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おまけ1:そうだ、遊園地に行こう。(野瀬京一編2)
楽しい時間の終わりは、まさに魔法が解けたよう。小百合ちゃんと一樹くんを送り届けて家に帰ってきても、畑さんはどこかぼんやりしている。手にはパークのペアぬいぐるみの片方がある。小百合ちゃんからのメッセージ付の贈り物だ。
どうやら彼女からのお返しだったらしい。恋人同士の別のタイプのぬいぐるみに添えられていたメモには「お父さんも頑張って!」とあった。
「畑さん、飲みますか?」
「ん」
ソファーに寝転んだままの彼に声をかけると生返事。俺は持ってきたビールを側のテーブルに置いてソファーに座り、呆けたままの唇に深く口づけた。
「んっ……あぅ……ふっ」
最近は、キスを受け入れてくれるようになった。それどころか、少し甘えた顔をしてくる。この人はとても敏感で、口の中も例に漏れず。舌先で擽るだけでヒクリと体が反応を返してくる。それがとても可愛い。
「いつまで呆けているんですか」
「……色々あってさ」
「ですね」
「野瀬」
「はい?」
「今日は、有り難うな。その、一緒にきてくれて。凄く、助かった」
少し照れたみたいに赤くなる肌。ふいっと外される視線。こんな可愛い生き物いますか? 自覚あります? 貴方の目の前にいるのは捕食者ですよ? しかも、貴方の事が大好きな。骨の髄までしゃぶりつくしたいと思う、そんなヤバい男ですよ。それなのに、無防備すぎやしませんか?
一日、沢山我慢した。抱きしめたいのも、キスをしたいのも。最後は少し我慢しきれなかったけれど、それでも我慢していたんです。うれし泣きとか、葛藤とか、そういうの見せられたら抱きしめたいんですよ。怖がる貴方をこの腕の中に入れてしまいたいんです。そんなシーンを一日何度も、我慢したんです。
「では、お礼が欲しいです」
「え? あぁ、何か作るか? ビールなら……」
「貴方を頂きたいです、畑さん」
俺の下から逃げるように出ようとする人を捕まえて、俺は耳元で囁く。それにも首をすくめてフルリと震える貴方を、俺が逃がすと思うんですか?
誘い、乗ってくれるだろうか? この人はノンケだから、まだ抵抗があるみたいで逃げられる事も多い。俺としては毎日抱きたいけれど、それは流石に却下された。週に一度か二度あればいいくらい。
今日は? やっぱり嫌? 疲れている?
見極めを間違ったら嫌われてしまう気がして、俺は畑さんの反応を待っている。
「……風呂、入りたい」
「もうすぐ沸きます。一緒に入りましょう?」
「風呂ぐらいゆっくり入らせろよ」
「待てない。それに準備もそこでしてしまえば楽でしょ?」
「それは! や、でも……」
お風呂プレイは、そういえばまだしてなかったな。
恥ずかしがっているだけで、拒んでいない。表情でそれが分かれば怖くない。俺は畑さんの耳元に唇を寄せて、とびきり甘いお願いをした。
「お願い、畑さん。俺にご褒美、ちょうだい」
「っ!」
しばらくの間の後で頷いてくれる畑さんに、俺は心から嬉しくてとびきり丁寧なキスを返した。
浴室は男二人でも足を伸ばして入れる。元々風呂は好きだから広くゆったり出来るようにカスタムしてあったが、こんな所で役立つとは思っていなかった。
互いに裸になって中に入って直ぐ、俺は我慢出来ずに正面から唇を奪って深く舌を絡めた。少し逃げた舌を掴まえて、壁に押しつけるようにして退路を断って、顎も固定して。浴室に響く畑さんのくぐもった声と僅かなリップ音が、更に俺を煽っていく。
「野瀬、待てって」
「嫌です」
「余裕なさすぎだろう!」
「そんなもの、最初からありませんよ」
貴方の事に対して、俺が余裕でいられた事なんてない。いつだって焦って、焦がれて。いつも冷静なボスが貴方の前では形無しなんです。こんなの、部下には見せられないくらい。
何度も何度も口腔を弄り、崩れそうな畑さんの体を支えながら体をすり寄せた。俺はもう熱くなっているけれど、畑さんだってちゃんと反応してくれる。下肢に触れる確かな熱に、俺は更に煽られてしまう。
冷静に、丁寧に。この人を傷つけるような抱き方はもうしないと誓った。最初のアレは酷かったから。あの時はとにかく焦ってしまって、どうしても手に入れたくて無理をしてしまった。
でも、今はもうあんなことをしなくても、この人は受け入れてくれる。
「野瀬、風呂の意味ない!」
