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威嚇と挑発 ② Ver.徹

返事をした後、声もなく開いた扉の向こうから現れたのは、今日は来ないはずの児嶋だった。翔がいることをわかった上で、わざとらしく病室を訪れてきたのだ。 隠しもせずに、苦虫を噛み潰したような表情になる。僕から翔を取り上げようとしてる男だ。 慌ててバイブをオフにして、翔を布団の中に隠した。辛うじて声こそ出していなかったが、荒くなった息を整えるのに必死になっていた。 ドアが開かれたタイミングで、人間の習性とは悲しいもので、翔は顔を上げてしまい、布団から顔を出してしまう。瞬時ではあったけれど、感じいった表情を見られてしまった。 見られてしまったものは仕方ないが、再度、 顔を伏せさせる。 その表情をみて児嶋は生唾を飲んだのだ。 児嶋の興奮した表情は、後ろにいる看護師からは見えていないだろう。 ――確実にターゲットは翔だ…… 「どうしたんですか?児嶋先生?今日は回診予定はなかったはずですが?」 不機嫌なのを隠さないまま言い放つと 児嶋はニヤリと嗤い、翔を見下ろしてから、 「急ですまないね。本来なら明日の予定だったんだけどね。から、前倒しにさせてもらったんだよ。何か、不都合だったかな? 体調はどうですか?柳田さん。検温や血圧は問題がなかったようですが、身体の変調はないですか?」 「……えぇ、お蔭さまで。痛み止めも一緒に点滴してもらってますから、この投薬を始めてから体調はすこぶる良くなっているとは言えませんが、現状維持って感じですよ。」 翔に手を出しているのことを承知の上で、狙って踏み込まれたのが、物凄く納得が出来なく、不機嫌に答える。 「高宮くんも、ご苦労さまだね。今日も最後まで見舞ってるの?」 「……えぇ……そのつもりです。」 わざと声をかけ顔をあげさせ、その表情をじっくりと見ながら下品に嗤っていた。 僕の方から見ても、翔は欲情しているのがわかるほどの妖艶な色気を放っていた。 ――失敗した…… 僕に声をかけていたって、視線を翔に合わせたまま、こちらなど見てやしない。 『蛇に睨まれたカエル』 という言葉を思い出させるほど、 翔は児嶋の空気に飲まれていた。 僕の腹立たしさはさらに上昇して、 「要件はそれだけですか?回診が終わったなら次の患者さんの所へ行ってあげてください」 と、児嶋を意図的に追い出し、部屋のドアに鍵をかけるようにお願いした後、 「裸になって?」 と言うと素直に翔は全ての服を脱ぎベッドへ入ってきた。愛撫をしながらオモチャを使い、 彼を啼かせた。 「……ァ……イク……」 という度に起立した翔を口に含み、精液が薄くなるまで意地悪く出させては飲んでいた。 ――なんで僕は勃たないんだろう…… 病気や薬の所為だとわかっていても、熱を分かち合いたいのに…… ……翔を抱きたい…… 人の欲というものは、膨らみ続けていくものだと知る。 最初は生きることを諦めて、身を切る思いで、翔と別れたというのに、思わぬ再会で病気がバレてしまったら、今度は死ぬことが怖くなって、ずっと一緒にいたい、と願うようになり、今度は抱きたいと…… 絶対にこのまま児嶋の自由にはさせない、と思った矢先、のことだった。 その夜、見舞いの時間の終了間際、僕が児嶋に威嚇をしていたのではなく、児嶋が僕を挑発していたことを知るのだった。

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