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第5話
なんだろ、話って
あきらくん、入るのと関係あるのかな
悪い話じゃないって言われてたけど
ソワソワしてしまって
食いに来たスープも味もよくわかんないまますぐに食い終わってしまった
「食うのはや。腹減ってたんだろ、朝あんまり食わなかったから」
『だって、』
「もっと食うか?足りないだろ」
『うん、もういい。平気』
だから、とさっき言っていた
話ってなに、って思ったのに
タバコを吸ってふぅ、と息を吐いていて
まだ話してくれない
『ねえ、』
「どうした、シバ」
『なんか、話って』
「あー、ちょい待ってな」
と、タバコをまだ吸って
話してくれないから
じっとみていると
なぜかにやっと笑われた
「シバ、見すぎ」
『だって、』
「ストロー噛むなって」
と、飲み物を取られる
『だって……おれにもタバコちょうだい』
「ええ、ダメ。身体にわるいし」
『なんでよ、お前だって吸ってんじゃん』
「俺はいいの。大人だし」
『………なんでよ、おれだって大人だよ』
「……火遊びしたらおねしょするって言うだろ」
『…………ちょうむかついたから吸う』
貸せ、と箱とライターを取って
見よう見まねで吸って見るけど
苦くて美味しくない煙が口の中に入ってきて
『ゲホッ、ゴホゴホっ』
まっず、
「あーもう、ほら、バカ」
と、噎せるおれの背中を擦り
手からタバコを奪われて
灰皿で消される
「ほら、不味いだろ。ジュース飲みな」
と、おれがストローを噛んでいたジュースを飲ませてくれる
『げほっ、なんで、こんなの吸ってんの?』
「まぁ、慣れと癖」
そういうもんなのかな
こんな不味い煙、慣れたら美味しくなるのかな
「なぁ、シバ」
『なに?』
「さっき言ってた話だけど」
『……うん、』
「お前、これから俺に付け」
『………ええ?なにが?』
「だから。ヤナギが俺の後付いて回ってるだろ、今。色々管理とか」
『うん?それで?』
「だから、これからはお前がそれをやるって事」
『へえ、そうなんだ』
「それだけか?」
『いや、こっちのセリフなんだけど。なんか話あるってわざわざ重々しく言ってくるから』
なんかもっと重要な事とか言われんのかと思っても無駄にドキドキしたじゃん
「いや、そうだけど。仕事だって覚えること増えて大変になるんだぞ?」
『そうだけど、でも』
「でも?」
『でも、これからはずっとお前と一緒に居れるって事でしょ?』
「………いや、そうだけど、」
と、匡平はなんとも言えない表情をした
『いつから?』
「新月が来月から入るから、それから」
『にいづ、……あぁ、あきらくんか。聞きなれない呼び方するからわかんなかった』
「お前があきらくんって呼ぶなって言ったんだろ」
『…そうだけど……いいや、あきらくんって呼んでも』
「なんだよ、それ」
『だって認識できないんだもん』
「じゃあお前のことも祈織って呼ぶか?」
『やだ』
「え、なんで?」
『だってお前にそう呼ばれるとえっちな気分になっちゃうから…』
「祈織」
『……わざとそういうことしないで』
「なんだよ、いいだろー?」
『タバコすって不味くなったからなんか飲み物飲みたい』
「ええ、お前水分取りすぎるとトイレ行きたくなっちゃうからダメ」
『えええ、だって』
「ダメ。飴でも食っときな。だいたい俺は吸うなって言ったからな」
『だって。お前ばっかり大人でずりいんだもん』
「シバだってちゃんと大人になってんだから気にすんな」
と、頭をぐしゃぐしゃと撫でられる
その扱いが子供みたいなんだけどなあ
でも、ちょっとだけ嬉しかった
ヤナギさんみたいに仕事ができるんだって
よし行こ、と
ご飯を食べ終わって
お店を出ていく匡平の一歩後ろを歩き
匡平の袖を掴む
『なぁあ、』
「何、シバ」
『あきらくん入ってくんの来月なんでしょ?』
「うん、」
『それまでは今まで通り?』
「うん、まぁとりあえず」
『そしたらさ、』
「うん、」
『おれ、来月までにヤナギさんに色々教えてもらってヤナギさんみたいに、匡平の仕事お手伝いするから』
と、匡平の顔を見ると
匡平はおれの目を見て笑ってくれた
「それは楽しみだなー」
と、おれの頭をぐしゃぐしゃ撫でた
あれ、おれ結構いました頼りになるようなかっこいい事言ったと思ったのに
やっぱり子供扱いだった
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