「意味?」
「汗とか流してない」
「あぁ」
案外拘りますよね。
俺としては貴方の匂いが強いままのほうが興奮する。それに味わいたい。でも、そういうのを嫌がる人が多い事も知っている。
シャワーのボタンを押すと、俺の背中に湯がかかる。畑さんの胸元にも。その、水の滑り落ちる肌が美味しそうで、唇で触れていく。首筋も、鎖骨も、胸元も。くすぐったそうな声が徐々に艶を帯びて、壁に手をついて支えないと倒れてしまいそうになっている。
「畑さんって、胸弱いですよね」
「うるせっ! 誰がこんなにしたんだ!」
「俺ですね。責任とります」
「はぁ……んぅぅ!」
可愛い。勿論、責任は取る。もうこの人を離さない。
「もっ、頼むからお湯ぐらい浴びさせろよ!」
あっ、ちょっと本気で嫌がってるかも。
一旦体を離すと、それはそれで絶景が目の前にある。引き締まってきた体は筋肉の形が薄ら浮かび上がっている。それでも暑苦しくない、細い体。引きこもりでがちで白い肌に、小ぶりな乳首が今はぷっくりと色を増してある。それに下も、ゆるゆると頭をもたげてぷっくりと先走りを滲ませている。
急速に、ムラムラとした気分が湧き上がる。もう風呂の中でいいからもみくちゃにしてしまいたい。壁に手をついたまま後から? あられもない声が響く空間で、この人を抱き潰してしまいたくなる。
「みんなよ、エッチ」
「!」
裸だってのに自分の体を抱きしめて上半身を捻って隠そうとする仕草が余計に可愛い。恥ずかしいからか、熱に当てられたのかほんのり色付いた肌でそんなの、煽っているとしか思えない。
でも、ちゃんと見てもいる。少し震えている。もう、温かい季節ではなくなったから。
俺は手を引いて湯船に誘った。足を湯に浸し、縁に腰を下ろさせ背中を壁につけたまま、畑さんの足の間に体を滑り込ませる。そして目の前にある肉棒にキスをした。
「おま! 待てって!」
「嫌です」
「体洗ってない! 汚い!」
「では、俺が綺麗にしてあげますよ」
大いに焦る畑さんを無視して、俺は一気に口の中に入れてしまう。フェラは、これが二回目。どうやら一回目が余程しんどかったのか、初めての夜以降させてもらえていない。
でも、気持ちいいのは分かる。腰の辺りがピクピクして、腹筋の辺りに力が入っている。抑えられない声が漏れて、体が折れていく。
可愛い、俺の手でこんなに乱れて。もっと乱したくて深くまで入れて、舌で筋を刺激していく。先走りと唾液が混ざっていくものを嚥下して、形を確かめるように口腔の全部で刺激して。まさか俺が、フェラなんてする日が来るなんて思ってもみなかった。しかもこんな、喜んで。
「あっ、野瀬イヤ、だっ」
「気持ちいいですよね?」
「だっ、お前……っ!」
触れている太股を通して、伝わる。水音に混じる密かな息づかいで分かる。気持ちいいでしょ? 濡れた目をして俺を見下ろしている貴方からは、戸惑いはあっても拒絶はない。あの日見せた苦しくて、辛そうな顔じゃない。
奥まで入れて、締め上げて。俺の頭を押しても離さない。貴方は、俺のだ。
「野瀬!」
「っ!」
喉奥に絡まるものを嚥下することに、躊躇いなんてない。他の奴ならこれを噛み千切ってでもご免だが、今は逆に滾る。匂いも……何よりこの人の色に濡れた顔を見るだけで俺の欲は深まっていく。
「野瀬……」
見上げる俺の顔に、畑さんの手が伸びてくる。こんなことなかったから呆然と見ていると、ふにゃっとした笑みが返ってきた。
「どしたんだよ……妙な顔して」
「!」
その顔があまりに可愛くて、衝動的に伸び上がってキスをしてしまった。凄く間抜けな顔の畑さんを見て、思わずやってしまったと冷や汗が出る。フェラした後で口もすすがずにってのは……嫌、だっただろうか。
でも、そんなのは杞憂だった。ぶわっと赤くなった畑さんを見て、俺の欲は酷く疼く。耳まで真っ赤だ。
俺、本当にこの人の事が好きなんだ。
ドキドキが止まらない。今すぐこの人を抱きたい。立ち上がって、逆上せてしまいそうな畑さんの腕を引いて風呂の外へと連れ出した。
「おい! 体濡れて」
「いい」
本当はよくない。部屋が濡れるとか、濡れたシーツで寝るとか無理。でも今は直ぐにでも畑さんを抱きたい。一分でも一秒でも速く貴方が欲しい。
部屋に駆け込んで、直ぐに抱きしめてキスをして、こんなに余裕がないなんて恥ずかしい。
「野瀬、落ち着けってっ」
「畑さん」
「落ち着け、こら……っ! 落ち着け!」
ゴスッ!!
