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第15話
「シバ、飯なにくう?」
『スープ』
「お前最近スープばっかり食いたがるな?寒いから?」
『…うん、』
昼休みに何を食いに行くか聞かれ
特に何でも良かったけど
スープ、と答えた
「スープばっかりだと力出ねえぞ」
『別にいい、』
だって、食べたくないから
お腹は空くけど、食べたくないんだ
「…お前、体調わるい?」
『わるく、ない、』
「今色々覚える事多いんだから辛かったら言えよ?」
『へいき、』
と、言ったけど
なんだかフラッとして
机に手を付いた
「シバ?」
『へいき、はら、減ってるだけ』
そう思ったのに
目の前がチカチカして座り込む
「どうした?」
『な、んか、気持ち悪い、』
「は?」
もうダメかも、と
立てなくなった
『んんん、』
どこだ、ここ、
目を開けるとなんか白いし
清潔な匂いがする
消毒か、これ
「起きたか?」
『……きょうへい、』
「お前体調悪かったんなら言えよ、」
『ここ、どこ?』
「病院だよ。お前ぶっ倒れたから」
『ぶっ倒れた?なんで?』
「……貧血だと。なんでってお前の身体だろ」
『………ふらってした、』
「お前本当に最近食わなかったからな、それだよ。原因。今点滴してもらってるからそれ終わったら帰っていいって。今日は帰ってゆっくりするぞ」
『……きょうへい、おこってる、?』
と、早く説明する匡平が怒って見えて
恐る恐る聞いてみる
「…怒ってるけど」
『………ごめん、』
仕事中だったのに、
ぶっ倒れて迷惑かけた
匡平怒ってて、顔を見れなくなって
目を逸らした
「辛いか?身体」
『なんか、クラクラする』
「もうちょい寝とけ」
『……おまえは、…匡平は、』
「俺もここにいるから」
『…きょうへいは、仕事戻っていい、おれ点滴終わったら1人で帰れるし』
「シバ、いいから。俺も一緒に帰るから」
『いいって。仕事戻りなよ。迷惑かけたんだから1人で帰らせて』
「………なに、怒ってんの」
『怒ってないし』
自分が嫌なんだ、と
涙が出そうになるからそんな顔見られたくなくて
ふん、と匡平に背中を向けて
頭の上までシーツを上げた
「シバ」
『………、』
「わかったよ、仕事行くから。帰る時と家帰ったら連絡必ずする事。あと帰り道もなんかあったら連絡しろよ」
『わかった、』
と、音だけで匡平が病室から出ていったのがわかる
情けない、
匡平に迷惑かけた
迷惑かけた上に八つ当たりした
◆◇
家帰ったよ
と、匡平に連絡を入れて
ベッドに寝ようとして
動きたくないけど
1人で寝ておねしょしたらやだ、と
おむつの履こうとしたけど
家にあるのはテープのやつしかなくて
これは匡平が居ないと履けないやつだから
スウェットに着替える時にパンツも寝る時用のパンツに替えてベッドに入った
すぐ寝れそうと思っていたのに
ベッドに横になってると
頭の中がぐるぐるして
涙が滲んでしまう
匡平、怒ってた
おれ、嫌われたかも
迷惑だって、ぜったい思われた
『きょうへい、』
鼻がぐすぐす鳴る
気分は落ちてるのに
おなか、すいた
寝てるか起きているかわからない
浅い睡眠をずっと繰り返してた
何時間こうしていたのかもわからない
不意に玄関が開く音がして玄関まで走っていく
「おお、起きてたんだ。ただいま」
『うん、えっと、』
「なんか食う?貧血に良さそうなの色々買ってきたけど。気持ち悪い?」
『きもちわるくない』
「そっかリビング行こ」
と、匡平はおれに買ってきたものを渡して手を洗いに行く
なんかいつもと変わらない、
おれのこと、嫌いになってないのかな?
