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第129話

「ほら、帰る前にトイレ行っといで。あとお父さんに挨拶もな」 と、家を出る前に 祈織をトイレに行かせて 荷物を持って先に車に詰めておく 「あの、社長さん。今日は本当にありがとうございました」 「いえ、こちらこそごちそう様でした」 「祈織がこんなに懐いているなんて、お父さん以来です。人見知りする子だったので」 「あぁ、確かに…」 「色々と、ご迷惑お掛けしていますよね?」 「いえ、そんな事ありませんよ」 「あの子、昔から少し下の失敗がある子だったので…一緒に暮らされてるならご存知ですよね?その事でご迷惑もお掛けしているんじゃないか気になってしまって」 「あー、まぁ、確かに。今も失敗してしまう事は正直ないとは言えないですが…でもまぁ迷惑なんて事はないですよ。対策もしてますし」 「末っ子なのでついつい甘やかしてしまってトレーニングもなぁなぁになってしまった私たちの責任なので」 「本人も気にしているのでそこは少し気を使って上げなきゃ行けないとは思うんですが俺もなかなかうまく出来なくて困っているのは俺より本人かもです。なのでこれからも良かったらあんまり気にしすぎないようにしてやってください」 「困ったことあったらいつでもご連絡下さいね。こちらもできることはしますので」 「いえいえ。そんな。本当に困ってないので」 まぁあんまり言われても祈織もプライドが傷つくだろう せっかく3年振りに実家に帰ったのにまた何年も帰らないとか言いかねない 『母さん、おれ帰るね』 「あら、いっくん。お父さんとお話してきた?」 『うん。じゃあまたね』 と、さっさと車に乗り込もうとする祈織 「ほら、ちゃんと挨拶しろ。久しぶりだったんだろ?」 『えええ、そんな、ないよ、えっと…』 と、まだ思春期の続きなのか 照れくさそうにしている祈織 「いっくん、また遊びに来なさいよ。お姉ちゃん達も子供連れて来るんだから、会いに来なさいよ」 『んんん、わかったよ。またくがさんと一緒でもいい?』 「当たり前じゃない。いつでもいらっしゃい」 『またね、母さん』 バイバイ、と手を振ったのを確認して 俺も挨拶をし 会釈をして車を出す 『んん、疲れた』 「疲れたってお前の実家だろ」 『そうだけど。もうきょうへいの家の方がおれの家なんだもん』 「そっか、疲れたなら寝ときな。休憩の時起こすから」 『食いすぎてお腹パンパンでねれない』 「お前いっぱいピザ食ってたもんな」 『ピザ久しぶりだからうまかった』 「食いすぎて気持ち悪くなってねえ?」 『うん。へいき』 と、本当に苦しいのかぼーっと窓の外を眺めてる祈織 『なぁ』 「どうした?」 『母さんと何話してたの?』 「いや別に。なんかあったら連絡してって言われたかな」 『そっか、』 「お前は?お父さんとなんか話したのか?」 『うん、仕事のこととか、帰って来ないのかとか』 「それで?」 『仕事、ちゃんとしてるからまだ帰らないって言った』 「そっか」 『…きょうへい、水飲んでいい?苦しい』 「飲みすぎんなよ」 『うん』 と、相変わらず返事とは裏腹にぐびぐび飲む祈織 「あー、そうだ」 『なに?』 「まだいつかは決めてないけど、引っ越すか?」 『……え?おれが?』 「おれがっていうか2人で」 『2人でか。なんで?会社から近いからいいじゃん』 「でも狭くね?あれ元々は俺一人用のサイズで借りてる家だし」 『…きょうへい狭いの?』 と、不安そうな顔で見てくるが祈織 「いや、俺じゃなくてお前がな?」 『せまくない』 「でもお前自分の部屋とかいらねえの?俺は仕事部屋一応あるし。プライベートな空間っていうかお前のものとか置くスペース作りたかったりねえの?」 『…べつに、』 「お前のチョコのフィギュア飾ればいいじゃん」 『…きょうへいがその方がいいならそうする、』 「うん。じゃあ今度不動産屋とか行ってみるか」 『…きょうへい、おれ寝るから』 と、祈織はやっぱり疲れたのか窓に寄りかかって寝てしまう 今から寝るならもうちょいしてから休憩するかな ◇◆ 「ほら、祈織休憩。起きな。おしっこいこ」 と、肩を揺すって起こすが 『…や、おきない』 と、首を振る 「おしっこ漏れちゃうぞ?」 『…いいもん、もらすもん』 と、首を振って降りようとしない これはもうダメだな、と もうちょいしてからもう一度休憩することにして車を発進させる 『…きょうへい、』 なのにそこで起きた祈織は なんだか泣きそうな情けない顔で見てくる 「どうした?おしっこやっぱりしたい?」 しかし首を振って ぐしぐしと目を擦る 『きょうへい、おれとちがう部屋がいいの、?』 「なに?さっきの話?」 『…うん、』 「違う部屋っていうか、お前も部屋欲しいだろって話」 『だって、』 と、ぐすぐす鼻を啜っていて ほぼ泣いていて寝ぼけているのもあるようだ、 寝ぼけてるし泣いてるし これおしっこ漏らすかも さっき漏らすとかいってたし、と 車を端に寄せて後ろからパットを取り出す 「パットだけ入れとこ。おしっこ漏れちゃったら困るから」 『…うん、』 と、パットを入れておしりの下におねしょマットを敷いてやると大人しく言うことを聞いた さて、と車を出すと 『きょうへい、』 「なに?」 『おしっこ、していい?』 「…」 やっぱりしたかったのかよと 少し呆れてしまうが 「いいよ、しな」 大容量のパット入れたし、と許可をしてやると 『…っん、』 と、少しだけ震えて 身体から力を抜く 『はぁ、』 「…おしっこきもちいいか?」 『…うん、きもちいい、』 「沢山でた?」 『そんなに、』 「次コンビニ見つけたら停めるからそれまで濡れてんの我慢できるか?」 『いい、早く帰る、』 と、ほぼ泣きながら首を振る祈織 「20分くらいまだかかるぞ」 『いいもん、』 「なぁ、なんで泣いてんの?何がやだった?」 『…なんでもない、』 泣いてんだからなんでも無くねえだろ、とため息が出てしまう 「なに?ホームシック?」 『ちげえし、なんでもないの』 「さっきの……お前も部屋あった方が良いと俺思ったんだけど違うか?実家にだって自分の部屋あっただろ?」 『…うん、』 「何が嫌なの?」 『…いやじゃない、おれも、へや、ほしいから』 「じゃあ泣くのやめような、目腫れるし」 『…うん、』 と、頷いたが相変わらず元気が無かった なんだ?寝ぼけてんのか?

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