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第111話
『おれコップ買ってくるね』
「おお、1人で行けるか?」
『うん、きょうへい終わったら来て』
「分かった」
と、きょうへいがプロジェクターの会計と梱包をしている間に
俺は他の階の紙コップとかストローとかを買いに行く
あ、おしっこしておこう、と
トイレも寄って
紙コップのコーナーを探して
店内の案内板を見て向かう
さて、どれにしようかな
Mサイズくらいがちょうどいいかな
きょうへいいっぱい飲むかな
俺の冷たいやつはこっちのカップにしよーと
業務用の50こぐらいのやつを手に取る
「あ、お前。居た」
と、何やら走ってきたきょうへい
『どうしたの?あ、きょうへいは、Mサイズのカップでいい?』
「…いいけど、」
『どうしたの?なんか慌てて』
「慌ててってお前がいなかったんだろ」
『いなくないよ』
「いなかったって。俺終わったらすぐ来たし」
『あぁ、トイレ寄っただけだよ。心配しすぎ』
「…心配するだろ」
『まあいいや、とりあえず買ってくるね』
「そんな買うのか?」
『これしかないし、いいじゃん。おれこういう蓋ついてるやつの方が好き』
「まぁいいか、貸して、買ってくる」
『…いいって。自分で買う』
「今日は埋め合わせなんだから俺が買うんだよ」
と、本当はほとんどいっつも全部買ってくれるくせに埋め合わせって言ってカップを買ってくれて
そのまま駅のアトレの成城石井に2人で向かった
『ポップコーン、』
「ホットドッグもな」
と、すぐにカゴにポップコーンを入れると
きょうへいはトリュフのナッツとポテチも入れてそんなん映画館じゃなくておつまみだけど
まぁいいか、とホットドッグを探す
『きょうへい、ホットドッグ』
きょうへいは少しお惣菜パンコーナーを見たけど
「作るか」
『きょうへいホットドッグ作れるの?』
「多分な?」
と、ホットドッグの形のパンと長いウィンナーを買った
「粒マスタードは、家にあるか」
『うん』
「シバ、好きな飲み物持っといで。氷もな」
『うん。きょうへいは?』
「俺のはお前がコーヒー入れてくれるだろ?」
『コーヒーでいいならいれるけど』
「コーヒーがいいんだよ」
お会計を済ませて
車に戻って家に向かう
早く映画見たいなあ
楽しみだなあ、映画館ごっこ
家に帰って手を洗うと
きょうへいはホットドッグとか飲みもの準備をして
おれはプロジェクターの配線をして
カーテンを閉めて部屋を暗くして
終わってからきょうへいのコーヒーを入れに行く
『ホットドッグのいい匂いする、なんかもうお腹すいちゃった』
「なんだかんだもう昼過ぎてるしな」
『お腹すげえなってる』
「シバ、これお前のジュース。向こう持って行って」
と、渡され
きょうへいのコーヒーと一緒にリビングの映画館空間に並べたソファーの前のローテーブルにそれを置くと
すぐにきょうへいは
ポップコーンとホットドッグを持ってきてくれて
電気を消していよいよ映画を流し始めた
『おお、プロジェクターすげえ』
「画質いいな、これ」
『ね、なんで?高かった?』
「まぁそこそこ」
と、いよいよ映画が流れ始めた
「ベイカー街、だっけ、見るやつ」
『うん。きょうへい見たことないんでしょ?』
「あぁ、なんも見た事ない」
『えええ、なんで?おれ全部見てるよ、今までのやつ』
「なんでって言ってもな?世代?」
あぁ、これがジェネレーションギャップってやつか、
おれときょうへいって10歳くらい離れてたんだ
忘れてたけど
10歳も上のきょうへいからしたら俺なんてまだまだ子供に見えんのかな、
『ホットドッグ、くお、』
「あぁ、暗いんだからこぼすなよ」
『こぼさないよ、子供じゃないんだから』
と、ホットドッグを1口かじる
…うま、
なんだよ、おれこれ好きだし
お店で売ってるのよりおいしいじゃん、
多分って言ってたクセにきょうへいはやっぱりなんでもできるんだな
映画は見どころの
毎回お馴染み挨拶の
俺は高校生探偵の~
という紹介シーンになっていて
ちら、ときょうへいの顔を見ると
きょうへいはテレビを見ていた
映画館なら話しかけないけど
家で2人で見てるから話しかけてもいいかな
きょうへいと話したいな、
せっかく休みだから
映画館ごっこ楽しいけどきょうへいと話したいな
じ、ときょうへいの顔を見ていると
その視線に気付いたようで
きょうへいがこちらを向いた
「ん?どうした?」
『なぁ、』
「うん、」
『ホットドッグおいしい、』
「おお。よかったな」
と、きょうへいは俺の頭を少し撫でて
腰に手を回して引き寄せてくれた
外じゃ、こんな近くにいれないからちょっと嬉しかった
あ、と、きょうへいの口元にポップコーンを持ってくと食べてくれて
それもなんとなく嬉しかった
映画館ごっこ楽しいな
『きょうへいぃ、』
「どうした?見てねえの?」
『見てるよ』
と、食べ終わったホットドッグの包み紙を置いてきょうへいに膝枕をした
するとすぐにきょうへいは俺の頭を撫でてくれて
あぁ、これじゃあデートじゃなくて飼い犬だ、とすぐに起き上がった
「どうした?」
『映画館だからちゃんと起きただけ』
「そっか、」
あ、ときょうへいは今度はおれにポップコーンを食べさせてくれる
「シバこれ昨日見なかったんだろ?我慢させたか?」
『ちがうよ、おれこれ見たことあるんだけど』
「そうなのか?じゃあ違うのにする?」
『ちっがうって。きょうへいなんでわからないかな』
「…何がだよ?」
『おれはきょうへいと一緒だから見たいのにさー、それなのにきょうへい先見てていいとか言うからおれすげえむかついたんじゃん』
「そっか。悪い。そういう事な」
『そういう事だよ』
「ごめんって。もうしない」
『……きょうへい』
「なに?」
『…昨日、ヤナギさんと一緒の部屋にしたの?』
「いや、別々だけど。シングル2部屋」
『……ふーん、遅くまで飲んだ?』
「まぁ、ちょっと遅かったかな」
『ふーん、』
「なぁ、お前、ヤナギ絡むと拗ねるよな?」
『……べつに。拗ねてねえけど』
「何回も言ってるけどヤナギは仕事上のパートナーだからな?変な勘違いすんなよ?」
『……なんだよ。してないし』
なんだよ、勘違いって
勘違いじゃねえじゃん
ヤナギさんはおれと違ってきょうへいに信頼されてて
今までも、これからもずっと一緒にいるって事に変わりないじゃん
おれはペットとしてしか一緒にいれないのに
ペットだからきょうへいに信頼されたりできないのに
『ねえ、映画見るから。きょうへいも映画見てて』
「あぁ、見るけど」
『おもしろいんだよ、この映画』
「…あぁ、そうだな。お前のオススメだし」
くすん、ときょうへいにバレないように少しだけ鼻を啜って
ソファーのきょうへいがいる方と反対側に寄りかかって
なんでもないような顔をして映画に視線を向けた
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