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第36話 遠隔快楽

 電話で、続きをしようって。 「あっ……ン」 『可愛い声、今、どこ触ってんの?』  今、触って抓ったんだ。 「ン、ちく、び」  こうされるの、好きだから。乳首をキュッて指先で摘んで、それから指の柔らかいところで、転がすように押し潰されたりするの。 「先輩がして、くれる時みたいに、あっ」  高い声が上がった。 「あ、これっ」 『何?』  これ、好き。 「乳首、を、摘んだまま、先のところを爪でカリカリ……って引っ掻く、の」  これを先輩が。 『それすると、ミキの中がきゅううってきつくなるんだ』 「あ、あ、あ」  これ、してる時、そうなんだ。俺、先輩のペニスを、きつく。 「あっ」 『孔は?』  きつくしゃぶりつく、の? こうして、乳首を引っ掻くと? 「……ぇ?」 『きつくなっただろ?』  知らない。 『知らない?』  身体の奥のところがキュッてしたのを感じた。いつも先輩のを挿れてもらう場所が。 『お前、根性あるくせに、変なタイミングで怖がりなとこあるからな』  そうなの? 知らなかった。 『じゃあ、教えてあげる』  先輩はたくさん知ってる。俺にたくさん教えてくれる。自分では触れたことのない場所のことも。 『俺が何度も抱いて仕立てた』  貴方しか知らない奥のところも。 『セックスの時の、お前の身体』  貴方に仕込まれた俺の身体も。 『すごい気持ち良いから』  その声にとろりと蕩けるほど、先輩にまた教えてもらえると身体が悦んだ。  はしたない格好だ。 「あっ……先輩っ」  ハンズフリーにしたスマホを顔のすぐ近くに置いて、布団に寝転がって、脚を拡げて。 『指、しっかり舐めて。俺のをフェラする時みたいに』 「ン、ン」 『できた? 濡れたら、それで孔のところを撫でて』  お尻の孔に自分の指を入れるなんて。 「あっ、先輩っ」  恥ずかしい。 『平気だよ』 「あ、あ」 『やってごらん。俺がいつもしてるだろ?』  いつも、貴方にしてもらってると思うと、とろりと先走りが滲み出す。 「あっあっ指っ……先輩っ」  こんな、なんだ。俺の中って、こんなに。 「熱いっ……中」 『知ってる』 「あぁぁぁぁっ!」  ゾクゾクってした。貴方の「知ってる」って言う短い一言にどうしようもなく興奮した。 『そのまま指を全部入れてみて』 「あ、できな、い……」 『あぁ、狭いのか……乳首もいじって』 「あっ」 『さっきみたいに、爪先で乳首をカリカリってしてみて』 「あ、あ、あ、あ」  こんな、なの? 『しゃぶりついた?』 「あ、あっ」 『それ、好きなんだ』 「お、れ?」 『お前も気持ち良さそうだけど、俺が』  あぁ、すごい。 「先輩は、これ、好きなんですか?」 『あぁ、好きだよ』 「っ、あ、あ、あ、あ、何っ、これっ、あっ」  先輩にここを撫でられると、たまらなく気持ち良いとこ。 「あ、前立腺っ」 『……』 「ここは? 先輩、ここ、擦った時の、俺の身体はっ?」 『好きだよ』 「あ、ン」  甘い声。まるで先輩とセックスしてる時みたい。おねだりをする時の甘ったるい猫撫で声が唇から溢れた。身を捩らせて、乳首を弄り続けながら、ヌプヌプと浅く指を動かしたり、前立腺を撫でようと指を大胆にお尻の孔に突き入れたり。 「あ、あ、ン……先輩」 『今、浴衣?』 「あ、そう、です。今、浴衣っ」 『いいね。想像したら興奮する』  中がきゅぅんって指にしゃぶりついた。感じてる。すごく。 「先輩、も、興奮して、る、の?」 『してるよ』  俺に? 「嬉し」  たまらなく嬉しい。だって先輩は女性が好きでしょう? 「俺ので、勃っててくれたら、嬉し」  男の俺に興奮してくれた。貴方が、俺に、欲情してくれた。電話越しの俺の姿を想像して、だなんて。 「中、熱い」 『知ってるよ』 「いつもこんなに?」 『あぁ、いつもこんなに熱いよ』 「あっ!」 『……』 「先輩のが、ここに」  中はとても素直にしゃぶりついてる。中の熱も柔らかさも、キツさも指で確かめながら、身体は自分の指なのに違和感を覚えてるんだ。 「先輩の、が、いいっ」  貴方の指じゃないって、少しだけ、駄々を捏ねる。 「あ、あ、あ、あ」  貴方が欲しいって、我が儘を言う。 「あ、乳首もっ」  貴方の指にいじめられたい。 「ふっ……ン……あ、ン」  貴方のペニスに抉じ開けられたい。ここを撫でて。前立腺を、あのペニスで撫でてもらいたい。 「あっ……ン」  指は忙しなく貴方の真似をしてる。右で身体を、左で乳首を忙しく撫でてる。 「あ、あ、あ、あ」  激しくされたい。かまわず、イクことだけを考えてる時の先輩の腰つきがたまらなく好き。その瞬間だけ、俺を可愛がるのも忘れて、溺れるように俺の腰を鷲掴みにして、乱暴なくらいに奥まで暴いてくれるの。 「あ、あ、あ、も、イクっ、先輩」 『俺も』 「あぁっも、イク、イク」  あの時の貴方が欲しい。 『いいよ、ミキ、イッてみせて』  あの時の、貴方のペニスがいい。 「あ、あ、ああああああっ」 『っ』  スピーカー越しに貴方が息を詰めたのがわかった。それがたまらなく嬉しくて、嬉しくて。先輩が俺だけでイってくれたって思うと、たまらなくて。本物の代わりにとスマホに擦り寄って甘えながら、くちゅくちゅと指でやらしい音をさせて。 「あ……先輩……」  布団の上、浴衣をぐちゃぐちゃに乱しながら達した。その射精後の自分の声が切なくて、恋しそうで、笑ってしまうほどだった。

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