裸の腹に思い切り食らった蹴りは……やっぱり威力がすごい。流石畑さん、容赦が無い。好き。
沈んだ俺に息をついた畑さんが、俺の手を引いてタオルを持ってきて拭いていく。ちょっと冷めて冷静になったら、恥ずかしくなってきた。どうもこの人が絡むと俺はダメになる。
「落ち着いたか?」
「…………すみません」
苦笑いをして飲み物を渡してくれて、俺は受け取って飲み込んだ。すっかり落ち着いてしまった。
「ダメですね、俺。貴方の前で情けない姿ばかり。恥ずかしいです」
体も綺麗に拭いた畑さんが笑う。そして徐に、ベッドに座っている俺の前に膝をつく。顔が丁度股間の辺りなんですが……。
「いいんじゃね? 俺の前だけだろ」
「貴方の前で一番かっこよくありたいんですよ」
だって、貴方に惚れて欲しいんですから。
しょぼくれる俺を笑う畑さんが、ちょっとエロい顔をしている。どうして今そんな顔をするんです?
「ばーか、今更かっこつけたって遅いだろ。お前の情けない姿なんて昔、たっぷり見たっての」
「…………」
そうだった。
ニッと笑った畑さんが徐に、俺の股間に触れる。少し力を無くしたそれを扱かれる事に驚いた俺は、直ぐに余裕なんてなくなった。
だって、好きな人が俺のを握ってくれている。ノンケだった人が、躊躇いもなく。
「畑さん?」
名を呼ぶと、畑さんはジッと俺のをみつめて、そして……先端にキスをした。
「え!!」
「うん、残念な事に平気だわ。俺、お前のならできそうだ」
「え? えぇ??」
「あっ、期待はするなよ。下手だからな」
そう前置きをしてから、畑さんはあろうことか俺のモノを咥える。しかもしっかり奥まで。
「むぅ、んっ……お前、デカくないか?」
そりゃ……デカくもなりますよ! え? どうしてフェラしてくれるんですか? 嬉しいけど。嬉しいけど! でも……あっ。
気持ち、いい……。
確かにぎこちなくて上手くない。むしろ上手いほうが問題で、誰が貴方にそんなものを教えたのか小一時間問い詰める事になるのでこれでいいんですが!!
でも、貴方が俺にフェラをしてくれている。こんな可愛い顔で、俺のをしゃぶってくれる。この事実だけで俺はイケると思う。
実際、腰に響く。上気した顔、ぎこちないまでも一生懸命高めようとしてくれる舌使いと唾液を啜るような音。部屋に録音機能付の盗聴器とかないだろうか。こっそり録音しておかずにしたい。
「あっ、畑さん……それ、気持ちいいです」
頭を上下させて一生懸命口をすぼませて。その唇がカリに触れるの、気持ちいい。突然グッと腰にきて思わず前屈みになってしまう。だってこんな……こんな!
こみ上げるものがある。ただ刺激されているというだけじゃない。畑さんがしてくれているってことに意味がある。どうしよう、出てしまいそう。口、全部入らなくて余ってそこを唾液が垂れていく。口の中熱い。それに、肉が薄いのか口の中に引っかかって擦れる。
「ダメ、畑さんっ、イッ……口離して!」
本当にこの人の口の中に出してしまいそうで、俺は必死に引き剥がそうとする。肩を押して頭を押しのけて。でも畑さんは止めようとしない。もしかして、このまま飲んでくれる? 俺のを?
