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第104話

「なぁ、シバなにしてんの?」 と、急に立ち上がって キッチンに向かったシバの後をついて行って すりすりと少しシバの尻を撫でていると 『きょうへいじゃま、あっちいって』 と、何ともつれない態度だ 「なにすんの?」 『いい事。きょうへいにやさしくすんの』 「何してくれんの?」 と、俺のために何かしている割にはさっきおむつ替えの時にいじめてしまったからちょっとぷんぷんしてるシバ 『邪魔だからおしり触んな』 と、何やら棚の下の方から紙袋を取り出したシバ 「なに?それ」 『きょうへいの好きなもん』 と、ガサガサと袋から色々取り出して 「なんだ?コーヒーか?」 『…うん、』 「どうしたの?それ」 『……べつに。コーヒー、いれてみたかったから買っただけだし』 というシバの言葉に色々思い出す そういえば数日前シバ1人で買い物行ったな 帰ってきたら家がコーヒーの匂いしてたり シバのおねしょが増えたのもその頃からだったな、そういえば シバはお湯を沸かしてまだたどたどしい手つきでコーヒーを測ったりし始める 「豆じゃん、すげえ」 『ごりごりすんだよ』 と、俺に教えてくれながら ミルに入れゴリゴリと挽きはじめた おお、すっげ すでにコーヒーのいい匂いするし 「なんでシバそんなんできんの?」 『…べつにぃー、』 俺の為に練習してくれたのだろうか、 シバはコーヒーあんまり飲まないし ココアすら自分で入れないのに 『ゴリゴリしたらあとはふつうだよ、』 と、フィルターをセットしてその中に挽きたての豆を入れ ゆっくりとお湯を注ぐと コーヒーのいい匂いが更に広がる 『お湯ね、ゆっくりいれんの』 と、説明しながらお湯を入れてくれると 豆が少し音をさせ ふわ、と膨らむ 『挽きたてだから膨らむんだって』 「へえ、シバ俺より詳しくなってんのな」 『教えてもらったし』 「誰に?」 『コーヒーのお店の人。最初の1滴が1番おいしいらしいからきょうへいが飲んでね』 と、俺のマグカップにコーヒーを入れ終わったところではい、と渡してくれる 「へえ、すげえいい匂いすんな」 『のんで、』 「あぁ、いただきます」 と、コーヒーを受け取り1口飲む 『………どう?』 「やっぱり挽きたてちげえわ。すげえうまい」 『本当?きょうへいがどんなコーヒー好きかわかんなかったから苦いやつにしたんだよ』 「うん、俺これ好きだな、うまい」 本気でちょっとこれはうまいぞ お世辞抜きに シバがいれてくれたエフェクトは多少かかっているとしても普通にコーヒーとしてうまい 『よかったー、じゃあこれからはおれがきょうへいにコーヒーいれるから飲みたくなったらいえよ?』 「そうするわ。つかなんでそんな事してくれんの?」 『…べつに、きょうへいにコーヒーいれたかっただけ』 「お前本当にかわいいよなぁ。どうした?」 『どうしたって何が…つか、こんなん、普通じゃん、』 「なんで、」 『きょうへいがいっぱいおれにいっつも優しくしてくれて嬉しいからおれもしただけだし』 「へえぇ、」 『……ちょっと、なんだよ、その反応』 「いや、かわいいなと思って」 『きょうへい意味わかんねえ。かわいいしか言わねえから』 「いや、なんか嬉しすぎて反応に困ってんだよ」 『それはおれがきょうへいにちゃんと優しくできたって事であってる?』 「あぁ、そうだな」 よしよし、と頭を撫でると 嬉しそうに俺の隣にやってくるシバ 「シバ俺の為に練習してくれたのか?」 『…上手にできなかったらかっこ悪いから練習したけど』 「そっかー、だからこんな美味いんだな」 『おいしい?苦くない?おれも自分で飲んでみたけどやっぱりちょっと苦かったんだよね』 「うまいよ、俺苦いの好きだし。それに苦いだけじゃなくて深み?なんかよくわかんねえけどうまい」 『そっかー、よかった』 「毎日でも飲みてえくらいうまいよ」 『本当?じゃあおれが毎日きょうへいにいれてあげるね。きょうへいは毎日おれに色々してくれるし』 「いいの?大変じゃねえ?」 『大変じゃない』 「ありがとな、これから毎日シバのコーヒー飲めるのかー」 『おれ、きょうへいのコーヒー係してあげる』 「へええ、シバ優しいなぁ」 コーヒーカップを於いたタイミングでシバはすぐに俺の上に乗ってきて すりすりと、首元に抱きついてくる 『おれ、きょうへいのこと好きだからきょうへいが喜んでくれると嬉しいんだ』 と、なんともかわいらしい事を言ってきて 愛おしすぎて シバの背中を撫で抱きしめる 「…お前、本当にかわいいな」 よしよし、とシバの背中を撫でるとシバは 更にぎゅっと俺に体をくっつける そして、 『おまえの、ペットだからな、』 と、言いながらも 何故か耳元で少しだけ すん と、鼻を啜った なんだよ、なに泣いてんだ?

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