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第96話
きゅるるる、きゅる、
と、ベッドの隣にいるシバの腹から音が聞こえる
シバは1度目が覚めてしまった上に腹が減ったからか眠れないようでもぞもぞとずっと動いている
ぐうぅ、
『はぁ、』
と、ため息を吐いてゴロゴロと転がる
「腹減って眠れないんだろ」
『……うん、きょうへい、おれ、腹へっちゃった』
「お前晩飯食うの途中でやめたからな」
『だってあの時はお腹すいてなかったんだもん』
「…なんか食うか?」
うどんでも茹でるか、それかココアとか、と仕方なく俺も起き上がる
『甘い物が食いたい、』
「何、甘いものって」
『チョコケーキとか、もちロールとか』
ええ、そんなのねえよ
「……えええ、じゃああれは、フレンチトーストとか」
『うん、フレンチトースト』
メープルないからはちみついっぱいかけてやるか
と、2人して起き上がってキッチンに向かう
とりあえず冷蔵庫から卵と牛乳を出した
『きょうへい、お腹空いた』
「シバ、パン持っといで」
『パン…きょうへいパン無いよ』
「ええ、なかったか?」
じゃあ卵焼きとかにするか、と思ったが
『んん、フレンチトースト、』
と、もう気分はフレンチトーストだったらしく
少し眉間にシワを寄せたシバ
さっきも寝る時のパンツでちょっとケンカしたからなー、このままだと明日の朝に響く、
なんかいいもん無いかな缶詰とか
「あ、シバ。いいもんあったよ」
『いいもん?』
「ホットケーキミックス」
前虎太郎が来た時に兄貴が持ってきてくれて余ったやつ。食っていいって言われてたけど完全に忘れてた
賞味期限は、と確認するとまだあと2年以上あったから安心だな
『なに?それ』
「ホットケーキ食わねえ?」
『ホットケーキ、くう』
と、納得してくれたようで
ちょうど出した卵と牛乳も使える
『きょうへいホットケーキ作れんの?』
「まぁ…店のみたいに上手にできねえかもしれないけど」
と、箱の裏側の作り方を見ながらその通りに作ってみると案外簡単な事がわかる
「ほら、焼くから皿持っといで」
『おさら』
と、棚を開けて言われた通りに皿を出した
『ホットケーキのにおいする、おいしい』
「おいしいってまだ食ってねえだろ」
お、なかなか上手く焼けた、と
皿にのせると
シバが我慢できないという顔をしながら見ている
「ほら、先食ってな。ほかの焼けたら持ってくから」
『うん』
「あ、シバ。はちみつとバターな」
と、バターをのせてはちみつもかけてやると
嬉しそうに食卓に持っていく
あと2枚分くらいあるけど
シバは3枚も食うだろうかと思いながら
とりあえず皿をだして全部焼いてしまうことにする
食わなかったら明日の朝とか俺が食う事にしよう
と、3枚焼けて
シバの所に持っていく事にしたが
「シバ、できた…ってお前」
『きょうへい、うまい』
と、シバはおいしそうに食っていた
「手で食うなよ、赤ん坊かよお前本当に」
はちみつついてるから手ベタベタになってるし
一応フォークは持っているが
小さいフォークでは切れなかったようで
右手でフォーク左手はベタベタにしながら食っていた
手についたはちみつも指をしゃぶり
ちゅぱ、と舐めとっていて
お行儀なんてあったもんじゃない
『きょうへいホットケーキ上手だな』
「手。ちゃんとフォークつかえ。つかナイフもつかえ。手でちぎるなって」
嫌とばかりにシバはそのまま手で食うから
仕方なく切ってやると
ぷす、とフォークで刺して食べ始めた
もふもふ、と一気に口の中に入れるから少し飲み込みにくそうにする
「ココア飲むか?」
『コーヒー、のみたい』
「コーヒーか、」
どうすっかな、
俺もちょいコーヒー飲みたくなってきた
「じゃあ入れてやるから寝る前ちゃんとトイレな」
『うん、ちゃんと行くから』
よし、とコーヒーを入れてやると
嬉しそうにふーふーしてのむ
「ほら、シバ。おてて汚れてんだろ」
と、汚れた手をスウェットで拭こうとするから掴んで止めてウェットティッシュで拭いてやる
「3つとも食える?」
『くう、すき』
腹減ってたのもあるだろうけど
嬉しそうに食ってんな、こいつ
と、1口サイズに切ったのが逆にいけなかったのか
「…シバ、手で食うなって。お前そんなんでマナーとかどうすんの」
『外ではちゃんとフォークつかうよ』
「ナイフつかえんの、ちゃんと」
『でも別に必要ないじゃん』
「恥かくのお前だし。今度練習しような」
『や、きょうへいがしてくれるからいいじゃん』
「良くねえの」
ほら、とフォークを渡すと
渋々それにホットケーキをぶっ刺して食べる
刺し方も子供だな、これは
『きょうへいってコーヒーばっか飲むな、本当に』
「いいだろ、別に」
『苦いのしか飲んでねえよな』
「つかシバも最近コーヒー苦いのちゃんと飲めるようになってきたな」
『大人だから飲めるって、元から』
「そうだっけ」
『コーヒーすきなの?』
「好きだな、普通に」
『へええ、』
シバはココアの方が好きだろうな
最後の一口のホットケーキは俺にくれて
満足、とばかりにコーヒーを飲み干したシバ
『おいしかった、満足』
「お腹いっぱいになりすぎてねえ?満腹で寝ると腹痛くなっちゃうだろ」
『うん、大丈夫』
「じゃあ歯磨きしような」
と、2人で並んで歯磨きをしてから
「シバ、寝る前におしっこしような」
『おしっこ出ないんだけど』
「出るよ、コーヒー飲んだもん。それに約束しただろ」
と、渋るシバをトイレに引っ張っていく
『おしっこない、でない。やだなぁ、トイレ行きたくねえのに』
「約束だろ」
ほら、とおねしょパンツを脱がせてやって
トイレにちんちんの先っぽを向けるが
ううん、と首を振る
「ほら、おしっこ出るぞ」
『んん、ない。おしっこないから。なぁ、トイレ来たんだからいいじゃん、ねええ、もうなかったから』
無理か、出なかったか、と諦めてパンツを上げてやると納得したように頷いた
寝室に戻ると
シバはすぐにベッドに横になろうとするが
もじっ、と脚を動かした
「どうした?」
『…なんか、あひる、見たらおしっこでそうになった』
「そっか、じゃあシバ。ベッド寝るまえにあひる座っとこうか」
『…うん、』
と、シバは頷いたから
スウェットとパンツをまとめて下ろしてやると
アヒルに跨る
そしてらすぐにちょろろ、と音をさせる
さっきあんだけ出ないって言ったのにアヒル使ったらちょっと出たか
「もう出ない?」
と、シバがちんちんを振っているのを確認して聞いてみると
うん、と頷いたからパンツとスウェットを履かせてやる
ちょっとしか出なかったからまた後で出ちゃいそうだな、これは
シバは起きれるだろうか
『きょうへい』
「どうした、シバ」
『ホットケーキありがとう』
「あぁ、寝れそうか?」
『うん』
「そっか、おやすみ」
『おやすみ』
そうすりすりと甘えてくるシバはやっぱりかわいくて
まぁ起きれなくてもいいか
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