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第九章 熱い愛 ①

 飛行機で西海岸のロサンゼルスまで飛び、タクシーでニックの家に到着した。芝生が豊かに広がる前庭がきれいな一軒家だった。新しく改装されたようで壁も内装も駅前の教室のようなナチュラルウッディなデザインの作りになっていた。  隣のニックは疲れを見せず元気だったので、純己も疲れは見せないように心掛けた。 「あの教室に雰囲気が似てるね」 「ああ、そうなんだ、さすが純己だね。気付いてくれたんだ」  荷物の整理が終わって、メイシーからもらったコーヒー豆を挽いて淹れ、芳醇な香りのコーヒーとブリジットが焼いてくれたクッキーでくつろぎの時間を楽しんだ。  よく見ると、キッチン周りやソファや絨毯に使用感がなかったのでニックに聞いてみた。 「実は純己が来ることが決まってから新調したんだ」 「あ、ありがとう……っえ、でもニックはずっと日本にいたよね?」 「ああ、昔からうちには使用人がいてね、物だけ指定して作業はしてもらったのさ」 「そんなことできるんだっ、すごいっ」 「俺も飛び回っていて忙しかったからね」 「まあね、ニック本当に忙しそうだったよね、ここ最近」 「うん。前にも言った通り上場準備でいろいろあったからね……それでだ……純己」 「んん?」  ニックはカップを持ったまま体を向けてきた。 「純己、俺と一緒に俺の会社を守ってくれないか?」 「……え、守るっ、て……」 「つまり、俺の会社の一員にならないかってことだ」 「……っ」  ニックからの突然の提案に、純己は事態の大きさに思考が及ばなかった。 「僕が……ニックの会社に……就職するってこと?」 「そうだ。もちろん今は学生だからパートタイマーでもいいさ。純己なら公私に渡るいいパートナーになれると思うんだ」 「で、でも、僕なんか役に立つのかな、それに、」 「大丈夫だ。アジア人である純己のその英語力が必要なんだ。前にも言ったが、日本生まれ日本育ちの純己なら、英語を母国語としない人たちに寄り添った教育が可能だと思う」 「でもニックの足を引っ張るようなことになったら申し訳ないし」 「社会人としての作法なら俺が手取り足取り教えるさ」 「それは有難いけど……なんか恋人同士で同じ場所で働くってなんか抵抗あって」 「真面目だなあ、純己は」  ニックは嬉しそうにくっくっくと笑い、また真剣な眼差しを向けた。 「理由は他にもある」 「……何?」 「いつもそばにいて欲しい」 「……ニック」 「俺だって人間だ。支えてくれる存在がないと立ち上がれないときがある。それに……」 「それに……?」  ニックはカップをローテーブルに戻し、視線を少し落として続けた。 「純己だから話すが……上場は目標だったし、会社も安定するし、優秀な人材も採用しやすくなるから絶対に良いことなんだ、でも……でも恐さもある……。上場基準で定められた利益をちゃんと維持していけるか、株価を上げていけるか、取引先の信頼は勝ち取れるか、資金繰りは大丈夫か……。考え始めたら不安要素なんてキリがない。そんなことは分かってる、でも、だから……正直、恐いんだ……せめて純己にはいつも俺のそばで俺を支えて欲しい。ビジネスの現場でも純己の知恵を貸して欲しい……」  ニックは涙目で純己を見つめてくる。純己もカップを戻し、ニックを見つめた。 「ニック……ニックがそんなに苦悩を抱えていたなんて気付かずにいてごめん」 「俺も今初めて話したからそれはいいさ」 「……分かりました。僕にできることがあったら何でもする。ニックがそれで少しでも気持ちが楽になるのなら僕もニックの会社に貢献させていただきますっ」 「ありがとう……純己」 「ニック……」  ニックの長い腕が純己の肩と背中に回ってきた。純己はニックの首元に顔を寄せた。 「僕も……ニックのそばにずっといたい……わがまま言っちゃいけないって思ってたから言い出せなかったけど、ニックから言ってもらえて嬉しかった……」 「愛してるよ、純己」 「僕も愛してる、ニック」  二人は自然と唇を重ね、微笑み合った。  ニックの顔から急に笑みが消え、純己を見つめる瞳に鋭さが宿った。  かと思った瞬間、ニックの顔が急接近した。 「んんッ」  純己の頬が赤く染まる。ニックはより強く純己を抱きしめた。  お互いを啄むようなキスを繰り返し、離れることができないかのように唇と唇が何度もくっつき吸い付く音が鳴る。  ニックの肉厚の舌が純己の小さな唇をこじ開けるように動く。それが口の中に入ってくると純己の舌を追いかけ回して温度や肌触りを執拗に確かめてくる。 「んん、ふぅん、うう……んふ」  その舌がニックの生温かい愛液をとめどなく運んでくる。それが溢れそうになったので思わず飲み込んだ。 「……っん、うっくんっくん」  ニックの温度が喉を通る。ニックが体に入ってくると思うと純己の中に喜びが生まれた。  これでニックがいつもそばにいてくれる。体の中にニックがいる。  ニックは純己の脚にも腕を回し、抱き上げ、歩き始めた。寝室に入り、大切なものを扱うようにそろっと純己をキングサイズのダブルベッドに下ろした。  ニックが落ち着いた動作で純己に体重をかけないように覆いかぶさる。 「すごく可愛いよ……その瞳がたまらない」  ニックは大きな果実にかぶりつくように大きな口を開けて純己の口を貪った。