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第119話

やっぱりなんか元気ねえんだよなあ どうにか昼間のおむつは外させたが 自分からトイレは行かなくて 家にいる時は自分から行かせようと わざと声をかけないでいると自分で限界に気付かず漏らしてしまっていた そのせいで余計落ち込んでいるのか 寝てる時も泣きそうになりながらすりすりと抱きついてくる 本人は気付いて無いようで 朝は普通にしていた しかし 『や。おきない』 と、何故か今日は不機嫌だった 不機嫌と言うにはちょっと様子がおかしい 「起きねえでどうすんの?会社は?」 『…いかないもん、起きれないから』 朝グズグズする事はちょいちょいあるが 会社いかないと言い出したのは初めてだった おむつからおしっこが漏れて そこらじゅうびしゃびしゃになったからだろうか 「体調悪いか?」 と、おでこを触って体温を確かめるが熱くは無い 『…うん、きもちわるい』 「気持ち悪いの?腹痛い?」 『わかんない、』 「起きたくねえなら休むか」 『……やだ』 と、起きたくないと言うから休む提案をしてみても首を振る 休みたいんじゃねえの? 「シバ、どうした?怖い夢でも見たか?」 『………こどもじゃ、ないし、』 と、下半身びしょ濡れのままそう言うから説得力なんてまるでない 『……気持ち悪い、』 と、起き上がっていたのに また倒れ込むようにベッドに横になるシバ 「本当に体調悪そうだな。とりあえず下替えちゃうか。身体冷えるし」 一体どうしたのだろう ベッドの濡れていないところにタオルを敷いてからシバを寝かせて びしょ濡れのズボンをさっさと脱がして タオルを温めて戻ると 『くしっ』 勢いよくくしゃみをした 「おお、鼻水でてんじゃん」 ほら、と先に鼻をかませてから おむつを開く 『きょうへい、』 「どうした?」 『きょうへいぃ、』 「どうしたんだよ、今着替えるからなー」 と、シバは俺のことを呼んでいるだけだと気付いてあやしながらおむつを開くけどシバはぐすぐすと鼻を啜っていて ほぼ泣いていた おむつ濡れてるけどそんな溢れるほどはしてねえな? 「シーバ、おむつそんなたっぷたぷになってなかった」 『きょうへい、』 「うん。だから俺のおむつの付け方が悪かったな?ごめんな、びしょ濡れになってびっくりしちゃったな」 『おねしょ、したから』 「ちゃんとおむつ履いてたのになー、びっくりして悲しくなったか?キレイにしような」 温かいタオルで拭いていくが シバはまだぐすぐすと鼻を啜っている 『かいしゃ、やだ、いきたくない』 「なんで行きたくねえの?行きたくないなら今日は休んでもいいけど…なんで泣いてんのか教えて、シバ」 しかしシバは 首を振っていて何にも教えてくれない このままじゃ埒が明かない 「シーバ……祈織。抱っこしようか。ほら。抱っこ」 拭き終わったタイミングで シバの腕を引いて起こして まだぐすぐす泣いているシバを抱っこする 「祈織。ほら、落ち着け」 よしよし、と背中を撫でても なんにも言わないシバ 「まだ気持ち悪いか?」 『…うん、きもちわるい、』 「悪いもの食ったかなー?それかやっぱり冷えたか」 撫で撫で、と腰の辺りを撫でていると ようやくシバの方からもきゅっと抱きついてきた 『きょうへい、』 「なんだ、シバ」 『…シバ、じゃなくて、』 「祈織」 と、呼んでやると うん、とようやくうなずいた 「祈織、どうした?何が悲しかった?」 『…おねしょ、すんのも、いやだし…おもらしすんのもやだ』 やっぱりびしょ濡れになったのが原因で落ち込んでいたのか 「今日は俺がおむつ付けんの失敗しちゃったからだろ?ごめんなー俺のせいで悲しくなっちゃって」 『ちがう…おれがおねしょするから』 「じゃあ今度から俺も祈織も気を付けような。俺はおむつ付けんの失敗しないように気を付けるし、祈織はおねしょしないようにおしっこいっぱいしてから寝ような」 『…うん、』 「よし、じゃあ今日会社休むか。2人で」 『…なんで?』 「祈織の具合が悪いから」 『…熱、ねえもん』 「無くてもいいだろ?たまには」 『でも、かいしゃ、』 「俺も会社休みたくなってきたし」 まずはおむつ履かせるか、と シバの身体を再びベッドに寝かせて 新しいおむつを履かせてやる 『おむつ、いいの?』 「寝る時はまだおむつって約束だろ」 ぐすん、と鼻を啜りなが頷き パカりと脚を開いておむつを履くのも協力してくれた 「よし、まずは2度寝するからベッドも綺麗にしようなー」 『いいの?かいしゃ、』 「いいんだよ、たまには。疲れちゃう時だってあるだろ、人間なんてそんなもんだよ」 腕を引いて立たせるが やっぱり体調が悪いのかすぐにその場にぺたりと座るから 急いでベッドのシーツを剥がして おねしょマットを敷いて寝れる状態にし おいで、とベッドに座って腕を引いて 寝るように促すと おずおずと横になるシバ 『きょうへい、』 「どうしたー?」 『ぎゅってしていい?』 「ほら、ぎゅってして寝ような」 『…うん、』 シバはすりすりと寄ってきて 背中を撫でてやると 少し肩から力を抜いた 『きょうへい、本当は、さっき嫌な夢……見た』 「そうか?どんな夢?」 『…ないしょ、』 「教えてくれねえの?」 『……言いたくない、本当になっちゃいそうでこわい』 「祈織、夢は人に言った方が正夢になんねえんだよ?」 『……きょうへいが、いない所で生きてる夢」 「なんだよ、ここにいるだろ」 この間俺があんな事言ったからかな 『…おれ、きょうへいがいなくなった後も10年も生きなきゃいけないんだよ?』 「…タバコ、やめるから」 『うん、』 今更禁煙なんてできるか不安だが それでシバが落ち着くなら禁煙くらいできる気もする まぁあとはもうちょい様子みて ダメそうならまた明日から昼間もおむつに戻すかな

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