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第四章 満月に住むオオカミとウサギ ③
ニックは、せっかくだしチーズがとろけている間にピザを食べようと純己に言った。本来ならシャワーが先だが、お互いの恥ずかしい部分を見せ合った後なんだから、どんな姿でもいいじゃないかと言うと、純己もこくりと頷いてくれた。
純己は部屋から見える夜景や間取りや設備に感動して可愛い感想を何度も口にしていた。
こんなに喜んでくれるのならもっと早く招待すれば良かったか、あ、いや、卒業前に呼んでこちらが我慢できなくなっていたら大変だったと思い直した。
裸のままソファに並んで座って、クリスタルのテーブルにピザとサラダと飲み物を並べた。
さっき見た満月のようなピザからは湯気が昇っていた。ドイツ製ウィンナーや有機野菜がトッピングされている。一切れを取り、三日月状にして純己に渡した。
器を用意し、飲み物でも入れようかとしていると、
「いっう、いーう、あ、あっ」
純己の変な声が聞こえた。裸同然の純己が飲み物をニックにパスしようとしているところで同時に純己の咥えたピザからチーズが垂れそうになっていた。
熱がっているのではなく、ニック、チーズと言っているのだと分かった。
ニックもフォークとサラダの器を持っていたのもあって、口を使うしかなく、とろけたチーズを口でキャッチし一切れのピザを咥え合う格好になってしまった。
その時、ニックが少し体勢を崩したせいでニックの口が離れると同時に咥えた部分のチーズも一緒に伸びた。伸びても伸びても途切れることなくつなっがているチーズは二人を結ぶ気持ちみたいだった。
とろけたチーズが切れそうになったのでニックが舌と口で手繰り寄せるようにして純己の顔に近づいた。純己はきゃっきゃっと可愛い笑い声を喉で鳴らした。やっとピザの生地に辿り着き、両端から二人でかじり始めた。ゴールが近づいたとき、寸止めをした。
純己がこらえ切れないといった感じで笑ったのが可愛くて、ニックはじっとその顔を間近で見つめた。純己が油断した隙に一気にピザごと純己の唇を食べた。
「んん、っっ、ん……んう、んう、んう」
純己の抜けるような声が聞こえて、ニックはフォークとサラダを手だけでテーブルに戻し、純己の手に持っていたドリンクも同じように戻した。
純己の柔らかい背中に腕を回し抱きしめた。純己も小さな手をニックの背中に回してきた。二人で鼻から声を漏らしながら夢中でピザを貪り合った。舌なのかチーズなのか分からなくなるくらいに温かいものをかき回し合った。
口の端からこぼれるものが二人の蜜なのかチーズなのかも分からなくなるくらいに愛を伝え合った。純己の口の周りには生温かいものが付いているのが分かったが、ニックは目を開けることもなく全てを舐め上げ食べ尽くした。
純己が欲しくて欲しくてたまらない。可愛くて可愛くて死にそうだ。愛しくて愛しくて、ニックのそこは痛いくらいにびんびんになり根本から小刻みに揺れているのが分かった。
ああ、純己、たまんないよ……純己の全てを俺に預けてくれ。食い尽くしたい。
ニックのいきり立った欲棒に小さくて低温な何かが二つ巻き付いた気がした。見なくてもその正体に気づいた。
純己が両手でニックのそこをゆるりとしごき始めたのだ。輪っかのような二つの手でしごかれると、そこに妙な圧力が加わって快感がせり上がった。ニックは自分でも我慢汁が溢れているのが分かった。それをローション代わりにして純己の両手がぬるぬると滑る。
純己から口を離した。
「なんてこった、純己はエッチな子だ……」
「気持ちいい?」
純己の上目遣いがニックの性欲をどんどんひねり出した。
「ああ、いいよ……」
「ねえ、僕、ニックの舐めたい……」
「えっ、や、俺は光栄だが、いいのか、そんな」
「……うん、こんな大きいの舐めてみたかったんだ……」
純己は一瞬躊躇してから、ニックのものを両手で握りながら頬張った。純己の小さな口ではニックの先しか入らず、純己はカリをアイスクリームのように吸って舐め始めた。
