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#3-6

 洗濯カゴの中には綺麗に畳まれた周のワイシャツとタオルがあった。周からすれば他人(ひと)の家だということを加味しても、普段の自分に鑑みて一目見て分かるほどに律儀だ。 「着替えとタオルはここに置くね」 「あ、うん。ありがとう」    ふと、洗面台の鏡に映った自分を見て、「なんで俺はこんな格好で“友達”と一緒にいるのだろうか」とおかしさと物悲しさを感じてしまった。  ついでに申し訳なさまで溢れてくる。 「……ごめん、なんか空回りばっかりで。いつもはもう少し余裕あるつもりなんだけど」  思わず気持ちが口をついて出る。そんな話を聞かされても、周は困るだろう。 「周の顔っていうか、眉っていうか……見てたら……てか、周に見られてたら? 思ってること全部見透かされてるみたいで……へッグシュンッ!」 「本当に風邪ひく前に、まずはお風呂でゆっくりいろいろ考えて。急がなくても僕はちゃんと待ってるから」  確かに両親と弟が帰ってくるまでにはまだ時間はあるものの、ゆっくりなどしていられない。 「おいで、ポン吉。似たもの同士、紅緒が来るまで一緒に遊ぼう」  ここまでしっかりとついてきていたポン吉がワン、と返事をして周に連れられながら洗面所を出ていく。元から懐っこい性格ではあるものの、まるで俺といるときのように見える。  似たもの同士――周はそう言ったけれど、ポン吉にとっては俺と周が似たものに感じるのかも知れない。とはいえ、それも俺の勝手な想像に過ぎないが。     §  それから、とにかくどうでもいいことまでいろいろ考えた。そうしないと、また頭の中に周を作り出して罪悪感に(さいな)まれることになる。  それに、さっきの続きは二人でするべきだ。周も同じ気持ちのはず。でなければ、あそこでキスをするフリなんて絶対にしない。  自分勝手な根拠からくる自信が湧く。  あいつは俺が何を考えているのか分かっていたのに、その上で元から寸前で止めるつもりで顔を寄せてきた。  言い表すのが難しいけれど、半分納得しているようで半分納得していない感じというべきだろうか。まだ続きがあるような素振りに見えた。  洗濯機を回すところまで済ませて洗面所を出ると、そこにまたポン吉がいた。  日が暮れて、そろそろご飯の時間だということを察知するとこうやってねだってくる。器にドッグフードを出してやると、夢中になって食べ始めた。  食べ終わるといつもお気に入りの場所――リビングのソファの上で眠り出すから、放っておいても大丈夫だろう。  俺は俺で、待ち構えている据え膳をどうしたものかと考えながら階段を上っていく。

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