ノンケで、俺が初めての男なら、今貴方がしてくれているのが初めてのフェラ。しかも飲んでくれるなら、これがこの人が飲む初めての男の精で……。
あっ、まずい……。
「ダメです!」
爆発寸前、俺はどうにか畑さんの口を離させたけれど、その時の刺激が致命傷だった。思い切り顔にかけてしまい、顔面ドロドロに。呆然とした畑さんの頬や唇や鼻の辺りまで俺の精液が飛び散って大惨事だ。
「うわぁ! すみません!」
慌ててティッシュを手にした俺の目の前で、畑さんは愉快そうに笑って垂れてきたものを指ですくい取る。そしてそれを口に入れてしまった。
「!!!」
「うわ、まっず!」
だから言ったじゃないですか! 美味しくないですよ! 貴方のはご馳走ですが!!
慌てる俺を尻目に、畑さんは楽しそうにしている。そしてもう一度同じ事をした。
「ダメです、体に悪い! ペッしてください! ペッ!」
「体に悪いって……お前は飲んでるだろ」
「俺はご馳走だからいいんです!」
「なんだそれ」
手にしたティッシュで畑さんの顔を拭いていく。酷い有様で申し訳なくなってしまう。
でも……嬉しかった。
「なんだよ、嬉しそうじゃないか」
「……嬉しかったですもん」
正直な事を言ったら、畑さんはニッカと子供みたいな表情で笑った。
「……欲しいです」
「はいはい」
正面から抱きしめて、畑さんは素直にベッドに上がってくれる。そのまま四つん這いになりそうな人を俺は押しとどめて、正面から膝に乗せて座ってもらた。
「これ、やりにくくないか?」
「大丈夫ですよ」
畑さんは定期的に羽鳥によって腸デトックスをしている。ちゃんとした医療機関でやっているので問題無い。飲食業だから肥満と胃腸系の病気が心配でそのようにしているのだ。
その副産物か、畑さんの入口はけっこう柔らかい。そして感度がいい。そして今日が遊園地デートと知った羽鳥が昨日、この人の腸内洗浄をしたのを知っている。あいつ、抜かりない。
ローションを指に絡めて正面から手を回して尻たぶを掴み、窄まりに指の一本を入口だけ差し込む。くぐもった微かな声がして、俺の胸にすり寄る畑さんが可愛い。キスをして、蕩けさせながら後を解していくと目がトロトロになってきた。
「あっ、おい……んぁ」
もぞもぞと腰を動かすと擦れ合って気持ちいい。というか、煽っていますか? こんなの、おねだりとしか思えませんが。
ダメだ、こんなの悠長にしていたら絶対にミスる。指二本でも柔らかく飲み込んでくれた畑さんの体が前に倒れてくる。受け止めて、キスをしながら性急に指を増やして広げる事だけに専念した。こんな所で脳内念仏を唱え続ける事になるなんて、罰当たりもいいところだ。
「んっ、もっ、十分だって……」
俺を押しのけるようにして腕を突っ張った畑さんが僅かに腰を上げて、そのまま俺の肉棒上に乗ろうとする。俺の方がこれに慌ててしまった。
「待ってください!」
「あ?」
「だって、ゴム」
まだ、つけてない……。
でも畑さんは上気した顔にニヤリとした笑みを浮かべて、柔らかなそこにピタリと俺の切っ先を当てた。
「大丈夫だろ、羽鳥が昨日入念に腸内洗浄してたし」
ゆっくりと、熱い中へと埋まっていく。薄いとは言えゴムで隔てたそれとは違う、直接絡みつく感触に頭がクラクラして腰が重く痺れていく。ローションを自ら足しながらゆっくりと腰を落とす畑さんの快楽に染まった表情があまりに色っぽくて、このまま貪りつくしたくなる。
これは……どんなご褒美だろう。いや、いつかは生でと願っていたけれど、こんなに速いなんて思っていなかった。初デート、初フェラ、初生。え? これ、俺もしかして死ぬ? 死ぬ前に神様がご褒美くれてる的なものではないよな? いや、幸せで死ねる! 死因!!