くすぐったい感覚のせいで「ああ」という低い喘ぎ声がニックの口から漏れた。
「しょっぱい……これチーズの味? それともニックの……」
「両方だろうな。美味しいか?」
「……うん、美味しい」
純己はニックのサイズに慣れ始めたのか、くちゅくちゅと音を立たせながら顔を上下にピストンし始めた。
純己はまるでニンジンを頬張る子兎のようだった。
「おぁっ、気持ちいいぞ……」
純己の柔らかい舌と唇が、顎の小ささと相まって絶妙な圧力を加えてくる。まとわりつく舌が頬の内側とともにニックの敏感棒を取り囲むような絞り方をしてくる。
なんてやらしい口なんだ。どんな顔で純己はこんなことを。ニックは遠くなりそうな意識を戻し目を開けた。
「純己、そのまま俺の方を見ろ」
純己の上目遣いの潤んだ瞳と男根を咥える小さな口を見るとニックの肉棒に力が入った。
「うわあ、可愛い……ああ、やらしい、セクシーだ……ああ、気持ちいいぞっ純己」
腹の底からどんどん湧き出してくるような甘苦しさが全身に広がっていく。
「純己、だめだ、二回目なのにもういってしまいそうだ、はあ、はあ、このままいっていいのかっ、口の中に出してもいいのかっ」
純己はニックを口から抜くと「いいよ、口の中に出して」と言い、またすぐに咥えて頭を上下させる。柔らかさと狭さと滑りがニックを直接刺激し、純己の淫らな表情がニックの脳を刺激し、一気に頭の頂点へ息のできないくらいの快楽が昇ってきた。
「いっ、いっ、いく、いくっ、いくああ、あはっ、ううう……純己、あっっつ」
ニックは純己の頭を持ちながら自慰では絶対に出ないような声と量を出してしまい、絶頂の快感が突き抜けるたびに腰を小刻みに振ってその衝撃に耐えた。
純己の小さな口の中に全てを出した。ニックが息を整え始めると、純己はニックのまだ収まらない屹立を咥えたままゆっくりと吸い上げた。
「ああ、純己、それはだめだっ、感じすぎるぞ……」
純己の唇の端から白濁が少し垂れ落ちソファに白いゼリーのたまり場ができた。ニックを口から外したかと思うと、ごくりという音が鳴った。
「す、純己、まさか」
純己はのぼせたような顔をしてニックを見上げる。
「……飲んじゃった……すごいたくさん出たね……ゼリーみたいに濃かった」
「そんなこと、したら、だめ、じゃな、いか」
「だって、ニックが欲しかった、から……」
ニックは思わず純己の口を吸った。
そんな言葉が出てくるのはこの口か、俺の全てを受け止めてくれたのはこの口か。
ニックは純己の口から全てを吸い上げると、純己をソファに仰向けに倒した。
「今度は俺の番だ」
純己のそこも固くなり先が濡れていた。ニックが咥え込むとすぐに純己の根本に到達した。
「あああっん……すご、い……深い」
純己の高い喘ぎ声が出た。口からいったん外して舌を上下左右に動かしカリや竿を舐め上げると先走りがとるとると溢れ出した。口を下の方にずらし純己の袋を口に含んだ。純己の袋は和菓子のようにすべすべしていて甘い。小ぶりな玉を二ついっぺんに口の中で転がした。
「あん、はあん、ん、っん、だめ、あっ」
純己の太ももを少し持ち上げると、ニックが心待ちにしていた蕾が目の前に来た。
「あ、そこは……ぁっ」
「純己、ここが俺はずっと見たかった、純己のここが」
ニックは舌先で萎んだ穴を舐めた。ひっくひっくといわんばかりに蕾が開き閉じる。その動きに愛しさを感じて、ニックは唇と舌を同時に穴に密着させて激しく動かした。
「ああ! だめ! あ、だめ! んああ、うああ」
純己は今までで一番の嬌声を上げた。
「気持ちいいか?」
「おかしくなりそうだよ、そこ、あ、だめ」
「俺の前だけならおかしくなっていいぞ」
ニックは純己の狂ったような声が聞きたくて舌を蕾にねじ込み花を開かせようとした。
「ああああああ!」
ニックは肉厚な舌を半分くらいまで純己の中に滑り込ませ、いろんな方向に舌を飛び回らせた。純己の媚肉の感触が舌に伝わった。
「ああ、ニ、ッ、ク、ほんと、に、おかし、くなっ、ちゃう、ってえええ、ああん」
純己の中から一気に舌を抜くと、間髪を入れず純己の突起を貪った。純己の嬌声が続いていることがニックの頭のピストンに勢いをつけた。
