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第125話

「おお、おねしょ今日もしなかったな」 『うん、しなかった』 と、きょうへいが朝おれのおむつを開いて嬉しそうに言ってくれる 「最近寝る前ちゃんとトイレ行けるもんなー、えらいなぁ、祈織」 と、頭を撫でてくれる きょうへいは、やっぱりおれがおねしょしないの嬉しいんだ 『おねしょもう5日してないから今日から夜は寝るとき用のパンツでいい?』 「そうだな。そうしようか」 と、濡れていないおむつを丸めて片付けてくれたきょうへい やっぱり嬉しいんだな、こういうの おねしょしなかったのも きょうへいが褒めてくれるのも きょうへい、いっつもえらいって言ってくれるし あの飲んだ日にしちゃった以来おもらしもしてないから おしっこの感覚もちゃんとわかるから起きてる時もトイレに行けるし やっぱりおねしょもおもらしもしない方がおれもきょうへいも嬉しいからこれからも気を付けよ、と考えながら会社に行く準備をする 「祈織ー、朝飯外で食ってこ」 『うん』 「ほら、ちゃんとおしっこしてから行くぞー」 『ちゃんとしてきたから大丈夫だって』 「そっか、お前最近本当にえらいな。俺が言わなくてもちゃんとできてる」 『うん、できるよ』 えらいえらい、ときょうへいが頭を撫でてくれるから子供扱いされてる気もするけど ちゃんとなんでも自分でできるってきょうへいにわかって欲しくて 自分でネクタイを巻くと きょうへいは笑いながらおれのネクタイを直す 「ネクタイはまだ俺がやってやるから」 『できるじゃん』 「長さ変だろ。曲がってるし」 『えええ、じゃあ教えてよ、付け方』 「俺がやるからダメ」 と、結局教えてくれなかった いつも付けてくれる所は見てんだけど 自分のだから逆さまだしよく見えねえんだよなあ 『なんで?』 「俺の役目だから」 『でもおれも自分でできるようになった方がいいんじゃないの?』 「だって祈織だって俺の為にコーヒー入れてくれるだろ?俺のコーヒー入れてくれんの祈織の役目だから」 『うん、コーヒー入れんのとご飯炊くのは俺の役目』 「それと一緒。よし、忘れ物ねえな?」 『うん。今日はスープにする』 「スープなー」 と、先を歩くきょうへいの後ろについて行く 『きょうへいはさー、』 「俺は?」 『昔からなんでも出来るの?』 「何でもなんて出来ねえよ。パソコンなら祈織の方ができるだろ?」 『それはおれの仕事だろ?』 「そんなもんだよ。お前も仕事でできるようになったんだろ?俺もそれと一緒。必要だから色々できるようになっただけ」 『料理も?』 「そうだなー。まぁそんなできる訳じゃねえけど」 『おれきょうへいのしゃーまん?好きだよ?』 「ジャーマンポテトな」 『うん、それ』 「お前好きな、それ。最近作ってやってねえな」 『いそがしいからね』 最近2人とも結構仕事が忙しくて 外食ばっかりだった ちなみにきょうへいはカレーもおれが作る時しか食べないから きょうへいの誕生日しかカレーも食べてない おれはたまに外食で食べるけど 「今度の休みに作るか」 『いいの?』 「あぁ、簡単だし。作り方教えるか?」 『ううん、いらない。きょうへいが作ったのが食いたい』 きょうへいがおれのコーヒー飲むのといっしょだ きょうへいと暮らし始めてもう5年以上たってて2人の役割はいつの間にか決まっていた …ほとんどきょうへいの役割になってるけど おれの役割は ご飯炊くのとコーヒーいれるの それは決定事項だったけど それ以外はほとんど役にたってない おれが生きるのに今はきょうへいが必要だった、生活的にも精神的にも …もっと、おれの役割増えたら きょうへいにおれが必要になるのかもしれない 『なぁあ、きょうへい』 「どうした?」 『おれもっとできること増やしたいんだけど』 「お、じゃあ新商品の企画やってみるか?」 『……じゃなくてさあ』 「なにが?」 『じゃなくて普通に生きてくこと。新商品の企画はまぁやってみるけど』 「なに、生きてくことって。生きてんだろ?」 『家でやる事?』 「あぁ、なに?家事とかってこと?」 『うん』 「そんなんいいよ、お前は全部俺に任せとけば。ありがとな」 と、きょうへいは運転しながらも頭を撫でてくれた 何となく嬉しいけどそうじゃないのに おれだってできること増やして きょうへいの役にたてるようになりたいのにな? 『おれができること増えたらきょうへい嬉しいんじゃないの?』 「んー、じゃあ」 『うん』 「まずはおねしょ卒業するか。まずは1週間おねしょしないように頑張ろうな」 『…おねしょしてないじゃん!3日連続』 「そのまま頑張ろうな」 と、きょうへいは笑った なんだよ、バカにしやがって 『んだよ、おれだっておねしょ治ってた時あるし。気を付ければ大丈夫だし』 ふん、と窓の外を見ると またきょうへいが笑った声が聞こえた おれは怒ってんのに、ときょうへいの方を見たけどきょうへいは前を向いていた そして 「祈織はそのまんまでいいんだよ」 と、そのまま前を向いて言った 『おれだけじゃん』 「…なにが?」 『ふん』 おれだけきょうへいの事が必要じゃん 「なんで怒ってんの?」 『怒ってねえよ』 「怒ってんだろ?」 『怒ってねえってもう。しつこい』 「ごめんって。怒んなよ」 『……許して欲しい?』 「うん。許してくれんの?」 『じゃあ…キスして。駐車場ついたら』 「ちょっとだけな。誰かに見られたら気まずいから」 『約束?』 「うん、約束する」 『…うん』 と、頷いて 早く会社につかないかな、と前を見ようとしたのに きょうへいは笑った 『なに?何笑い?』 「いや、やっぱり怒ってたんだなーって」 『怒ってねえから!』 キスしてくれんなら、いいかな

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