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威嚇と挑発 ① Ver.徹

昨年12月に余命宣告を受けた。 その時で残された時間は半年あるかないか。 時は既に季節は七月の下旬になっていた。 クーラーの効いた病室は暑くもなく 寒くもない。外から来る翔がいつも 「涼しい〜」 と喜んではいたが…… 翔が大学の期末試験を無事に通過したのが 七月の上旬だった。 実習も6月下旬に、一時的にストップして、 大学の方へ戻りつつも、病院には通って来てくれていた。 そんな最中(さなか)の、不貞行為発覚で、僕は死にかけた。結婚してる訳では無いので、この表現が正しいかわからないが、恋人として過ごしてきているので、不貞にはなるのではないのか?とも思う。 本来なら、死んでも良かったのかもしれないが、ここの救命には僕の希望を聞き入れてはくれない優秀な佐川という医師がいる。彼がいない時に搬送されない限り、当面は蘇生されてしまうだろう。 本気で死にたいなら、今の治験を終了させればいいだけのことなのだろうが、今の僕は、翔がいる世界に執着が生まれてしまっていた。 「涼しい〜、一気に汗が冷えるくらいだ。病院の中は快適だね。外はものすごい暑いよ。」 僕の部屋からならさほど距離はないはずなのに、持ってきたペットボトルの水を飲みながら流れる汗を拭っていた。 そして、何事もなかったかのように、翔が毎日のように訪れてくれる日が続いていた。僕も何も聞かないし、彼にも言わせない雰囲気を作っている。 万が一にでも、僕から心が離れて、児嶋の方が良い、などと言う言葉が出てくることが怖かったのもある。 本来、僕はすでに死んでいてもおかしくない、そんな生かされた存在だ。けれど、あの日から感情のセーブが壊れてしまったかのような激しい嫉妬に苛んでいる。 病室に検温にくる看護師が少しでも翔を見て、笑いかけながら話そうものなら、それだけでも色目を使った、と嫉妬してしまう。翔からすれば、お世話になっている病院と、顔見知りの看護師と挨拶するするくらいの事は、常識の範囲のはずだ。当たり前のことのはずなのに…… けれど、そんな事の我慢すら出来ない僕は、その感情をぶつけるように不機嫌になる。八つ当たりだとわかっていてもやめることも出来ず、夜になるたび反省する。 不安定な僕を責めることなく、翔は何をしても僕を受け入れる。それすら腹立たしくて仕方ない。不貞の反省か?と言ってしまいそうな感情を飲み込みながら、僕は更なる行動をとってしまったのだ。思い返せば狂っていた。 数種類の大人のオモチャのうち、翔はエネマグラを特に嫌っていた。それなら、それに耐える彼をみてみたい。そんな興味本位からのことだった。大人のオモチャなんて僕以外と使ったことのないくせに。 食わず嫌いと同じなのだろう。 どうせ悦がってイイと感じまくるに違いない。そう思っていた。が、 「……それだけは本当に嫌だ」 翔は眉間に皺を寄せて、困った顔をしていた。 この時の僕は本当に歪んでいた。嫌がる翔を逆にもっと困らせたくて、翔の意見を無視して、強制した。 折れたのは翔。結局、断らないんじゃないか、と僕はほくそ笑んだ。汗をかいてるから、と部屋のシャワーを利用して、新しい服装に着替えるが、いつものように、彼の後孔を舐めて、緩めてローションを体内に塗り込めるように指を挿入する。 そこからエネマグラを挿入して、服を整えさせて、椅子に座らせる。バイブ付きのオモチャで、定期的にお仕置きをする。 「…ンッ……ふっ……うっ……」 声を抑えながら、シーツを握る。バイブが震えて先端がイイところに当たるように作られたオモチャは、僕を満足させてくれる。伏せ気味の顎を上げて、キスをする。 「……ん〜、んっ、んっ、ん〜……」 デニムの前をパンパンに膨らませて、きつそうに身を捩る。やんわりとそこを撫でると、躰の力が抜けながらも、もっと、もっと、とすり寄せてくる。けれど、それが可愛くて、それ以上の事はしてやらず、焦らし続けていた。 看護師の検温や、食事の時間には、翔の感じてる顔などは他人に見せたりしない。少しの時間は休ませてやった。 また、バイブをオンにして、翔の悶える姿を楽しんでいると、誰かが来る時間ではないのに、病室のドアをノックする音が響く。イヤイヤ返事をすると、現れたのは意外な人物だった。

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