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ホワイトデー番外編 後編

とんでもない約束をしてしまった気がする。たまにはスイにプレゼントしてビックリさせてやろうと思っていたのにすっかり忘れていた。アラームまでかけていたのに、スイに見られたらヤバいからと件名を登録してなかったのも痛かった。 「今日は僕のお願い聞いてくれる?」 って言うスイに簡単に頷くんじゃなかった。手を繋いだまま連れまわされるのは正直気恥ずかしかったし、入ったカフェでどう躱そうか考えながら粘ったけど俺の頭じゃそんなもん思いつくわけがない。 家に帰ってからスイに言われるまま買ったものを冷蔵庫にしまいながら、もうどうにでもなれと腹を括る。 でもスイは昼食を作りながらあれとってとかお皿出してとかいつも通りのことしか言わない。 片付けも自分でやってた。もう気が済んだのかなと思ってたら、夕方あたりにやられた。 風呂に入ろうとしたら 「あがったらこれ着て」 って服を渡してくる。おいこれスイのシャツじゃねえか。スイは笑顔で約束したよね?とでも言うように無言で圧をかけてきやがる。 実際に着てやって出てこれば、そりゃあもうご機嫌だった。座椅子に座ったまま俺を膝に乗せる。下はパンツしか履いてないから、膝を曲げるとスースーする。袖も余ってて指が隠れ、髪を耳にかける仕草さえやりにくい。 「もっと前から言ってくれれば、色々用意したんだけどな」 そう言いながらも手が太腿を伝ってくる。下着を脱がされた。 「・・・変態」 「色っぽいのもいいけど、かわいい服を着たところも見たいな。もこもこのルームウェアとかふわふわのスカートとか。ダメ?」 首筋にキスマークをつけながら、耳元で囁いてくる。吐息が艶めき、声は甘く低くなって腰に響く。 答える前にキスされた。当然唇を合わせるだけじゃ済まされなくて、口を離すと唾液が糸を引いた。 「ベッド行こっか」 スイは俺を軽々と抱き上げ、丁寧にシーツの上に下ろす。スイは俺から少し離れたところに座って 「自分でしてみて」  とニコニコしている。 たまにいたな、こんな注文する客が。こんな屈託のない笑顔で言うやつは初めて見たけど。 シャツの下に手を潜り込ませてブツを握る。 「ちゃんと見せて」 「うっせえな」 「もっと脚開いて。そうそう」 尻をついて脚を開き、シャツの裾を捲って反対の手で押さえる。触って扱いてるうちに、そこは芯を持って熱くなってきた。スイは膝を抱えてそこや俺の表情をじっと観察する。スイの真剣な眼差しはヒヤリと冷たくて、熱を孕んだペニスに視線を注がれるとゾクリとした。 「後ろは触らなくていいの?」 スイは首を傾ける。いいって言ってんのにローションのボトルを渡された。 手に出したはいいけど余ってる袖が邪魔で捲り上げた。そのままだとヒヤッとするから手を擦り合わせて少し温める。セックスしてからそんなに日数が経ってないから、指一本分くらいなら易々と入った。指を屈伸させてイイところを探る。 しこりを探り当てると小さく声が漏れて肩が縮まる。 すると、スイが近寄ってきてナカを弄る手に手を重ねてくる。 「ねえ、どこが気持ちいい?」 スイの指が、俺の指をなぞりながら孔に入ってきた。抜こうとしたら「そのまま触ってて」って前立腺を刺激する指先が上からぐっと押される。嬌声が飛び出しそうになって唇を結んだ。 「ここ?」 確かめるように俺の指に指を絡めて円を描く。頷けば、スイが俺の手を掴んで孔から抜いた。さっきまで触ってたところを的確に指の腹で抉る。 自分で触るよりずっと強い刺激と快感に、叫ぶように喘ぎ背中が大きく反り返った。 そのままシーツに倒れ込んでもスイは俺を逃がさない。背中に腕を回して俺を抱き込み、人差し指と中指はピストンを繰り返す。 「ここ好き?」 何度も腰を跳ね上げて悶える俺の反応を見て分かってるくせに、そんなことを聞いてくる。 