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第139話

『あきらくん顔に何塗ってんの?』 「何って何が?」 『お風呂上がり色々してるって前言ってたじゃん』 「あぁ、化粧水とかってこと?」 『うん』 「最近はIPSA」 『いぷさ?』 「知らないの?化粧水有名じゃん」 『しらない』 「ええ、いおりんは何使ってんの?」 『わかんないけど、きょうへいが家に置いてるやつ』 「社長と一緒のやつじゃなくてさー肌診断とかして自分にあったやつ使った方がいいよ?つかいおりんそんな自分に無関心なくせにイケメンとかむかつく」 『だって。わかんねえじゃん。だからちゃんとしようとしてあきらくんに聞いてんじゃん』 「オレ色々やって努力してんのにさー」 『あきらくんちゃんとイケメンだもんね』 「なんかその言い方気に食わないけど。オレだってなんもしなくてもイケメンだけどさらに努力してるだけだし」 べつにそういうつもりじゃなかったのにな 怒らせたかな でもこの前いじわるされたからいいや 「今日買いに行く?残業無いでしょ?」 『ない、連れてってくれんの?』 「いおりん1人じゃ行けないでしょ」 『うん』 あきらくん優しいじゃん、と きょうへいに今日はあきらくんと寄り道すると伝えて 仕事の後にあきらくんに連れて行ってもらうことにした 「よしいおりんいこー」 『うん、どこ行くの』 「とりあえず有楽町のルミネ」 『ふーん』 「どこの化粧水が欲しいかとかちゃんと調べた?」 『調べてない。あきらくんが言ってた所でいいって。なんだっけ、ぷ、ぷ?』 「IPSAね」 『そうそれ』 それが何かよくわかんないけど とりあえずあきらくんに着いていくと なんだかほぼ女の人しかいない とても居づらい場所に連れてこられて 『ここなの?』 「うん。色々店舗あるけど三越とかよりこっちのが入りやすいと思って」 と、あきらくんはさっさと中に入っていくけど 全然入りやすくなくて あきらくんに置いてかれないように あきらくんの服の裾を掴んで 必死についていく 「ちょっといおりんじゃま。自分で見なよ」 『わかんねえし。あきらくんと同じのでいいって、どれ』 「そんなんじゃせっかくここまで来た意味ないじゃん。ほら、肌診断してもらいなよ」 と、背中を押されるけど そんなんどうしたらいいかわかんないから あきらくんの顔を見ると ため息を吐いて店員さんに話しかけてくれる どうしたらいいかわからないでいると 座らせられて顔になんか機械をあてられ ぴぴ、となにやら計られる 「水分と油分のバランスがとてもいいです」 「いおりんなんもしてないくせにずる」 『バランス?』 「強いていえば水分をもう少し入れてあげるとトーンアップに繋がると思いますが」 『はい、』 と、言われるがまま 化粧水と乳液と美容液?って言うのを買って店を出た 「めっちゃ買ったじゃん」 『だって何回も来たくないもん』 「つかなんで急に買おうとおもったの?そういうの」 『きょ、…あいつが、おれのことかわいいって言うから』 「え?それが?」 『…だから、かわいい方がいいじゃん、』 「いおりんって何気健気なんだねー」 と、2人であきらくんの車に帰る 『付き合ってくれたお礼にご飯奢る。どっか入ろ』 「まじ、ラッキー。どこいこっかなー、何か食いたいのある?」 『カレーかハンバーグ』 「いおりんそればっかり食うよね」 『家できょうへいカレーしてくれないんだもん』 「嫌いなの?」 『ちがうけど』 家でカレー食べるのは おれがきょうへいの誕生日にカレー作る時だけだし そんなことを考えながら 買ったものを見ようとお店の紙袋を覗いていると カチカチとウィンカーがなる音がして あきらくんが駐車場に入ろうとしているのがわかる しかし顔を上げて外を見ると 地下の駐車場のようで辺りは暗くなっていた 『どっちにした?カレーとハンバーグ』 「んー…、?」 と、おれの事より駐車に専念しているから まぁいいか、と そのまま車が停まるを待ち 車を降りると 「いおりん行こ」 『…え?うん』 と、車の中に買ったものを置いていこうとするが 「使い方教えてあげるからそれ持っておいでよ」 『なんで?』 ご飯でしょ、と思いながら聞いてみると 「いいから」 と、おれに紙袋を持たせ 車の鍵を閉めたら すぐに手を繋がれる 『あきらくん?』 「奢んなくていいからついでにお礼してよ」 と、1歩前を歩くあきらくんの顔は見えなくて 不安に思いながらも店内に入ると きょうへいと何回かしか来た事ないけど分かってしまった 『あきらくん、ここ』 しってる、ラブホテルだ 「いおりん、お礼して」 『やだよ、なんで。ご飯おごるって』 「だってムラっと来ちゃったんだもん。そういう時あるでしょ?」 『やだ、あきらくん、お店でよ』 「いいじゃん、じゃないとこの前の事、社長に言っちゃうよ」 『…それは、やだ、』 「今日したらもうしないから」 と、あきらくんは部屋を選んで 鍵を受け取ると すぐに部屋に向かうエレベーターに乗り込んだ 『やだ、』 「いやじゃないよ」 と、おれの手を引くあきらくんの手に少しだけ力が入った やだ、もうあきらくんと悪いことしたくねえのに でも、きょうへいに 悪いことしたの、言われたくない

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