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第106話
全部おしっこを出し終わると
急に冷静になってしまって
やってしまった、と身体中から血の気が引いた
ちょっと動くだけで
椅子の上に溜まっていたおしっこが床に落ちて
ぴちゃぴちゃと音がする
「ちょっと待ってな」
と、きょうへいはすぐに出ていってしまい
どうしよう、
会議だったのに中断させてしまった
きょうへいの仕事の邪魔した、
会議中に、おしっこ漏らしてしまったのだ
どうしよう、どうしよう、と
頭の中でぐるぐるとまわって
息がしにくくなる
「シバー、お待たせ」
と、きょうへいは色々持ってきてくれて
タオルでまずぐしょ濡れになった手を拭かれる
『きょうへい、ごめん、ごめんなさい、かいぎちゅうに、』
「会議伸びて大変だったもんなー、言い出しにくかったろ。ごめんな」
と、腰にタオルを巻いてからズボンと下着も纏めて下ろされると
ぐしょ濡れになって黄色く染ってしまったパンツが見えてしまう
『おれ、じゃまして、っごめん、』
「いいって。あのまま話し合っててといい結果にならなかったろうし。逆に一旦中断できて良かったよ」
『でも、』
ほら、とそのまま脚も拭かれて
抱っこもしてくれる
「とりあえず俺の部屋いこ」
『ごめん、きょうへい、ごめんなさい、』
「もういいって、出ちまったもんはしょうがねえし」
きょうへいはいつもみたいに
社長室につくと
脚を拭いてくれるようのタオルとか用意して拭き始めてくれるけど
邪魔しちゃった、仕事中に…
みんなにも迷惑かけた
どうしよう、おれ、
きょうへいに嫌われる、とつらくなって
胸の真ん中ら辺がぎゅって苦しくなる
自分でも早く脚拭いて、早く仕事に戻らなきゃと思うのに
なんにもできなくて
息がしにくくてフラフラする
「着替えたらヤナギのところ行って資料もらいにいこうな。それでさっきどうにもなんなかったやつもう1回見直してみよ」
と、きょうへいはおれの足を拭きながらいうけど
『っ、はぁっ、っ、』
息できなくて
はぁはぁ、と息が乱れてしまい
なんにも出来なくて
立っているのもできなくなって
目の前のきょうへいの肩に手を着いて倒れないようにすると
きょうへいが身体を支えてくれて
ソファに座らせてくれる
「どうした、具合悪いか?」
『きょ、っ、へぃ、っ、ぃ、き、っ』
息できない、と言おうとしても
はぁはぁ、と息が切れるから言えなくて
「シバ?どうした、具合悪い?」
と、聞かれたけどなんにも答えられなくて
ただ息だけがはぁはぁきれて
じわ、と視界が歪む
「シバ、ゆっくり息しな、落ち着け」
と、頭を抑えられ
ぐっ、ときょうへいの胸に鼻と口を押し付けられ息ができなくて苦しくて涙がボロボロ零れてしまう
「ほら、シバ。ゆっくり息吐くんだよ、ゆっくりな」
よしよし、と頭を抑えながらも背中も撫でてくれて
「大丈夫、シバ、大丈夫だぞ」
と、いつもよりゆっくり言ってくれるきょうへいの声と背中を撫でてくれるのに合わせて
できるだけゆっくり息をすると
だんだん息ができるようになってきて
はぁはぁしてたのも治って
ようやく息が吸えて
苦しいのが無くなってくる
『っはぁ、きょうへい、』
「よし、そのままゆっくりな」
と、頭を抑えていた手を緩められたから顔を上げると
きょうへいがすぐ近くでおれのことを見た
「大丈夫か?落ち着いた?」
と、聞かれて
うん、と頷くと
ソファに寄りかからせてくれる
『きょうへい、』
「過呼吸だよ。昔ミサがたまになってた。シバ過呼吸初めてだな」
『きょうへい、』
なに、かこきゅうって
「びっくりしたよな、拭いちゃうから横になりな。少し休もうな」
と、何故かまたびしょ濡れになってしまっていた下半身をきょうへいはキレイに拭いてくれて
横になるとおむつを履かせてくれる
おもらしで、仕事邪魔しちゃったから
おれもうずっとおむつなのかも
「ちょっと寝るか?」
と、聞かれたけど
ただでさえ仕事邪魔したのに
寝るなんてしたくない
やだ、と首を振ると
「じゃあちょっと温かいのだけ飲もうか」
きょうへいはすぐにお茶を選びに行ってしまった
『きょうへい、』
「シバ、ルイボスとジャスミンどっち?」
『…るいぼす、』
「ルイボスなー」
と、すぐお茶を入れて俺の前に置くと
おれの横に座って頭を撫でてくれた
『きょうへい、脚、濡れてる』
「あぁ、ちょっとだから拭いたら大丈夫だよ」
『きょうへい、おれ』
「みんなの前で出ちゃいそうになって驚いたか?大丈夫だから、気にすんなよ」
『大丈夫じゃない、』
「誰も気付いてなかったから」
でも、おれがきょうへいの仕事の邪魔したことには変わりなくて
でもきょうへいに今それ言っても大丈夫だよって言ってくれんのも分かってる
ごめんなさいしてもダメな気がして
また胸が苦しくなる
『きょうへい、』
「シバさっきから俺の名前しか言わねえな。どうした、抱っこするか?」
と、きょうへいはちょっと笑って言って
おれの頭を撫でたけど
首を振ったら
ぐい、と腕を引かれ
飲み物こぼしそうになりながらどうにか机に置くと
きょうへいがおれのこと抱っこして背中を撫でられる
『おれ、抱っこしないって言ったじゃん』
「俺がシバの事抱っこしてえんだよ」
と、背中を撫でられたら
もやもや悲しいのがようやく落ち着いてきて
ぱふ、ときょうへいに寄りかかる
きょうへいいいにおい。おれの好きなにおい
落ち着く、
『きょうへい、ありがとう』
「あぁ。まぁシバが困ってたらどうにかすんのは俺の役目だからな」
よしよーしとふざけて言いながらもきょうへいは俺の顔を両方の手のひらで挟んで
わしゃわしゃ撫でられる
そんな撫で方、
おれ、
『いぬじゃな、』
犬じゃない、と言おうとしたけど
きょうへいがおれが困ってたら助けてくれんのもおれがきょうへいの犬だからで
『…わん、』
「お、犬だ」
『わん、』
だから大人しくきょうへいの犬でいることにしてそのままわしゃわしゃきょうへいに撫でられた
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