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第66話

まだ寝ぼけている間におむつを履かせて おねしょマットを敷いた助手席に座らせて 冷えないようにブランケットをかけてやると もう寝そうになっていたから よし、このまましばらく寝ててくれ、と思っていたのに 『んんん、きょうへい、どこいくの、くるま?…だっこしようよ』 と、車を発進させてすぐにぐずぐずと目を擦っていた 「箱根だよ。遠いから寝てな」 『んん、だっこは?しないの?』 「シバ、俺運転中だから後でな。お前まだ眠いんだろ」 渋滞を避けるためにかなり早めに家を出発していて辺りはまだ真っ暗だ 俺はその為に昨日の夜かなり早めに寝たが シバはいつまでも スウェットどれにしようかな、とか枕どうしようかな、とか靴どれにしようかなとか 準備に時間がかかっていて 風呂も長かったし しかもようやく準備したと思ったら ベッドに入って最近お気に入りのアプリゲームをしていて多分寝たのは本当に1.2時間ほど前だろう ちょうど寝入った所を起こされて とりあえず着替えさせられ車に乗せられてるからものすごく不機嫌というかぐずっていた ぐずってトイレも行かなかったし… 『んん、きょうへい、おれまだねむいのに』 「寝てていいから」 『だって、きょうへいいないとねれないじゃん、』 「いるじゃん、隣。しかもお前車でいつも上手に寝れんじゃん」 『だってぇえ、』 と、ぐずぐずと泣きそうになっていたから 信号で止まったタイミングに靴を脱がせてやると シートの上に脚を上げて丸くなる 「シバ。箱根行くんだけど嫌になっちゃったか?俺楽しみにしてたんだけどなー」 『……はこね、おれも、行きたいもん』 「そっか、じゃあちょっと寝てような」 『んんん、…でも、きょうへい、おなか空いた』 「なに?腹減ってぐずってたのか」 『ぐずってないし、』 「後ろの端っこのバッグに食いもんとか飲み物あるから好きなの食いな」 『もちもち、食う』 と、ごそごそとパンを取り出して 眠そうにしながらパンにかぶりつく 食いながら寝ないかな、こいつ 『きょうへいも、パン、たべる?』 「俺はちょい食ってきたから平気」 『ふーん』 本当に腹が減っていたのか さっさと食い終わってぐしゃぐしゃと袋を丸めて捨てて ペットボトルに手を伸ばす 「シバ、飲み物はゆっくりな。いっぱいのむとすぐおしっこしたくなっちゃうから」 『ゆっくり、』 うん、と頷いて ぐびぐびとペットボトルの1/3くらい一気に飲む わかってねえし… そして満足、とばかりに蓋を締めてボトルホルダーに置き ぼーっと窓の外を眺める そして 『きょうへい、おしっこ、』 「お前なあ…まだ家でて10分経ってないけど」 まぁ家出る時はまだおねむの赤ちゃんだったからしょうがないか、とため息を吐く 『だってしたくなっちゃったんだもん』 「コンビニ探すから我慢しろよ?すげえおしっこしたい?」 『ちょっとだけ』 こんな早い段階でシバのおむつを汚したくないと 「コンビニ探してるからできるだけ我慢してみな。それとももうおしっこでちゃうか?」 『我慢する、できる』 「よし、いい子だ」 と、目線でコンビニを探し 案外すぐ見つかったから 安心してそこに入ってシバをトイレに行かせる 俺は温かい飲み物を買ってタバコを吸って待っていると 『きょうへい』 「間に合った?」 と、まだ不機嫌そうなシバが戻ってきた 『なんか、おむつすげえもこもこしてんだけど』 「おしっこいっぱいでてもいいようにパット入れてんだよ。上手に履き直せたか?」 『なんかもぞもぞする』 と、居心地悪そうに言うから 「車で直そうな」 と、頭を撫でると すぐに俺の横にピッタリとくっつくから カイロと買ったばかりの温かいココアを渡す 「ココア熱いからゆっくり飲めよ。あとこの後1時間はトイレ寄らないから寝てな」 『じゃあまだきょうへいにだっこできねえじゃん』 「まぁ向こう着くまで我慢だな」 『今年最後なのに?』 「…向こうでいっぱいよしよしするから」 と、シバを車に連れていき ドアを閉めてから シバのウエストのゴムを引っ張り手を突っ込む 『ちんちんさわんの?』 「ちげえよ。パットもぞもぞなってんだろ?直してんの」 と、少しくしゃっとなったパットを直してやって手を抜く 「もぞもぞ直った?」 『うん。平気』 「よし、行くか」 と、エンジンをかけた時だ 『あ、おれズボンお着替えしてないじゃん』 「車でずっと座ってんだからスウェットのが楽だろ。向こうで着替えさせようと思ってそのままにしたけど」 『おれのズボンは?』 「後ろに入れてある」 『そっか』 じゃあいいや、と安心したのか また自分で靴を脱いでシートに足を上げた 『きょうへい』 「シバ、おねむだったんじゃねえの?」 『んん、なんか起きた。つかおねむってやめろよ。赤ちゃんみたいじゃん』 「さっきまで赤ちゃんみたいに泣いてたろ」 『泣いてないし』 「そうだっけ?」 『泣いてないしちゃんとおしっこ出る前にトイレ行けたじゃん』 「そうだな。シバえらかったなー」 できれば家出る前に行って欲しかったけど 『きょうへい、早くはこね行きたい』 「だから寝てろって」 『暇だからちんちん触ってもいい?』 「ダメだって。大人は外では触んないの」 『…だって、』 「あ、シバ。おしゃぶりダッシュボードに入れてあるからさびしくなったら使いな」 『赤ちゃんじゃないからつかわないし』 と、言いながらも おむつの中に手を突っ込んだ 「シバ、ちんちん触んない」 『……だって、』 「スマホゲームしてろって」 『ハート送って』 「今運転中だから。勝手に俺の使って送れ」 『暗証番号は?』 と、俺のスマホを手に取って見せてくる 「………」 『ないしょ?』 「0321」 『へえ、おれといっしょじゃん』 と、なんにも考えず に数字を押してアプリゲームを開いてハートを送ったシバ そりゃお前の誕生日だからな… 無駄に恥かいたじゃねえかよ… 気付いてねえのか? まだ家から10分ほどのコンビニだ この先の旅路は長いな……

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