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第16話

情けねえ いてて、と腰を擦りながら起き上がる 結局あの後病院に行って 軽いぎっくりだと診断され 安静にしていれば治るとの事だった 腰が痛くてよく眠れなくて 早く目が覚めた 隣でシバはまだ寝ていたが 動けなくて準備に時間かかりそうだから 先に起きる事にして ベッドから出ようとしたが その前にシバのおねしょ、とパンツの中に手を突っ込んで確認すると濡れていなくて お、出てねえな よしよし。と安心して ゆっくりな動きでベッドから降りる あー、腰いて 動くと腰いてえ 朝飯作んの無理だからどっかで食ってくか あと今日はシバに運転してもらお 会社ついたら座ってるだけだからどうにかなるし、と考えながら準備をするが 顔を洗うのもやっとで 髭剃りも髪のセットもリビングで座ってやる事にした シバそろそろ起きるかな シバの様子を見に行こうと立ち上がるのもやっとだった まじで歳かよ…いや、まだ33だしな… 若いほうだろ…… 「シバー、そろそろ起きねえと間に合わねえよー。今日シバ運転して」 と、寝室のドアを開け 中のシバに声をかける 『んん、きょうへい、』 「シバ、おはよ。起きな」 『んん、』 と、シバはぼー、と起き上がって ベッドに座ったまま目を擦る 「シバ、朝飯外で食ってこ」 『んん、ねむ、ん、おしっこ、』 と、ぼーっと焦点の合わない目でぽやぽやと視線を動かし 「ん?おしっこ?」 『…おしっこ、』 と、シバの体がぷるり、と震える そして 「あっ!」 やべえ、と気づいてシバに駆け寄ろうとしたが 急に動いたせいで腰に痛みがはしって その場に固まる 『…んん、ふぅ、っ、』 そんな俺を他所に シバはふるふると身体を震わせて気持ちよさそうに息を吐く 「ちょ、シバ、おしっこストップ、」 と、腰を抑えながらどうにかベッドまで行き ガバッと毛布をめくる 『きょうへい、?』 まだ濡れてない、と思ったのも束の間 おねしょパンツの許容量を超えたおしっこがじわ、とスウェットを濡らした 「シバ、おしっこ止めろ」 『…え、あっ、』 と、シバはようやく目が覚めたのか ぎゅっと自分の中心を抑えてベッドから降りる 『おしっ、こ、でた、、』 「おお、ベッドセーフ」 あぶねえ、今日ベッドシーツ替えられねえからなきっと 『漏れた、』 「…いいよ、ベッド濡れてねえから、ほら、着替えるか」 よいしょ、と腰を擦りながらシバが抑えている手を離させようとするが 『あ、……腰、いたいんだった、』 「あー、まだ、ちょっとな」 と、俺が腰を痛めたことを思い出したのか すぐに離れたシバ 『おれ、自分で着替えるから、』 と、泣きそうな顔で言う おもらしして悲しいのに 自分で着替えるのは余計辛いのだろう 「シバ、ごめんなー、お着替えしてやれなくて」 『……おれが、もらしたから、』 座って抱っこもしてやれねえじゃん。こんなの 『パンツ、びちゃびちゃになった、』 「脱いだらとりあえずバケツの所置いといたらいいから」 『ん、』 と、頷くが今にも泣きそうな顔をしていた 「シバ、ベッド濡らさなくて偉かったな」 『…でも、スウェットも、濡れた』 「スウェットぐらいならすぐ洗えるし」 『…うん、』 しょぼん、とした背中が風呂に向かって 結構心配していたが 『おれが今日運転してく!おれ、今日は匡平の飼い主になる』 と、ちょっと気合いを入れて出てきたシバ 「……は?」 『だから、今日はおれが全部やってやるの』 「え?あー、そっか。じゃあ俺動けねえし色々シバにお願いしようかな」 『うん。なんでも言えよ』 「うん」 『匡平、トイレは?』 「いや、今別に出ねえけど」 『ふーん…えっと、じゃあ、ネクタイ』 と、俺の事をみて もう着替え終わってネクタイも巻き終わっている事に気付くシバ 「シバ、お前のネクタイ持っておいで、そろそろネクタイして行こ」 『うん、』 と、シバはネクタイを持ってくるけど 『今日は自分でやるから』 と、滅多に自分で巻かないから 相変わらず下手くそで 「シバ。直してやるからおいで」 と、呼ぶが 『できてるし』 と、シバはふん、とジャケットを着て先に行くから俺もゆっくり後をついて行く 「シバ、ちょっと待って。俺ゆっくりしか歩けねえから」 『そっか、手繋いでやるよ』 と、シバは俺の手を取って俺のペースに合わせてゆっくり歩く 「シバ優しいじゃん」 『だっておれかいぬしだもん』 「そうだったな」 よしよし、とシバの頭を撫でてやる 『匡平朝ごはん何食いたい?』 「ええ?シバは?」 『今日は匡平が食いたいの食うんだけど?』 「えー、じゃああそこにしよ、フレンチトーストの所」 シバの好きなフレンチトーストにしよ あそこなら駐車場も停めやすいし 『匡平フレンチトースト食いたいの?』 「いや、ホットサンド」 『そっか、じゃあそうしよー』 と、車に乗るまでシバは手を繋いでくれて 車に乗る時も手を貸してくれて ドアまで閉めてくれる 情けねえ、本当にまったく 『匡平、』 いくよー、とシバは車を発車させて 「なに?」 『食わせえてやろうか』 「いや、べつに食えるけど」 『じゃあおれなにができるの?』 「ええ、シバ色々やってくれんじゃん」 『なにが?』 「今だって運転してくれてるしー」 『それだけだし』 「それにシバ手繋いでくれるしなー」 と、ちらっとシバの顔を見ると 耳が赤くなったことに気付く あれ、シバ なんかかわいいんだけど いや、 いつもながらかわいいのか

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