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2人でさえいれば Ver.翔
先日、届いた徹宛の荷物を、今日、紙袋に小さなダンボールを入れて手渡した。
何に興味をもったのかわからないが、手渡した時に嬉しそうな顔をしていた。
「徹が今、欲しいものってなに?」
突然の質問に徹の目が点になる。
そのままの表情で、一言だけ
「翔」
と付け加え、指を差す。
「オレ以外で!!それと人に指ささない!!」
子供に諭すように、言わなければならない事がたまにある。元々の持っているものなのか、自分より年上ではあるが、たまに子供のような行動をとることがあるのは病気の所為なのだろうか……?
年をとると子供のようになる、というけれど、生命の灯火が弱くなると、子供のようになってしまうのだろうか?
かつて、母親に注意されたように、照れもあり、強く言ってしまった。
通販で買ったものは、なんなんだろう?
まぁ、自力で買えるものを、欲しい、と強請る人は少ないだろうが。
男同士だから、おそろいのアクセサリーというわけにもいかない。しかも、オレは研修中には付けられない。
「僕に物欲はもうないよ。手に入れたいものは翔だけだよ?」
頬が熱い。
多分赤くなってしまっているのだろう。
それでも、気になったことを口にする。
「通販やってるのに?」
その言葉を待っていたかのように徹は微笑む。
「あれは特別だよ?見てみる?」
そう言って箱を開けて中身を出す。
「……なっっっ!!!」
オレは言葉を失ってしまった。
「今の僕じゃ君を満足させられないからね。
物には頼りたくはなかったけど……」
そう言って見せたのは、『大人のオモチャ』だった。
「本当に便利だね。コンドームだろうが、専用ローションだろうが、簡単に手に入るよ。
夏休みの勉強の間はこれを挿入れて、一日過ごしてみてよ?バイブも着いてる新しいタイプなんだって。」
エネマグラ……それにだけは、真底拒否をしたい。あれは拷問道具だ。
「病院にパソコン持ち込んで、何をしてるのかと思ったら、こんなもんを検索してたのかよ。」
呆れ声でそのオモチャを、手に取って見てみるが、エネマグラだけには、手を伸ばさない。
「セックスは確かに気持ちいいけど、オレは徹と抱き合うだけで十分、気持ち良くなれるんだけど?」
「それじゃ、僕が不安なんだ……今は……僕が生きてる間だけでも、翔を独占したい……」
……不安?独占?意味深な言葉な出て来る。
やっぱり何かを気づかれているのだろうか?
児嶋の、セクハラにくわえて、佐川まで便乗してきた、なんて話は出来ない。佐川の言う通り、妙な色気、というのを、オレは撒き散らしているんだろうか?
「……オレは徹しか好きじゃないし、徹だけの物だよ?オレはそう思うけど、徹は違うの?」
「……違わない……けど……翔のイく時の顔が見たい。誰にも見せない表情を、僕だけが見れる優越感に浸りたいだけなんだ。それとも、ここで、オナニーしてくれる?」
なんて、とんでもない事を言い出すんだ、この人は……
「……わかった。徹の好きなようにしていいよ……」
「それじゃ、下半身だけでいいから、裸になってよ。」
そう言って、後孔にローションを垂らし、指を挿入する。
「……柔らかいね。寂しくてアナニーでもしてた?指で?それとも、オモチャで?それとも、ほかの誰かにその寂しさを埋めてもらってた?」
「……そんなこと……」
その言葉が冷たい。返す言葉も見つからない。
たぶん、何らかの形で、児嶋との関係を知られたのかもしれない。
たとえ、それが『交換条件』だとしても、裏切っていることには変わりない。
ローションを少しずつ足しながら、徹とほぼ同じと大きさのディルドが挿入される。
「……はぁ……んっ……」
ジンと脳髄が痺れるような感覚と、冷たい無機質なオモチャだとわかっていても、懐かしい大きさと、徹の声に躰が反応してしまう。
「…あっ……イィ……」
徹はオモチャを出し入れしながら、冷静に、オレの表情を見ている。瞑ってしまいそうな眸を薄く開きながら、オレも徹を見つめた。
段々と早くなるその動きに、前立腺を狙って突かれて、引き抜くその感覚は、徹のセックスの癖とよく似ていた。
「……やァ……も……イッちゃ……」
「いいよ。」
そう言うと、徹はオレのペニスを咥え、口で扱き出した。その生暖かい粘膜の刺激に一溜りもなかった。その吐き出した精液を、何の躊躇いもなく、徹は飲み干した。
「……薄いね。もう、すでに何回か出してるの?君は僕がいなくなったら、誰のものになるんだろうね。」
「徹以外なんて考えてない……」
大好きな匂いのする胸に抱きつきながら、その大好きな匂いを嗅ぐ。洗濯物の匂いとは別に、徹の匂いがする。この温かい体温で、この匂いを嗅げるのも、あと、どれくらいなのだろう。
心は徹だけ。躰は児嶋の好きなようにされてる。けれど、それを悟られてはならない。
あと一年も生きられないであろう徹とは、幸せなまま過ごしたい。
たとえ、そこに嘘が隠れていたとしても、隠し通せば嘘も真実のまま、幸せになれる。
だからこそ、知られたくない。
――2人の時間を大切にしたい。
そう願うばかりだった。
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