37 / 114

既成事実 Ver.翔

「…あっ…んんっ…はぁ…っっ…やっ…あぁ……」 ローションをたっぷり滴らせた後孔に指を入れて抜き差しを繰り返しながら、男を熟知している手が少しずつ指を増やしていく。 指や舌は感じやすい場所を見つけては執拗に刺激する。 既に医療服は全て脱がされて、全裸の状態で腰だけを高く持ち上げららた状態で指を抜き差しされている。 感じたいとは思いたくないのに、躰は心とは反比例するように、反応して声を上げてしまう。 男に抱かれることを慣らされた躰は、否が応でも反応してしまう。 「君は感じやすいんだね……想像以上にいい表情をしてくれる。だけど……柳田さんもやってくれるね。まさか、君の躰に鬱血痕(キスマーク)があるなんて考えてもみなかったよ。」 全身を弄り、児嶋の手がペニスに辿り着くのと後孔を弄る指が前立腺に触れたのは、ほぼ同時だった。 「ひぃぃ…!!やぁ……ん」 「……イイところを見つけたよ?」 蜜を滴らせた先端をグリグリと刺激しながら、その場所に触れた指が、ぬめりを利用して強烈に上下にそこを扱く。 「イヤァぁぁぁぁぁ……」 前と後ろから与える快感に躰がビクッビクッと跳ね上がった。 目の前が真っ白になり、その欲望を吐き出してしまう。 ……この男……手馴れてる…… 「もう、イッちゃったの?可愛いね。でも、まだ、早いよ?それとも、空っぽになるまで愛し合おうか?」 荒い息を吐き出しながら、その強い快感に躰がついていけない。目から生理的な涙が流れだしてしまう。 「ひゃあぁぁっっ!…やぁぁっ」 悲鳴にも似た嬌声が喉からつき上がる。陰嚢の付け根から裏筋をねっとりと舐め上げられると、気持ち良すぎて、声を上げてしまう。 それでも児嶋を受け入れることだけは拒否したい、と思うなけなしの理性ですら投げ出してしまいそうだ。 先端の割れ目を指でグリグリと抉るように刺激されると、軽く痛みが走るが、徐々に快感にすり替わっていく。 その刺激にも反応して蜜を溢れ出させた。指と入れ替わるように蜜袋を刺激しながら、舌で蜜を舐め取られるように刺激される。 「…いゃぁ…ふぅ…んんっ…」 「悦さそうだね。もっと自分を開放して気持ちよくなりなさい。」 口先だけの否定にしかならないが、嫌だは言い続けた。 「それにしても綺麗な顔立ちだな。それに、そんな感じきった顔で、イヤと言ったって、イイと言ってるとしか聞こえないよ。 もっと、直接的に感じてもらおうか。もっと乱れた君が見たい。」 指を引き抜き、熱い塊が押し当てられた。ダメだ、これを受け入れたら戻れなくなる。 「!! やっっ!…イヤ…ダメ…」 少しヘッドレスト側へ躰が逃げるが、腰を掴まれ引き戻され、そのまま一気に貫かれた。 「あぁぁぁぁぁぁっっ!!」 圧迫感と痛みに悲鳴をあげてしまう。きつくシーツを握るが、それだけでは衝撃を相殺することはできなかった。 気を失うかと思うほどの衝撃を完全に受け止める間もなく、児嶋は律動を始める。 痛みの中にも粘膜同士の接触から生まれてくる熱さがジワジワと広がっていく。 苦痛から上がる喘ぎの声の高さが、快感からくる喘ぎへトーンを変えていく。それを確認するかのように、動きが大きくなっていく。 「あんっ、あっ、あっ、あぁぁっ」 断続的に喘ぐことしかできない。完全に快感に飲み込まれてしまった。唇を塞がれ、舌が口腔内に侵入してくる。 侵入してきた舌に応えるように自分の舌を絡ませると、きつく舌を吸われて甘噛みされる。 そんなことにもゾクゾクと快感が走り抜け、内壁が収縮する。腰を動かしながらキスをしている児嶋も感じているのが息遣いでわかるほどだった。オレはもう、誰を相手にセックスしてるのか、すらわからないほど溺れていた。 「…あぁぁっっ、あぁっ!!も…ダメェェ、イ……イクっっ!!」 その声と同時に児嶋の動きも荒々しくなる。さらに追い上げられ、悲鳴のような声をあげて白濁を吹き上げた。 翔も、児嶋を絞り上げるように内壁を痙攣させて、ギュッ、ギュッ、と絞りあげてしまった。その奥に熱い飛沫を感じて、児嶋も達したことを知った。 イッたばかりだと言うのに、児嶋自身が固く治まらないまま、また腰を使い始め、イッたばかりで、敏感になっている躰は、また貪欲にそれを求めその熱に溺れた。 2回目が終わった後、荒い呼吸が治まってきた時、冷静な思考も蘇ってきた。 ………やらかしてしまった… ………交換条件に目が眩んだのは事実だ。 けれど、これが最善の選択だったのだろうか?その疑問が消えることはなかった。 そして、児嶋のこの要求は、少なくとも、徹が最期の時を迎えるまでは、拒絶することすら出来ないだろう。 徹はこれを喜びはしない。 誰にも口外することなく、オレが墓場まで持って行けばいいことだ。どれだけの時間を生かされるかわからない。 けれど、なにもしなければ、もって一ヶ月ももたないだろう。少し耐えればいいことだと、わかっていても徹への後ろめたさに胸が痛んだ。

ともだちにシェアしよう!