「も、い、いっ、いっちゃ、ちゃ、僕もまた、またいい、ああっ、いく、いく、いくううっ!」
純己は苦しい程の快感への抵抗のつもりか、ニックの頬に手を置き、ニックの頭を退けようとしたが、ニックはお構いなしに黙ってピストンを続けた。
純己の温かい体液が飛び散るのを口の中で感じてから動きを止めた。
おかしい……、純己のザーメンは練乳の味がする……嘘だろ……。
ニックも純己の精液を一滴残らず吸い上げ、なんの躊躇もなく飲み込んだ。
「ニック……やだ、飲んじゃったの?」
「もちろんだ」
「なんか恥ずかしい……なんか申し訳ないような気が、して……」
「何を言ってるんだ、愛してる奴のジュースは俺だって欲しい。それに純己のはすごく甘い」
「なんか恥ずかしいよ」
純己は両手で顔を隠してしまった。その仕草が可愛くて、ニックは純己に覆いかぶさり、優しく純己の両手を顔から離した。手の中からは桃色に染まった可愛い顔が現れた。
ニックの腕を純己の頭に回してより体を密着させた。
「純己、愛してるよ。俺の愛をちょっとは分かってくれたか?」
「……うん、すごい感じたよ……僕も愛してる」
その言葉を聞いた瞬間にニックはまた純己の口を頬張っていた。
口を離したとき、お互いの唇と唇が白い糸でつながっているのが見えた。
朝陽を感じて目を開けると、ニックは腕の中に温かくて柔らかいものを感じた。
純己を後ろから抱きしめる格好でソファで寝ていたことに気付いた。テーブルには食べかけのピザやサラダや飲み物がそのまま置かれていた。
ニックは純己を抱きかかえたまま体を起こした。ニックの膝に座った状態の純己はようやく目を覚ました。
「んん、え、あれ、このまま寝てたんだ……」
「ああ、そうみたいだ」
ニックは後ろから純己の頬にキスをした。くすぐったいような反応を見せた純己はニックの首に顔を埋めた。
「僕、朝陽が浴びたい」
純己は急にそう言うとベランダに出たいと言い始めた。
「こんな姿でか」
「別にいいじゃん」
ニックは純己に手を引かれベランダに出た。春の始まりを予感させる優しい風が吹いた。
「空気がおいしいいっ」
両腕を頭の上に伸ばして深呼吸をする純己をまた後ろからそっと抱きしめた。
「あれ……あの鉄塔……」
純己が動きを止め、遠くを指差した。その先には言われなければ気付かない程度の大きさだが、確かに鉄塔が見えていた。
「あの鉄塔がどうかしたのか」
「あの鉄塔、赤い線の入ったやつ、僕のアパートの裏にあるんだよ、覚えてない?」
そう言えば初めて純己を家まで送ったときに砂利の広場の向こう側に鉄塔が見えていた。
「そうか、やっぱり案外近いところにいたんだな俺たち。純己、家からもここら辺のビルやタワーマンションが見えるって言ってたな」
「うん、そう。なんか、不思議……」
「だな」
「僕はずっとあそこに住んでた。それでここがずっと見えてた。すごく遠くに感じてたし、ここは天空だと思ってたのに、今はその天空にいるんだよ……」
「天空か、そんないいもんか、住めば普通になる。俺は純己とこうしている方がむしろ天空にいるような気がしてる。一人で暮らすってのは、どこにいたって寂しいもんだよ」
涼しい風が緩やかに吹いて純己の前髪を揺らした。
純己はニックの逞しい腕をギュっと両手で握った。
「ニック……僕のこと……離さないでね……」
「もちろんだ、絶対に離さないよ、どんなことがあっても離さない」
ニックは純己を包んでいる腕にさらに力を入れた。
純己もそれに甘えるように体を預けてきた。華奢で柔らかくて薄い体は、もたれてきても重みをほとんど感じなかった。この体をずっと守っていきたい。寂しい思いも、苦しい思いもさせたくない。愛情で純己の不安を安心に変えてやりたい。
俺がいるから大丈夫だよ、とニックは心の中でつぶやいた。
頭上の白い雲は全部泳いで行った。真っ青な海みたいな空から朝陽が全部降りてきた。
ニックは、純己に出会えて良かったと心から思った。
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