その間にもゆっくりと腰が落ちてきて、狭い肉壁をかき分け奥へと導かれていく。畑さんは名器だと思う。柔らかく包み込む肉壁は感度が増すにつれて襞が絡んでねぶるように奥へ奥へと吸い付いて絞り始める。腸壁が熱くて、受け入れるくせに出ようとすると嫌々をする。奥が狭くて、コツコツと当るとほんの少し沈み込む。いつ結腸が抜けてしまうかとヒヤヒヤする。
そんな名器を持っていて、快楽には比較的弱いのに、この人自身は漢だ。面倒見がよくて思い切りがよくて、決断もできる。俺様とは言わないが、どっちかと言えば着いてこい! というタイプの人なんだ。
そんな人が、俺には甘えてくれる。こんな弱くて可愛い姿を見せている。この特別感が、甘えた様子が、俺にはたまらなく愛おしい。
「あぐ、うっ……あぁ!」
「っ!」
ゆっくりと沈み込んだ腰が完全に落ちて、畑さんはブルブルと震えてしがみついてくる。絡みつくような動きで俺を締め付けてくる。多分、イッてるんだと思う。
俺も出てしまいそうだった。この人を満足させないまま自分一人でなんてできない。気合いフル稼働して耐えた。脳みその血管切れそうなくらいには頑張った。
「あっ、お、く……っ」
「届いてますね」
先端がギュッと締められて、コツコツと当っている。自重もあっていつもより深い挿入に、畑さんは飛んでるような顔をしている。こっちの快楽は俺が教えたから、まだ慣れないんだろう。雌イキしてる事にも気づいていないんだろうな。
動けない畑さんの腰を軽く持ち上げて支えて、俺は下から軽めに突き上げた。更に深くを探る先端が、狭い部分を抜けてしまいそうだ。襞がもう絡んで欲しそうに締め付けてくる。小さく、でも気持ちいいんだと分かる喘ぎ声を近く感じたまま、俺は我慢しながら畑さんの乳首を唇で包み、硬い先端を食む。
「んうぅぅぅぅ!!」
「っ!」
のけぞるように背がしなって震える畑さんはなかなか息が整っていかない。全身で呼吸をして、汗だくになりながらも俺にしがみついてくれる。こんなの、可愛くて仕方がない。
「すみません、畑さん。もう、限界です」
腰を押し進めるように下から何度も突き、掠れた声で喘ぐ人の唇を奪うように塞いで貪った。限界だ、こんなの。全部が気持ち良くておかしくなりそうだ。頭の中が沸騰するようなセックスなんて、この人と以外知らない。全部がこの人を貪る事だけに傾いている。愛しくて恋しくて、この人なしには息もできないくらい。そんな人を今この腕に抱いている。
「畑さんっ、俺……」
もう、イク。全身がこの人の奥深くに己の証を刻む事に集中している。全身の血管切れそう。本当に死ぬかもしれない。
そんな興奮の中、不意に畑さんが俺に強く抱きついた。
愛しさが溢れてくる。これは少し前まで、一方的だった。少しずつ前に進んで、この人からも感じられるようになったけれど、それでも俺の方が圧倒的に量が多くて。
でも、違う。畑さんからも返してくれる。返そうとしてくれている。気持ちが伝わっているだけじゃなくて、少しずつでも同じ想いを返そうとしてくれる人を、俺は改めて愛しく思った。
「あっ! ぅぐ! ふっ、ぅあぁ!」
「あっ! ぐっっ!!」
逃がさないと言わんばかりに、俺は畑さんの深い部分に俺の一部を注ぎ込んだ。体の奥深くに刻むように何度も。畑さんもそれを受け入れながら、いつの間にか果てていた。
「あ……はは」
「畑さん……」
「たっぷり出たな……」
自分の腹の奥を探るように摩る畑さん。そんなの見せられたら可愛くて仕方が無い。なに? 孕ませて欲しいんですか?
「うぉ! ……お前」
「うっ、ごめんなさい」
だってこんな可愛いのを見たら、大きくなるでしょ。貴方は自分の魅力に気づかなすぎなんですよ。少なくとも俺の目から見たら、貴方はとても漢で可愛くてたまらなく美味しそうなんです。
「……野瀬、明日仕事は?」
「夜に少し」
「じゃ、日中は寝てられるのな?」
「急ぎの事が舞い込まなければ」
羽鳥からは「どうせ次の日なんて来る気ないでしょ?」と言われてしまった。
首を傾げる俺に、畑さんは笑う。そしてドロドロの中がまたキュッと締まった。
「!」
「じゃ、もう少しいいか。これじゃお前、一人でシコらないとならないとだろ」
「……面目ないです」
「はは、若くて可愛い所があるんだな」
「可愛いのは貴方ですよぉ」
「はぁ?」
不服そうな声と睨む目。でも俺には全部可愛く映る。
こめかみの辺りにキスをして、俺はお言葉に甘えておかわりを貰う事に決めた。その分明日は手厚く看病しよう。
ふと見えるがら空きの耳元。そこを唇で挟んで舌で転がし喘がせながら、俺は今年のクリスマスプレゼントを決めた。
ここに相応しい、俺の証を贈ろう。この人は俺のなんだと、誰からも分かるように。
END
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