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第44話 星

 酷い格好だ。 「あっ……」  四つん這いになって孔が見えるようにと尻を高くして、額を布団に擦り付けながらそんなことを思った。 「あっ……ンっ、んんっ」  はしたない格好。けれど、もっと淫らに見えないだろうかと腰を反らせて、貴方の指を咥えて、甘く甘く、喉を仰け反らせながら喘いだ。 「あっ……先輩」 「誰なんだろう」 「? 先輩?」 「お前が、セックスの時、俺を呼ぶ度に本当は誰を呼びたいんだろうって思った」 「……」 「だから、少しだけ腹を立ててた」  抱かれ方を教わってまで抱いてもらいたいと思われてる誰かに。 「久志、先輩」  貴方の指をキュッと孔で締め付けながら名前を呼んだ。 「それ、あの時しか言わなかったし」 「あ、だって……浮かれ、ちゃいそう、だったから、あ、あ、あ、そこっ」  締め付け絡みつく孔を長い指がまさぐって気持ち良いところばかりを撫でてくれる。前立腺のところを二本の指で挟むように刺激されて、触らなくてもわかるくらい鈴口から先走りの液がとろりと溢れた。 「せんぱ、い、のこと久志先輩って、呼ぶの、恋人、みたいだからっ」  その時だって、デートって思ってしまいそうだったんだ。レッスンなのにって。 「勘違い、しちゃい、そう、だったからっ」  全部、先輩にとってはレッスン。俺にとっては妄想していた初恋の先を味わえるたまらない時間。 「あぁっ、そこっ」 「ここ、お前の好きなとこ。けど、もっと好きなのが、ここの」  うん。もっと奥が好き。 「もっと奥、だろ?」  そう、そこ。そこが。 「ここを突かれるとミキはすぐにイクから」 「あっ……ぁ、あっ」  そこが好き。そこを先輩の硬いので何度も突かれるのがすごく気持ち良いって。 「先輩に、教わった、んです。あぁっ……指っ」  指で孔を広げられて、切なくなる。指じゃ足りなくなるほど火照って、仕上がった身体をくねらせ身悶えながら。 「ミキ」 「あっ」  指を抜かれるのさえ声を上げてしまう。そして、すぐに振り返って、服越しに先輩の膨らんだ股間にキスをした。顔を埋めるようにキスをして、それから指で家着をずり下ろすと、下着越しにまたキスをする。硬くなってくれてた先輩のペニスに。 「ミキっ」  先輩は知らないでしょう? ペニスを、こうして硬くしてくれることがどのくらい嬉しかったか。 「っ、ミキ」 「ん、ンっ……ん、ぶっ」  先輩の好きな場所を丁寧に丁寧に舐めて、しゃぶりついて、鈴口を舌先でチロチロと刺激した。そのまま裏筋のところを舌先でツーっとなぞってから、根本にキスをして、そして、膨らんだ袋に鼻先を埋めながら、口付けて、まぁるいそれを口に含む。  それからまた竿のところを丁寧に口の中で扱いて、鈴口に音を立ててキスをしてから、亀頭を舌で充分すぎるほど舐めて濡らした。  全部、貴方に教わった。 「ミキっ、フェラ、上手すぎ」  嬉しい。 「上手、ですか?」  チロチロと舌先はペニスを舐め続けながら、ちらりと伺った。今どんな顔をしてくれてるかなって。今、舐めたここは先輩の好きなところかなって。食べ物しか口に入れたことのない舌先で貴方を味わうのはとても気持ちいい。舌先でさえ性感帯に変わりそうなほど。 「ん、んっ、んぶっ……ン、ん」 「上手、だよ」 「だって」  これも好き、でしょう? 裏筋のところを舐めてから、できるだけ口に含んで、頬の内側の柔らかいところに亀頭を押し付けるの。 「っ、ミキ」 「先輩に教わったから」  たくさん教わったんだ。 「お願い、先輩、早く、ください……この硬いの」  フェラチオも、オナニーだって、教えてもらった。それと――。 「ここにたくさん」  おねだりの仕方も教わった。けれど、これをおねだりするのは初めてだ。 「先輩の欲しい」  言いながら、ペニスの先端を撫でて、カリ首のところを指でくすぐって、それでね、おねだりするの。 「このまま、ください」  生でして欲しいと。ビジネスではないのなら、貴方が抱きたいと思ってくれるのなら、そのまま中に来てください。ゴムなんかしないで。そのまま欲しい。 「先輩が、欲しい」  いつもは先輩のものを欲しいとねだってた。けれど、今ねだったのは先輩そのもの。 「あっ…………ぁ、んっ!」  貴方のペニスじゃなくて、舌じゃなくて、ただただ先輩が、貴方が欲しいとねだった。 「あ、あ、あああああああ!」  ズプリと奥まで貫かれただけで射精してた。 「あっ……」  乳首に飛ぶくらいに。 「っ、ミキの、中っすげっ」 「ん、っあっ……ン」  きゅぅぅんって切なげに中がとっても硬いペニスにしゃぶり突くと、先輩が顔をしかめた。 「久志、先輩、は……知らない、でしょう?」 「?」 「先輩が気持ち良さそうにしてくれる、の、すごく、嬉しかった、こと」  ね? 知らなかったでしょう? でも本当にたまらなく嬉しかったんだ。貴方は女の人しか恋愛対象に、好きにはならないと思ってたから。 「硬くして、くれる度にホッとしてた、んです」 「……」 「よかった。してもらえるって」  俺はどれだけ可愛い後輩だとしても、そこには入れてもらえないと思ってたから。 「あっ……先輩っ」 「っお前は、ホントにっ」 「あ、あ、あ、あっ激し、い、のっ」  ズン、と奥をさっき指じゃ届かなかったところを連続で突かれて、連続で中がキュンキュンと締め付けてる。 「ずっと、甘イキしてる」 「あ、だっ……て」  硬いんだもの。 「ここ、に、ある先輩のおっき……ぃ」  そう言って腹を撫でた。ここに貴方のがあるって。 「あぁぁあっ!」 「お前ね、ホント」  激しく突かれながら、ズリ上がってしまう身体で必死に先輩にしがみついた。もっと奥まで来てください。貴方しか知らない身体をもっともっと、仕込んでくださいって。 「本当、可愛い」 「っ、くう……ン」  貴方に可愛いと言われても気をつけるようにしてた。それはただの後輩としての意味。それは恋人へあげる言葉とは全然違う意味。  だから勘違いしないようにといつも蕩けそうになる自分に言い聞かせてた。 「あ、嬉し、い……先輩、久志先輩っもっと、して」  ぎゅうぎゅうにしがみつきながらもっとおねだりをした。 「ミキ」 「あ、あ、あ、あ、ん、イクっ奥、好きっあ、せ、ぱいっ」  これがすごく好き。 「あ、ンっ、先輩、先輩っ」  貴方は射精の直前、我儘をする。俺の身体を鷲掴みにして、その硬いので何度も何度も激しく貫くんだ。雄の本能だけで俺のことを抱くの。理性もないし、テクニックもなくて、ただ、激しくするの。 「あ、先輩っ」  その瞬間がたまらなく好き。この人を独り占めできてる気がして。この人が欲しいのは俺な気がして。 「久志、先輩、好きっ、んん、ンっ、ん、ン」  夢見心地で達する瞬間。 「あ、あっ!」  甘い悲鳴を上げながら、中に放たれる熱を感じながら、射精して、抱きしめてくれる背中に手を回した。 「あっ…………ンン」  先輩の腕の中でふと見ると大きな、カーテンのない窓にはたくさん星が輝いていた。

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