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第134話
『あー、うー…』
おしっこしたい、漏れそう、
運転しながら
もじもじと腰を動かす
『も、れる、』
コンビニとかよれば良かった
でも1人でコンビニのトイレ借りれないから結局コンビニ行ってもトイレ行かなかっただろう
きょうへいが実家に帰ったから
おれもお父さんの様子が心配だから実家に帰ることにした
『…んん、』
信号待ちでちょっと止まる度に
股間をぎゅっと握っていたけど
家に着いた時には限界で
抑えていても先っぽからちょろ、とおしっこご溢れ出していた
パンツ濡れたじゃん、と1人で怒りながら
どうにか車を駐車場に止めて
急いでエレベーターのボタンを押すけど
『んっ、もれ、っ』
エレベーターに乗ってもじっとできなくて
もう手を離せなくて
股間を抑えてジタバタと足踏みをする
そんな時に限って1階でドアが開いたから
「こんばんは」
『…こんばんは、』
帽子を深く被り直して
頑張って手を離して挨拶をするけど
手を離している間
どんどんパンツの中が濡れる
『っ、』
漏れちゃう、ともう抑えるしかなくて
ぎゅっと握って揉みしだいてどうにかおしっこを止める
しかし、下を向いていたから気づかなかった、
「…お手洗い行きたいのかな?」
と、多分下の階の人、
その人が一緒にエレベーターに乗っていて
おれの事を見ていたのだ
『ち、が、』
「あぁ、もう出てきちゃってるみたいだね?」
と、おれの手の下でじわじわとズボンに広がるシミを見られてしまう
『…ご、めんなさ、い、』
「大丈夫かな?我慢できる?もうむりかな?」
『だ、大丈夫、』
「無理そうだったら無理しないでね?僕が管理会社に連絡もしてあげるし、」
そんなのいやだ、と
首を振って
でもおしっこはちょっとずつ、
手の間から零れてく
「あ、そうだ、いいものあるよ。足りるといいけど」
と、下の階の人は
カバンを開けて
中からタオルを取り出す
「はい、どうぞ」
と、こちらに差し出すけど
『い、らない、です、』
「でも床にこぼすより君もいいんじゃないかな?」
と、言われて恥ずかしくて涙が滲んだ
知らない人におしっこ漏らしそうなのバレてる、
知らない人の前で
おしっこ漏らしそうになって心配されてる、
おしっこ漏らしたら怒られるかも、
これ以上迷惑かけたらだめだ、と
震える手でタオルを受け取ってどうにかズボンの中心に当てると
すぐにタオルもじゅわっとあったかくなる
『っん、』
「大丈夫だよ、もう着くからね」
下の階の人なのに
多分ボタンは押さなかったんだと思う
エレベーターはきょうへいの家の階に止まって
下の階の人は支えてくれようとしたけど
大丈夫と手を振り払って
部屋まで急いだ
部屋に着くとカギは開いていて
急いで中に入るけど
『ぁっ、』
そこで限界だった
抑えていたタオルを突き抜けて
手のひらに温かい水がかかる
「おかえ、あー、でちゃってんじゃん」
『きょ、』
「あー、ほら。ちょっと待ってな」
と、玄関から一歩入ったところで
すぐにタオルを持ってきて
まずはいつもみたいにびしょ濡れになった手から拭いてくれた
そして
立ち止まっていたおれのズボンを脱がせて
すぐに新しいタオルで拭いてくれる
『ごめんなさい、』
「足上げて」
『…はい、』
と、足を上げると
足の裏も拭いてれる
「ほら、あとはシャワー行っといで」
『…やだ、きょうへいがやって、』
「甘えん坊だな」
『だって、やだったんだもん、』
「しょうがねえなあ」
『ごめんなさい』
「いいよ」
ほら、と背中を押して風呂まで連れてってくれるけど
おもらしして悔しいしはずかしくてきょうへいの顔を見れなかった
でも、足元からお湯をかけてくれると
言わなきゃいけないことを思い出した
『………きょうへい、』
と、きょうへいの顔を見ると
きょうへいも次の言葉を待つように
おれの顔を見返してくれる
『ただいま』
「…あぁ、なるほど。おかえり」
『きょうへいも、おかえり』
「うん、どうだった、実家」
『お父さん、元気だった…けど昨日の夜おねしょした』
きょうへいに会えなくて寂しかったからだ、きっと
寝る前トイレいったし
「あー、そうだったか。大丈夫だった?ベッドとか」
『…お父さんに、手伝ってもらった』
本当は隠すつもりだったのに
起きて下で自分で洗濯しようとしたらばれた
「そっか」
『……きょうへいは、実家、』
「あー、まぁ法事だからちょい慌ただしかったな」
『こたは?』
「大きくなってたぞ。なんかすげえすらすらしゃべるし」
『そうなの?』
「まぁもう幼稚園児も行ってるからなー、どんどん赤ちゃんじゃなくて子供になってる」
『へぇえ、』
よし、キレイになった、と
洗い終わった所でタオルで拭いてくれて
リビングに行ってから
久しぶりに感じるこの家ときょうへいの姿に
すぐに抱きついて
抱っこ、と脚を絡めると
ソファに座って腰をぽんぽんと撫でてくれる
『なぁ、きょうへいは?』
「なにが?」
『おれと会えないのさびしかった?』
「あぁ、さびしかったぞー。お前と3日一緒にいないの初めてだもんな」
『そうだよ、』
「ちゃんとさびしかったから安心しな」
『なにそれ』
なんだよ、ちゃんと寂しかったって
よくわかんないけど
ちょっと嬉しくてそのまま身体を擦り付けた
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