれる。 「っ」  先輩が俺の舌に感じてくれてる。 「……ン」  それが嬉しくてたまらなくて、丁寧に先輩のペニスの先端に舌を這わせた。 「ミキ、上手」 「ん、ン」  褒められると嬉しくて、ご褒美に頭を撫でられるとたまらなくて、その大きな掌に預けるように首を傾げて、舌使いを教えてくれる先輩へと顔を上げる。  ペニスを口に咥えたまま。 「……ンっ」  見えてるかな。  ペニスから口を離して、裏筋のところだけをアイスみたいに舐めてる俺のこと。鼻先を先輩の股間に埋めてペニスの根本に吸い付いて、膨らんだ丸いのを口に含んでるところ。先輩はちゃんと見てくれてる? 「ミキ、そのまま、くびれのところにキスして」  言われた通りにキスをした。 「はっ……っ、そこ、気持ちいいから、覚えてて」 「ん、ン」  先輩が甘い溜め息を零してくれるのが嬉しくて、もっと教えて欲しいと、舌を使ってペニスのくびれをチロチロと舌先でくすぐった。 「そのまま、舌だけで舐めて」 「ん」 「咥えて」 「ン」 「上手」  頭を撫でられて蕩けそう。 「離して」  やだ、もっと、舐めたいのに。この硬いのを口の中に。 「ミキ」  促されて口を離すと、その口を指で開かされる。今さっき咥えていたくらいに口を開かされて、その舌の上を指が撫でた。 「お前……フェラ上手だね」 「っん、せんぱっ……に、教わった、からっ、はぁっ」  指が撫でたのは嗚咽ギリギリになる、奥のところ。 「この奥のとこ、あんま苦しかったら教えて」  そして、また口に太くて硬い熱を咥えた。 「んっ……ぶ」  ゆっくり開かされてく。先輩のことしか知らない舌を擦りながら、ペニスが喉奥まで。 「ん、ン」  苦しいのに。そんなところ。 「ミキの喉のとこ、気、持ち、ぃぃ……」  貴方が気持ち良さそうに名前を呼んでくれるから、嬉しくて、喉奥が蕩けそう。開いて、受け入れて、喉を鳴らしてしまう。 「っ」  苦しげに息を詰めたのは先輩だった。  俺は跪いて、先輩の股間に顔を埋めながら、感じてた。喉奥まで開かされる快感に。喉奥まで犯してくれる快楽に。唾液を零しながらしゃぶりついて、舌でさっき舐めた裏筋を丁寧に擦って、口を窄めて扱いてく。  涙が出るくらいに苦しいのに。 「ンン、んぶっ……ん、はっ、ぁ……んク」  切なくなるくらいに感じてる。  先輩の呼吸が苦しそうに乱れてて、腰使いが激しくなってくると、すごく、すごく、嬉しい。 「やばいね……お前のフェラ」 「ん……ぁ」 「すげぇ……やらしい」  だって、そうもなるでしょう?  寝るだけの部屋。ベッドしかないこの部屋で何度も妄想したんだから。貴方のペニスを咥えるところを何度も想像した。太くて硬い先輩のを口で咥えるところ。貴方との行為を妄想しては一人で達してた。頭の中ではたくさんしてた。 「ミキ……」 「?」 「少し苦しいよ?」  何が? と、問おうと思ったけれど、すぐにその意味がわかった。 「ん、ンっ……ん、ン」 「は、ぁっ……ミキ」  腰を振りたくるために頭を掴まれ、口を開けて、喉奥を開いて。まるで腹を空かせた雛鳥みたいに。 「っ」 「ん、ン、ん……んぶっ……ん」 「っ、ミキ」  熱をはらんだ声に呼ばれた瞬間、喉奥からずるりとペニスが引き抜かれ、口を開けたままの顔に。 「っ!」 「あっ」  見たいよ。 「わり……髪に飛んだ」  ねぇ、先輩、俺の舌は気持ち良かったですか? 今、どんな顔をしてるの? 「はぁ……すげ、ミキ」  そっと目隠しを外され、目を開けると、ひどく呼吸を乱した先輩が俺を見つめてた。顔についた白を指先で拭ってくれる。俺は自然とその指を咥えて、人に懐いた猫のように吸い付いた。  そしたら、先輩が腰をかがめて、俺のことを呼びながら笑って、キスをしてくれた。 「ん、ン……ん、ン」  フェラで熱くなった舌を絡めとられて、きっと喉奥まで何度も行き来したペニスで潤んだ口の中を丁寧に可愛がられて、たまらなく気持ち良い。 「ミキ」 「あっ」  ベッドに押し倒されると、貴方分の重みも加わって、不慣れなベッドがわずかに軋んだ。 「あ、あの、俺、シャワーを」 「いいよ、別に」 「でも」 「前に言ったじゃん」  ――いいよ。へーき……っていうか、汚くないから。ちっとも。俺の方がずっと。  そう言えば、あの時、「俺の方がずっと」って。 「エッチ……」 「ぇ?」 「しゃぶってて、こんなに?」 「あ、や……見ないで、ください」  考え事をしていた間に、いつの間にか服を乱され見つけられてしまった。  濡れてるって。  とても恥ずかしくて顔を隠そうとしたけれど、両腕の拘束はそのまままだ外されていないから、丸見えだ、ベッドに押し付け、真っ赤になった俺をのぞき込んでキスをする。舌を挿し込んで、喉奥まで緩んだ口腔を犯してくれる。 「見て欲しかったくせに」 「あっ」 「ほら、気持ち良さそうに揺れてる」 「あン」  スラックスと下着を一緒くたにズラされ、そこが晒されて、羞恥に頬が赤くなる。 「や……」 「……びしょ濡れ」  だって、すごいんだ。妄想していたよりもずっといやらしくて、気持ち良かったから、夢中になってしゃぶりついてて気がつかなかった。 「あっ……あ、あ、あ」 「ミキ」  数回扱いてくれたら、貴方の手をローション代わりに濡らしてあげられるくらいに先走りでペニスが濡れて蕩けてたなんて。 「あ、あぁっ……」  先走りで濡れた中指を孔に挿れられて、とても、とても気持ち良くなるくらいに発情してたなんて。 「あ、先輩っ」  先輩のペニスに夢中になってしゃぶりついてて、気がつかなかったんだ。

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