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第128話
「もうちょいお母さんと話せばいいのに」
『…やだよ。なんか変なこと言われそうで恥ずかしいし』
「久しぶりなんだろ?」
『たまにLINEはしてるし』
そういうもんか?
「なぁいっくん」
『…いっくんって呼ばないで』
ここおれの部屋ーと通してくれた
6畳ほどの部屋
シンプルな部屋の中に
昔の祈織が好きそうな物が詰まっている気がした
学生の頃勉強していたであろう机に
お菓子のチョコのフィギュアに
昔読んでいたであろう漫画
シンプルな色のベッドカバー
「お前の部屋そのままなんだな」
『うん、もう姉ちゃん達結婚して出ていってるから部屋も使う人いないし』
「そっか、親御さんさびしいんじゃねえの?」
一般的な大きさの家だが
2人で住むには少し広すぎる気もする
『うーん。でも姉ちゃん子供連れてしょっちゅう来てるし』
と、テーブルにお茶とお菓子を置いて
ベッドに座った祈織
チラッとベッドを確認して気付いたが
おねしょシーツだった
そういや高校の時もちょっと失敗してしまったと以前言っていた気もする
『なんかやっぱり落ち着くー、久しぶりだけど』
と、ベッドに横になって眠そうにする祈織
「高校生まで祈織ここに住んでたんだよなあ」
『部屋もらったのは高校の時からだけどね。それまではここ姉ちゃんの部屋だった』
「へえ、そうなの?」
『姉ちゃんが結婚して出ていってからここが俺の部屋になったんだ』
「へえ」
『ようやく友達呼べるって俺もうれしかった』
そりゃそうか、年頃だしな
「それまでは?どこで寝てたりしたの?」
『小学校後半くらいからしたの今父さんがいる客間?まぁあそこは部屋ってより寝る部屋って感じだったけど』
「そっか」
やっぱり部屋って嬉しいもんなんだなー
「お、チョコエッグのやつこの頃も集めてんじゃん」
『かわいいじゃん、小さくて』
「お前これ好きな」
『チョコもおいしいし』
と、ベッドに腰を下ろすと祈織もすぐ隣に座り直してじっと俺の顔をみた
「…どうした?」
『きょうへい、おれの家くるの嫌じゃなかった?』
「嫌じゃねえよ、何、きゅうに」
『だってなんか緊張してたから』
「そりゃ緊張はすんだろ、一応お前預かってる身だし」
『ごめんね、急に』
「でもお前が親と仲良さそうでちょっと安心した」
『なんで?』
「いや、お前家帰ったり全然しねえし、初めて会った時も家なくなって道ばたで倒れてたろ?」
『…それは、…恥ずかしかったんだもん。1人でできるって家出てきたのに帰ったら馬鹿にされると思ってたから…その頃はまだ真ん中の姉ちゃんこっち住んでたし』
「道ばたで倒れる方が親心配だろ」
『……いいじゃん、今はおれだってきょうへいの家が帰る家だし』
と、いう祈織が可愛くて頭を撫でる
いい雰囲気、とこういう時に使うのだろうか
そのままキスをしようとさりげなく後頭部に手を回し近付いた時だ
「いっくーん!お夕食何がいいかしら?お寿司か鰻かピザ!取るわよー!」
と、下から聞こえてきた声にびくりとして
『………なんでもいい!きょ、うへい、何がいい?』
「ええ、じゃあピザ」
『母さんピザー!』
と、祈織も下に向かって大きな声で言って
ベッドに座り直す
そしてキスをしてそうな顔で見てくるが
「…帰ってからにしよ」
と、再び祈織の頭を撫でて立ち上がると
『…しようとしたくせに』
と、少し膨れてしまった
「落ち着かないだろ、お前も。それにキスだけでお前我慢できんの?」
と、聞くと
少し考える顔をする
そして不意に
『……あ、あれ持って帰ろ』
と、立ち上がりクローゼットを開ける
諦めたか。
まぁそりゃそうか、実家だし
「…なに、あれって」
『んー、制服』
と、クリーニング済みだろう制服を出した
「制服?なんで?」
『だってきょうへいコスプレエッチすきだろ?』
「……お前なあ」
『いいじゃん。家まで我慢するんだし』
「…好きだけど」
それお前相手だからな?
『じゃあ持って帰ろー』
と、そのまま横に制服を置いた
そういや学ランって言ってたよな
クリーニングの透明ビニールはかかっているが
新品じゃなく少し着込んでいる感じの制服を見ると
これ着て学校行ってたんだなと実感してしまう
「早く祈織にこれ着せてえなあ」
『帰ってからね』
と、祈織はにやりと笑っていう
すっかりエッチになっちまったなぁ、こいつ
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