スイの言葉を理解するより先に身体はキモチイイ方の刺激を受け取って、口からはあられもない声しか出てこない。スイの指の動きに合わせて、背中をのけぞらせたり足の指が丸まったり踵が浮いたりした。 視界がチカチカし始めて、白い光が集まってくる。眩しさに目をギュッと瞑ればイッてしまった。 それでもスイは手を動かすのをやめない。手首を掴む。 「イッたってば・・・っ」 「そう」 スイはニッコリ笑う。手を緩める気はないらしい。 「もういいって、スイッ・・・」 「なんで?気持ちよさそうだよ」 「イイ・・・けどっ、んっ」 「じゃあいいよね」 軽く爪弾くように触れられるたびに頭の中が痺れて、過ぎた快感に神経が焼き切れそうになる。 嬌声を吐き出しつつける口の中が少し乾いてきて唇を閉じた。歯を立てて噛んで綴じる。 「他のとこ触って欲しい?」 スイは俺の乱れた髪を顔から払いながら言う。そこ以外だったらどこでもいい。コクコクと頷けば 「どこ触って欲しいの?」 って熱っぽい目をたわませる。喋る余裕なんてなかったから無言でシャツのボタンを外した。触ってもいないのに立ち上がる胸の尖をさらす。 「ここでいいの?」 「いいから、」 手を抜けって言おうとしたら、スイは指を入れたまま乳首を口に含んだ。軽く吸われてるだけなのに大きく身体が跳ねる。ヤバい。腹の中の圧迫感と一緒に射精感が迫り上がってくる。 スイのシャツをすがる様に握った。白濁が飛び出すのに合わせて身体が震える。スイは顔を上げて、空いている方の手で俺をギュッと抱きしめた。スイの腕の中でイッた後は、身体の芯が痺れて頭がぼうっとした。スイの腕が解かれると、縮こまっていた手足が伸びていく。 「レンかわいい」 スイは満足気にキスをしてくる。孔からは圧迫感が抜けない。でもナカでゆっくりと泳ぐだけだったからスイに求められるまま口を開く。スイの肌は汗ばんでいて、口の周りは少ししょっぱかった。 「好きだよ」 熱い息とともに耳に吹き込まれてゾクっとした。 顔を隠す様にスイの首に手を回す。 「レンは、僕のこと好き?」 口を開きかけるけど、喉がひりついて言葉が出てこない。めちゃくちゃ喘がされたのもあるけど、普通に恥ずかしいし。 「・・・そうじゃなかったら、とっくに」 「ダメ。ちゃんと言って」 顎をすくって顔を上に向けられる。純真そのものって感じの澄んだ目が、俺を真っ直ぐ見つめてくる。首の付け根がじわじわと熱くなってきた。 「・・・ヤダ」 「今日は僕のお願い聞いてくれるんでしょ」 まだ引きずるか。黙ってたらスイは俺の顔に頬を擦り寄せた。 「セックスする時は言ってくれるんだけどな」 「っ!言ってなっ・・・!あっ・・・もっ、そこ触んなって・・・!」 さっきまで執拗に触られていたところをぐっと押されて、快感がぶわりと蘇る。それは背筋をゾクゾクと駆け上り、あっという間に脳内を満たした。 「ヤダッて、言って・・・あ、あっ!」 「やっぱり覚えてないんだね。もっと気持ち良くならないとダメかな」 言い返してやりたかったけど何も考えられなくなっていった。喘ぎの合間にもう無理とかダメとかしか言えなくなって、スイがまだ服を脱いでもいないのに何回イかされたか分からない。 ぐったりして眦を濡らす俺に「挿れていい?」なんて聞いてきて鬼かと思った。 ふるふると首を振る。 「僕も気持ち良くなりたいな。一回だけ、ね?」 頭を撫でながら宥めすかしてくる。手の感触や優しい声音が心地よくて、瞼が重くなってきた。 「もうちょっとがんばって」 クスクスと笑う顔に気が抜けて、それを許したのが間違いだった。それからまた何時間も挿れたまんまイかされる羽目になった。 大変な目にあった。今度からは記念日とか余計なイベントは無しだ、無し。 起きたら真っ先にスイに言ってやる。 「好きだ」って言葉だけでそんなに喜ぶなら、下手なモノなんて俺たちにはいらないだろ? end

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