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第130話

部屋なんていらないのに、 きょうへいのこの家でずっと一緒に暮らしたいのに きょうへいがその方がいいって言ったから 部屋欲しいって言ったけど、本当はいらない 何していても悲しくなってしまった 家に帰るとそのまま風呂に入れてくれてキレイになってもずっともやもやしていて 実家でもらってきたオレンジを きょうへいが剥いてくれて食べていてももやもやは消えなかった 今は、おれの部屋ないから きょうへいの寝室で寝させてくれてるけど きっと自分の部屋ができたら1人で寝なきゃいけないんだ きょうへいもその方がいいと思ってるからあんな事言ったんだ おれは、このきょうへいの家に住んでいるのが好きなのに 離れたくないのに でもきょうへいは 1人用に借りた家って言ってるから おれと2人だったら狭いと思ってるし 狭いから、おれのことも考えてくれて 広い家に引越し考えてるんだ でも、嫌なもんは嫌だ そんな事考えながら寝たせいかもしれない ひやっとした感じで起き上がる なんだ、と思ってすぐ気づいた 『ぁ、おしっこっ、』 急いでおしりの下を確認すると シーツにも少しだけシミができてしまっていた おしっこ、漏れてる おねしょした、 最近ずっとおねしょしてなかったのに 『っ、』 悔しくて目の前がじわりと滲み 鼻がぐすぐすとなってしまう 『どうしよ、っ』 隣のきょうへいをみたらまだ寝ていて 前みたいに起こせばいいのに 起こせなかった 『…きょ、ぅ、』 おねしょ治ったってきょうへいほめてくれてたのに、 ちょっとしか濡れてないから朝謝ろうと決めて そっとベッドから抜け出した 悲しい、せっかくおねしょ治ったと思ったのに おしっこまだでるかもと 先にトイレに行くと スウェットとパンツをまとめて下ろそうとしたら ぐっしょりと濡れてくっついて脱ぎにくかったけどどうにか下げてトイレにちんぽを向けると またたくさんおしっこが出た ベッドびしょびしょにならないくらいだからまだ残ってたのか トイレの後にそのままお風呂に向かって スウェットとパンツはまとめて脱いで おもらし用のバケツにとりあえず入れておく そのまま濡れてしまった所は シャワーで流すと 濡れていたから冷えていたようで温かいお湯が気持ちよかった 気持ちいいはずなのに、 やっぱりおねしょしたっていうのが悲しくて 目の端もじわじわ熱くなってくる すんすんと鼻を鳴らし シャワーを終えると 心配だったから寝るとき用のもこもこパンツを履いてスウェットを着て タオルを持って寝室に戻る 濡れてしまった所の上にバスタオルを敷いて その上に寝ると 全然濡れてるのはわからなくなったけど やっぱりもやもやしてきょうへいにくっつくと 「ん、祈織?」 と、振動で起きたのか ほぼ寝ながらおれの名前を呼んで背中を撫でてくれる 「どうした?」 『…なんでもない、』 「なんでもねえの?泣いてんじゃん」 『…泣いてねえし、』 「ほら、おいで」 と、背中を引き寄せてくっついてくれる 『ないてない、』 「泣いてねえならいいけど」 と、涙を手で拭ってくれる 「…着替えてきたの?」 『うん、着替えた、』 「バケツに入れといた?」 『うん、自分でしたよ』 「えらいじゃん」 と、やっぱりきょうへいにはバレてしまっていたけど怒られなかった 『きょうへい、』 「寝れねえの?」 『…ねれる、』 「そっか、じゃあ寝な」 『…うん、』 「祈織、」 『なに、』 「そんな嫌ならやめよ、引越し」 『…だって、きょうへいはその方がいいんだろ、』 「祈織は嫌なんだろ?」 『…だって、自分の部屋、』 「欲しくねえの?」 『…きょうへいは、』 「俺じゃなくてお前の話しな。祈織、お前も大人なんだからそろそろ自分の事ちゃんと話せるようになろう」 『そんなん、』 おれのことじゃなくて おれはきょうへいのやりたいようにしたいのに でも、それはおれが嫌で… きょうへいに迷惑かけることなんてわかってるのに我慢できなくて情けなく悲しくなる 『…かなしい、話だけ、していい?するだけだから。そしたらちゃんと我慢するから』 「あぁ、何が悲しいのか教えて」 ちゃんと話さなきゃとベッドに座り直してきょうへいの顔を見ると きょうへいも座り直してくれる 『おれは、きょうへいと2人でいる事がすきだから』 「俺もお前と一緒にいるの好きだぞ?引越しても一緒にいるし」 『でも、部屋あったら、そこで、寝なきゃいけないし、』 「は?なんで?」 『だって、おれの部屋、』 「いや、ちげえから。お前の部屋あったらそれはそれでプライベートスペースだし、寝室は別に今まで通り2人の部屋だぞ?」 『…そうなの?』 「そうに決まってんじゃん。このベッドどうするつもりだったんだよ」 『…そこまで、考えてなかったけど、』 「一緒に寝るに決まってんだろ。じゃなきゃお前も俺ももうよく寝れねえもん」 『…そっか、』 そうなんだ またおれの勘違い、 「俺はお前も部屋欲しいかと思ったんだけどあると不安になるか?なら引越しやめよ。俺もこの家気に入ってるし」 『…きょうへいが、狭くなければおれ自分の部屋なんていらない』 「うん。じゃあ引越しは無しな。他には?悲しいこと」 『…おねしょ、した』 「もうお着替え自分でできたろ?」 『うん、』 「シーツは?」 『タオル、してる』 「そっか、そしたら朝一緒に洗濯しようなー」 『うん』 「悲しいの全部話せたか?」 『話せた、話すだけのつもりだったけど』 「話して解決出来て良かったな。ちゃんと言えばこういう風に解決できんだからお前も我慢しなくて全部俺に話せばいいのに」 『だって、言っていいかわかんねえし』 「言っていいんだよ。ほら、朝まで時間あるからもう1回寝よ。悲しいの無くなったからよく寝れるだろ」 『うん、寝れる』 ほら、と肩までまた布団をかけてくれる 「…祈織、俺と一緒に住んでるの辛い?」 『なんで?おれきょうへいと住むの好きだよ?』 「ならいいけど」 と、きょうへいは眠ろうと目を閉じた なんでそんな事聞いたんだろ、 おれきょうへいと2人でいる事がすきってさっきも言ったのに

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