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第3話
「……がお」
小さくそんな声が聞こえて、アヤは目が覚めた。少しうたた寝してしまっていたようだ。正直非常に疲れていたので無理もない。目の前には申し訳なさそうな、やっぱり情けないワンコ。
「呼んでんけど来えへんなあって思って見に来たら……疲れさせたもんな、ごめんな」
すっかり眉を八の字に下げしょんぼりとしてしまったワンコに、アヤは思わず笑ってしまった。そして手をさし出し
「お手」
と言ってやると、リョウもしぶしぶ手を乗せてきた。
「いい子だね」
目を細めるアヤを見て、リョウの眉も元に戻る。
「だから犬やないって……」
言っている間にアヤの顔が近づいてきた。おととしの深紅の瞳、ではないけれど、白銀のような不思議な色の瞳に映るリョウの顔はもう蕩けるようで、犬扱いされても仕方ないと思わざるを得ない。
そっと唇を重ねると、互いの口紅がいやにべとついてねちゃつく。いつもと違う感触だ。
ゆっくりとした口づけが、やがて互いの唇を吸いながら角度を変え、を繰り返し、顔を離した時にはお互いの顔の下半分がほの赤く染まっていた。そしてもう一度アヤの顔が近づいてきて、もう一度唇へ――と思ったら。
「痛っ!」
リョウの首筋にがぶりと噛み付いたのだ。それもわりと強めの力で。そしてその後、同じところをきつく吸い上げた。
「んぅ、痛い、って……」
確かに痛いのだが、明らかに別の感覚がじわじわとせり上がってきて、リョウの切なく開いた唇からたまらず熱い吐息が漏れる。そして頬に添えられたアヤの手にリョウも噛み付いた。こちらは食むような甘噛みで、アヤもゾクゾクしてきた。
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