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第24話
ばいばい、と虎太郎は手を振って
熱が下がった兄貴に連れられて帰っていった
「はぁ、疲れたな」
今日は午後から会社だというのに既にぐったりだった
『きょうへい』
閉まったドアの前で肩を回して凝りをほぐす
シバ抱っこするより虎太郎のがずっと軽いけど
時間が長いから疲れるよな
と、ドアの前で座り込み
『…抱っこ』
と、手を伸ばすシバ
「抱っこ?」
できるかな、と思いながらも
手を開くと
抱っこ、と抱きついて脚を絡めてくるから
また腰を痛めないように気を付けながら
シバを持ち上げる
『だっこ。虎太郎に取られるかと思った』
「ヤキモチ妬いてんの?」
『……ちがうもん』
と、言いながらも
完全にマーキングでソファに座ると
すりすりと身体を擦り付けてくる
そして、
じわ、とシバの座っている辺りが温かくなる
「おい、おしっこ出てんぞ」
『でてない、』
「出てるよ、濡れてるし」
『や、まだ抱っこする』
と、虎太郎が帰って我慢ができなくなったのか
単純に甘えたいのか
おしっこもちょっとしか出てねえな、
俺の脚をの辺りは湿ったけど
それ以上溢れ出すことは無いから
我慢できなくて漏らした訳じゃなさそうだ
「まだ抱っこか?」
『だっこ』
濡れてて気持ち悪くねえのかなと思いながらも
シバの好きにさせる事にして
よしよしと背中を撫でる
「シバ、今日は偉かったな、自分でシャワーできて」
『……こたの前で、おねしょした』
今もおもらししてるしな、
「コタ泣いてて気付いて無いから平気だって」
『でも……こた、おねしょしてなかったんでしょ?おれだけじゃん』
「コタは今日しない日だっただけだ。シバもしない日あるだろ?」
『…うん、そうだけど、』
「昨日寝る前ちゃんとトイレ行ったけどちょっとしか出なかったからしょうがねえよ」
おしゃぶりするかな、と目線だけでおしゃぶりを探していると
もぞもぞと腰を動かすシバ
『んん、濡れてやだ、』
「おしっこ出ちゃったからだろ?風呂いこ」
『でてない、』
「出てるよ、冷たくなってきただろ?」
『してない、きょうへいがもらした』
「じゃあそうかも知んねえからシャワーで流しに行こうか」
『……うん、』
よいしょ、とシバを持ち上げ
そのまま風呂に向かい
シバの服から脱がすと
俺の濡れた太ももを触るシバ
「キレイにしようなー」
と、シャワーで流し始めると
下を向いていたシバが
チラッと俺の顔を見る
「どうした?」
『……本当は、おれがおしっこもらした、』
「そっか。ちゃんと言えて偉いな」
『こたより、おもらしするけど嫌いになってねえ?』
「なる訳ねえじゃん」
スウェットの上を濡れないように持たせて
ささっとシバを洗って
自分の身体もシャワーで流す
「シバ、パンツでいい?」
『…昼間用の、もこもこパンツにする』
「そうだな、寒いからもこもこパンツとヒートテックも履いてこうな」
『うん』
身体を拭いてからパンツを履かせて
リビングに連れていくと
また抱っこして欲しそうな顔で見てくる
なんかぼーっとしてんな、
おでこを触っても熱くなかったから恐らく熱とかは無い
おねしょとおもらしで元気が無いだけだろうか
「おいで」
と、手を広げるとすぐに乗ってきて
またぎゅっと抱きついてくる
『なぁ、』
「なに?」
『おれだけ?こたに、ヤキモチ妬いたの』
「なに、そんなんで元気ねえの?」
『だって……おれだけだったらなんか寂しいじゃん、』
「俺もコタにヤキモチ妬いたよ。コタにシバのちんぽも乳首も見せたくねえし」
『……そんなん、』
「コタ相手にヤキモチなんて恥ずかしくてシバに言いたくなかっただけだよ」
『…本当に?』
「あぁ、本当」
『そっか』
と、シバは嬉しそうにすりすりとまた身体を擦り付けてくる
本当にこいつ、
俺の事好きそうな態度してくるよな。
そのくせ
俺がこんなにシバの事かわいがってんのに
わかってねえのかな?
「よしよーし。シバ、落ち着いたらお着替えしようなー」
『適当にしないで』
「適当にしてねえよ。甘やかしてんの」
寒そうだから先にヒートテックだけ履かせようと
ソファの脇に置きっぱなしだった
畳んだ洗濯物の山から
シバのヒートテックを取る
「シバ、シャワーの後で冷えるから先にこれだけ履こう」
と、ヒートテックを見せると
シバはしぶしぶ向きを変え
ヒートテックを履く気になったらしい
「ほら、シバ。あんよ自分で通して」
と、言ってから少し違和感
シバも驚いた顔して俺の事を見る
「……?」
『な、』
「なに、」
『あんよって。おれ赤ちゃんじゃねえんだけど』
一気に
む、と眉間にシワが寄った
「あぁ……間違えたんだよ、虎太郎にそう言ってたから。ほら、怒んなって。怒ってねえであんよ通せよ」
違和感の正体はそれか
納得して
些か怒りすぎなような気もしたが
怒ってて面白いからもう1回言ってやると
シバはふんっ、と膨れる
『おれ赤ちゃんじゃねえし』
「わかったよ。赤ちゃんじゃねえなら自分であんよ通せるだろ」
『それぐらいできるし。ばかにすんな』
と、シバは俺の手からヒートテックを取って自分で履く
『やっぱりおれのことこたより赤ちゃんだと思ってる?おれ、おもらししたから』
「思ってねえよ。シバのがお兄さんだろ」
『…そうに決まってんじゃん、赤ちゃんじゃねえもん』
「ごめんって」
と、言いながらも
ヒートテックを履くとまた俺の膝の上に乗ってきたからこれはいいのか、と思わず見てしまったが
その視線に気付いたシバは
『抱っこは赤ちゃんじゃない、よ?』
と、バツが悪そうに聞いてくる
「そうだなー、抱っこは抱っこだもんな」
よしよし、とまた背中を撫でてやると
赤ちゃんは納得したらしく
おずおずと俺の背中に手を回してきた
おしゃぶりとか抱っことか
散々赤ちゃんみたいな事するのに
シバって赤ちゃん扱いされんの嫌なのか?
日によるとか気分の問題か?
ああ、これが噂に聞くイヤイヤ期ってやつか?
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