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ホワイトデー番外編 前編
レンは朝からそわそわしていた。スマホを何度も見たり、何をするわけでもなく部屋の中をうろちょろしたり。
「レンどうしたの?」
朝食の片付けをした後聞いてみたら、
「んー、なんか今日予定があったと思うんだけど」
と首を捻っていた。
「そう?特にないけど」
「いや、わざわざアラームがかけてあってさ。でも肝心の用件が登録してない」
「ふうん」
イライラしてきたって眉間に皺が寄ってきたから買い出しに誘った。中華街から離れたスーパーにゆっくり歩いて行く。
そこで買い物をしていると、レンは「あっ」って声を上げた。気まずそうに僕を見る。
レンが見ていたのは、ホワイトデーのギフトのコーナーだ。水色や白の包装紙を纏った箱が積まれている。
「完っ全に忘れてた・・・」
レンは肩を落とす。え、忘れてた用事ってそれ?
「なんで?気にしないでいいのに」
「いや毎回俺ばっか・・・一回も返したことないし・・・」
レンは照れくさそうにそっぽを向いて、声も小さくなっていく。
「僕があげたくてあげてるんだからいいんだよ」
言ったら睨まれた。あげたものは使ってくれているし、僕にもプレゼントしたいって思っててくれただけで嬉しいんだけどな。多分、それじゃ気がすまないんだよね。年上っていうのを気にしてるし。
「じゃあ、今日は僕のお願い聞いてくれる?」
レンは一瞬目を丸くして、「別にいいけど」って満更でもない顔をしてた。
「それじゃ、手を繋いで」
えっ、て戸惑いながらも指を握ってきた。
レジに並ぶ時も会計している時もちゃんと繋いでた。引っ込みがつかなくなって恥ずかしそうにしている。それがとってもかわいくて頬が上がってしまう。
「せっかくだから寄っていこっか」
ってカフェに誘えば顔を顰めたけど頷いた。買ったものは保冷バックにいれてあるから、少しの時間なら持つはずだ。
高さのあるふわふわのパンケーキとチョコレートパフェとコーヒーを頼んだ。
「コーヒーだけでよかったの?」
チョコレートソースがかかったアイスを食べながら聞く。
「それ見てるだけで胸焼けがする」
ってブラックでコーヒーを飲んでた。チョコのアイスも小さく切られたブラウニーもしっかり苦味があって食べやすいんだけどな。
「お前昼飯それですませる気かよ」
「え、ちゃんと食べるよ」
「どんだけ食うんだよ・・・」
レンは呆れ気味に腕を組む。
「わかった、昼飯奢る。どこにする?」
「いいよ、買ったものしまわなくちゃいけないし」
「でも」
「今日は僕のお願い聞いてくれるんでしょ」
にっこり笑えば、レンは顔を引き攣らせた。
「楽しそうだな・・・」
「うん、すっごく楽しいよ」
レンは渋い顔をしてコーヒーを飲んでいる。どうやって躱そうかって考えてるのか進みは遅い。
僕もニコニコしながら、帰ったら何してもらおうかなってレンを眺めながら考えていた。
end
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