『匡平』
「どうした?」
『おれのこと、嫌いになった?』
「なってねえけど。なんで?」
『迷惑かけて、匡平の事怒らせたから』
「……そりゃ怒るだろ。嫌いにはなんねえけど」
『ごめん、おれ、』
「いや、俺も最近シバ食う量少なかったの気付いてたのになんもしなかったし」
『…ごめん、仕事中なのに、迷惑かけて』
「は?そんなんどうだっていいからちゃんと食わなかった理由話せよ。やっぱり仕事内容増えて身体辛くて食欲無くなったとか?」
『…きょうへい、怒らせたから、』
「お前もしかして仕事中倒れて迷惑かけたから怒らせたと思ってる?」
匡平は買ってきたものを温めながらおれの話を聞いてくれる
『…うん、』
「ちげえから。お前がちゃんと飯食わないで体壊したから怒ってんだろ。いや、心配か?」
『…だから、それで仕事出来なくなったから、』
「仕事は関係ねえよ。普通にシバの体心配してんの。…シバ、なんでちゃんと食わなかったの?」
『……ダイエット、してた』
「は?………ダイエット?」
『うん、5キロくらい、減らしたかった』
「なんでだよ、お前別に太ってねえじゃん。筋肉付いてきたし、お前ぐらい体重無いとダメだろ」
『だって、』
「俺がシバ大きくなったって言うから気にしてんの?」
『おれ、太った事ねえから体重どれくらいがちょうどいいか、わかんないし、ダイエットだって、したこと無かったから』
最近、自分でも体重増えてる事だってわかっていた
「だから太ってねえって。なんでダイエットなんてすんだよ」
『……匡平に、抱っこして欲しかったんだもん。22歳の時はしてくれたじゃん……』
「…はぁ?それだけ?」
『……それだけって、』
「なんだよ、そんなんダイエットする前に言えよ」
『だって……抱っこって言うと重いからって、いうじゃん』
「………そうだけど。俺に相談なく勝手にダイエットとかすんなよ」
『だって、』
「座って抱っこはしてただろ?」
『……もっと、前みたいに立って抱っこもして欲しかったんだもん』
「わかったからもうちょい待て。もうダイエットはすんな」
『……なんで、』
「お前がダイエットしなくても俺が鍛えてるから。80キロぐらいまで持てるようにしとくから」
『80キロも、ない、』
おいで、と匡平は手を広げて言った
だから、ゆっくりと抱きつくと
「もう抱っこできるかな」
と、俺の脚を支えるように持ち上げる
『…無理しなくて、いいよ』
「無理してねえけど、っ、ほら、」
と、明らかに無理してる声で言われて
でもなんか嬉しくて
よっと少し床を蹴って
ぎゅっと脚を絡めた
「ちょっ、おいっ」
と、そのまま匡平は俺を支えきれずに
2人して床に倒れる
「バカ、危ねぇだろ」
『だって』
「もうちょい待ってもらうか。俺がシバ抱っこできるようになるまで」
『なあ、匡平』
「どうした?」
『お腹空いた、ご飯なに?』
「ん?お粥」
『ええ、おれちょうはらへってるからカツ丼とか食いたい』
「ぶっ倒れたやつがいきなり胃に負担かけんなって。カツ丼は明日な」
『うん、お粥くう』
よしよし、と背中を撫でてくれたから
先に立ち上がって
まだ床に座ってる匡平の手を引いて起こしてあげる
「俺もシバに抱っこしてもらおうかなー」
『いや、それはむり。お前ガタイいいし』
「んだよ、諦めんなって」
『だって別にお前俺に抱っこして欲しいわけじゃないでしょ?』
「…まぁな」
と、匡平は立ち上がって言って
そのまま固まった
『ん?匡平?』
「………シバ、」
『なに?』
「……腰やった…………、」
『えええ、なんかすげえごめん。抱っこする?』
「いや。無理だと思うから肩貸して……」
ごめん、匡平
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