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その時 Ver.翔
その時、罪悪感を感じながらも、
躰は快感を貪っていた。
彼に知られたことも知らずに………
徹との約束の時間までは充分にある。そう思って軽く掃除と洗濯をして、パソコンを開こうとした時だった。
不意に児嶋から病院に呼び出されたのだ。
『柳田さんの検査があるのは知ってるよね?今日の検査に立ち会わないか?』
今日の検査は児嶋も立ち会わないはずだし、
おかしいとは感じてはいたが、少なくとも彼の主治医だ。状況がかわったのかもしれない。
そう言われたから病院に足を運んだのに、出迎えた児嶋は、抱かせろ、と迫ってきたのだ。
さすがに、その呼び出し方に腹が立ったから文句を言っていた。けれど、懲りるような素振りも見せず、高圧的でいて、ニヤけた表情で治験の話で脅してくる。
『君がその気なら、柳田さんの投薬を打ち切ってもいいんだよ?それは、最初の契約の時に言ったよね?』
その言葉にオレは弱かった。投薬を打ち切られたら、徹の命の灯火が消えてしまう。
そんな言い合いをしながら、いつもの部屋に連れていかれる。それでも、文句を続けるオレは、その時、初めて児嶋に唇を塞がれた。キスだけは拒否してきたのに……
服からするりと手が入り込み、弱い場所か躰への愛撫を繰り返しながら、段々と躰から力が抜けていく。真夏の軽装は簡単に脱がされていきあっという間に全裸にされる。
心は徹にあるのに、すでに児嶋に弱い場所を知られ嫌いな相手であるはずなのに、与えられる愛撫に慣らされた躰は、素直に快感を拾い、目を瞑っていれば、誰に抱かれているのかさえ、わからない。
オレにとって、この行為は愛情表現ではない。
援交と同じものだ。徹の命が対価なだけで。
それ以上の価値があるということだ。援交で得られるような金額の問題ではない。愛する人の命が対価なのだ。
簡単に快感を拾っていまう自分の躰は、男に抱かれ慣れてしまったモノだと取れ思い知らされる。そうならないと心が壊れてしまうような経験が仇となっているのだろう……
少しの愛撫で、簡単にペニスは形を変え、その先端からは、はしたなく、牡の匂いのする透明な液体を垂れ流す。
その匂いが児嶋の鼻腔をくすぐるとヤツのスイッチが入る。先走りを指先で救い取り、その指を舐めさせられる。
この部屋には、コンドームもアナルセックス専用のローションまで完備されているのに、最初の指の挿入は、オレの唾液でスタートする。
少しずつローションを足していき、指を増やし、慣らしたところで、後ろから貫かれる。
「ひゃぁ……あぁ……んっ!!」
ゾクゾクと背筋に愉悦が走る。ちゃんと前立腺を掠めて抉るように責め立てられる。
自分が慣れてる以上に、児嶋も男の抱き方にかなり慣れていた。
「あん…イヤ……んっっ……あぁ、あっ、あぁ…んっ、ぁぁぁ……あぁ……あっ……ん……」
「イヤ?そんなに悦さそうな表情をしてるのに?君は嘘つきだね。」
その勢いで、さらに強く奥まで突き入れては、抜けるギリギリまで引き抜いては、また勢いよく奥を突く。
「…やぁ…あん…そ…な…したら……すぐ、イッちゃ……」
「何度でもイケば良いよ。次は前から抱きたいからね。」
「…はぁ……んっ…こ…な……こと……してても……だれ…も……本気で…あぁぁぁ……」
急に激しく腰を動かされ、言葉が最後まで紡げない。この人は何がしたいのだろう?
「私は、君が好きなんだよ。柳田さんの手前、この関係で我慢してやってるんだ。」
ーー………好き?
その言葉さえ、うまく理解出来ないまま、翻弄される。躰は正直に快感を拾い上げ苦しいほどに追い上げられる。
「アッ、アッ、ヤッ、イクっ、あーーーー!!」
勢いよく白濁を飛び散らせ、児嶋もオレの中にその飛沫を注ぎ込む。
ーー熱い……
その熱が徹のものならいいのに……
荒くなった息を、整えながら躰を、うつ伏せから仰向けにされた時だった。児嶋のPHSがなったのは……
面倒臭そうに全裸のまま、その電話に出ると、
「え?なに?もっと落ち着いて?……柳田さんが?なんで?……わかった。すぐ行く。」
オレも起き上がり児嶋を見る。
「柳田さんが救命で蘇生中だ。詳しくはわからないが、あの身体で院内を走っていたらしい。救命にはちゃんと伝えておくから、支度を終えたら来なさい。」
児嶋は医師の顔に戻る。児嶋ともかく、オレはシャワーを浴びなければならない。中に出されたものの処理もしなければならないからだ。
一刻も早く状況を知りたいのに…………
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