唇が一瞬で濡れ、口の周りもニックの愛蜜で濡らされる。 「はぅ……ふくぅ……ん」  そのままの勢いでニックは鼻息を荒くして純己の首筋を愛撫し始めた。純己の肌の味を味わおうとしているように熱い軟体が這い回る。 「あん、あっ、はあっ、んんぅ」  ニックは、まるで野獣が小動物の首を咥えるみたいに、純己の首にかぶりついた。 「んはぅっん」  甘い痛さと仄かな痒さと生温かさに支配された。ニックは甘噛みしながら舌を動かしていろんな快感を与えてくる。 「……んん、ニ……ック……ん」  純己の中にある、ニックに支配されたい、という口に出せない欲望を上手くくすぐられ純己の固くなった先からとろみのある愛液が勝手に溢れ始めた。  ニックは純己の頭と背中に手を回して、純己の小さな股の間に体を埋め純己の足を広げさせた。大きな体が圧し掛かるとその重みが全身に心地良さを与えた。  耳を甘噛みされて声を出して顔を右に背けた。 「あはあ、ああ、だめ……っ」  ニックは執拗に耳の中に舌を入れた。舌が動くたびに濡れた言葉も一緒に入ってきた。 「純己が俺のものだってこと……もっと分からせてやるからな、体で」  耳たぶを舌で転がし、耳全体を頬張るように口に含まれる。 「あんっ、あ、は、んん、ひぁ……あぁ」 「俺だけのものだからなッ、絶対に誰にも渡さないぞッ、純己は俺のものだッ」  ニックは首筋を力いっぱい吸い始めた。何度もしゅぱっ、きゅーっと音を鳴らした。  ニックは顔を上げ純己の首筋を見る。 「ついたぞ、キスマーク」 「え……だ、め、だよ……」 「誰が見ても純己には恋人がいるって、首筋に吸い付く恋人がいるって思わせないとな」 「もう、バイトとか、もあるのに……ああ、はあっ」 「バイトなんてしなくていい、俺の会社だけでいい、俺の言う通りにしろ」  ニックはまた首筋に吸い付いた。純己の体にはニックがはっきりと刻み込まれた。  もうだめ……。抵抗なんてできない……。 「お前は俺の所有物なんだよッ。俺の命令に従えッ」  ニックはまた純己の首に吸い付きながら純己を体全体で包んだ。  隷属させられるような言葉を言われても純己に嫌悪感は生まれない。首筋に走る甘い痛みとニックの荒くなった息遣いと体を封じる力加減を感じれば感じる程、純己の奥深くに眠っていた欲望がだんだんと目を覚ます。  もっと刻んで欲しい……。もっと、もっと僕を屈服させて欲しい……。 「ぁああ、うんんん、うぅ……ふんん……もっと……」 「もっとなんだ? ん? 言ってみろ純己……もっとなんだ!」 「もっと……もっと、僕を……いじめて……ニックの好きにして……いいから」 「ぅぅおおっっ……!」  ニックは猛獣の雄叫びのような声を出して純己の唇を貪った。  ニックは純己のシャツのボタンを外し、下着のシャツをゆっくりとめくり上げた。締まったウエストにキスをし、肋骨に舌を這わせた。  ぷっくりと小さく膨らんだ二つの桃色の突起がちょうど顔を出す位置で手を止めた。 「何回見ても純己のここは可愛い……なぜこんなに愛くるしいんだ……」 「や……ん、恥ずかしい……」 「好きにして欲しいんじゃないのか?」 「で、でも、あぁ……」 「何もしなくていいんだな?」 「い、いや……し、て」 「何をだ? 何がされたいんだ? ちゃんとお願いしてみろ」 「さ、触って……僕の乳首……」  意地悪な物言いと同じように、ニックはじらすように純己の乳首をゆっくりと指先でいじり始めた。純己の反応を確かめるようにねっとりとスローモーションで指が動く。 「ぁ……あ……っ……んっ」  少しずつせり上がってくる快感が純己の動きを止める。  いっそのこと速く動かしてくれた方が良い……こんな動き方をされると下半身の疼きに気付かざるをえなくなってしまう……。  純己が足をもじもじし始めるとニックがすかさず純己の下半身の膨らみに手を添えてくる。 「あんっ、ああっ」 「もうこんなに起たせて」 「ち、違う……起って、ない……ヨォ」  ニックは服の上から純己の屹立を掴んで揺らした。 「何言ってんだよ、起ってるじゃないか、ほら、こんなにっ」 「やん、ちが、う、ああん」 「何が違うんだっ。素直にならない子にはこうだっ」  ニックは純己の両方の乳首を指で弾き始めた。強い刺激と快感が全身に走る。 「あ! いぃ、ん、あん、わあ、ひぃっ」  今度は親指と人差し指で挟みねじり始める。今までとは違う太い快感が巻き起こった。 「だめぇっ、あわん、う、ああ、はあん」  純己に次の行動を予感させないように、ニックは片方の乳首を指で弾きながら、もう片方は唇と舌で挟み込んで愛撫をし始める。 「はっ、んっ、はああっ、き、気持ちいっ、んんニックぅ」 「だろ? 純己の好きなところはもう心得てるさ」  余ってる方の手の五本の指先で純己の上半身がゆっくりとなぞられる。  純己の体にぞわぞわした鋭い感覚が走って首を反らした。 「はぁっ!」  純己の赤く染まった顔が歪み、思わずシーツを握り締める。 「純己はこれも好きだよな。ほんと敏感だ。俺だけに感じる体にしてやるからな」 「ボ、僕は、ニックが初めての人だし……もうニックだけのもの、だよ」 「口で言うのは簡単だっ。俺自身がそれを認めるまでは永遠に抱いてやる……」

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