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第142話

この前はありがとね! 凄く楽しかったよ と、可愛い絵文字と一緒に女の人の名前から きょうへいのLINEにメッセージが入った いや、ハート送ろうとして 許可取って借りてたら急に来たから とりあえず見ないふりをして 画面を下に向けて机の上に置いておいた 明らかに仕事関係のLINEじゃない、 だれ、高橋真由って この前ってなに、 何、楽しかったよって どこか行ったの? いつ? もやもやもやもや考えていると きょうへいが戻ってきて 「どうした?」 と、思わずきょうへいを見てしまったから 首を傾げられる 『…な、んか、LINE、来てた』 「LINE?」 と、きょうへいは伏せて置いてある 携帯を手に取って 確認して 何やら操作をする 「祈織、見た?LINE」 と、聞かれて 少し迷うけど 『みてな、い、』 と、思わず嘘をついてしまう 「そっか、」 『うん、』 見られちゃいけないLINEだったのかな 『なんで?』 「いや、別に」 聞いていいのかなって迷ったけど 『だれから?』 ずっともやもやしてんのも嫌で 聞いてしまう 「ああ、高校の、同級生」 『…へえ、同級生、あ、この前の同窓会の』 「そうそう、それで久々に会ったんだよ」 『そうなんだ、』 LINEに書いてあったこの前って、 同窓会の事だったのかな、 いや、でも、 同窓会行ったの結構前だし 今更わざわざきょうへいにありがとうって言うのかな やっぱり会ったのかな、最近 2人でとかで 『仲良かったの?』 「…あぁ、…まぁ、昔付き合ってた」 『つきあって、』 「いや、昔だからな、昔。今はなんもねえよ。お前もいるだろ?昔付き合ってたやつぐらい」 『いるけど、…なんも言ってねえじゃん、』 「いや、気になるって目で見てたから」 『…だって。気になるもんは気になるだろ、』 「ふーん」 きょうへいは少し笑って俺の頭を撫でた 『ちょ、なに?』 「ヤキモチ妬いててかわいいなあって」 『うっせえ、妬かせんな、』 「んだよ、反抗的だな。ごめんごめん」 と、またきょうへいは笑った んだよ、それ 『会った?』 「何が?」 『…その人と、』 「あぁ、だから同窓会の時な」 『それだけ?』 と、聞きたくないことまで聞いてしまって自己嫌悪 「それだけだよ。ほら、おいで」 と、おれがもやもやしてんの気付いたのか きょうへいはおれの腕を引いて隣に座らせてくれた 本当は他にも会ったんじゃないのかなって きょうへいの事を疑ってしまうのも嫌で でもきょうへいの事信じてないって きょうへいに思われるのも嫌で それ以上は聞けなかった 「もうただの友達だよ。心配すんな」 と、きょうへいは言った でも、きょうへいはただの友達と思ってても向こうはそう思ってないかもしれないじゃん、 『…きょうへい、女の人と付き合ってたんだ、』 「…だから昔な。お前もそうだろ?」 『…うん、』 「昔の話だって」 『でも、きょうへいの両親はそうして欲しいんでしょ?』 「お前、何言ってんだよ。昔の話だって言ってんだろ?何にもないよ、もう高橋とは」 『…おれに、えんりょとか、しなくていいから』 「は?」 『だって、その方が正しいだろ、?』 「なんだよ正しいって」 『おれと、セックスしてるより、女の人とちゃんと付き合って結婚した方が正しいじゃん』 「は?お前にそんな事言われたくねえんだけど」 『…おれは、きょうへいに迷惑かけてきょうへいが我慢すんのやだ』 「いや、俺なんも我慢してねえって。なんだよ、高橋とはなんでもねえって言ってんだろ」 『…その人の事だけじゃなくて、今後』 だって、きょうへいはおれとセックスしてくれるだけじゃん、結局は おれのこと、別に好きじゃないし 甘やかすの好きだから おれと一緒にいてくれけど 甘やかしたいとかじゃなくて ちゃんと好きになる女の人が現れたら きっとそっちにいくんだ、 おれはやだけど その方がいいに決まっていた 世間一般的に そっちの方がきっと 正しい、 「今後とかねえから、俺はずっとお前と一緒にいるし。お前も俺と一緒に居たいっていっつも言ってんじゃん」 『うん、それは、そうだけど』 「だったら、変なこと言うなよ」 『…ごめん、』 そうだけど。 おれはずっときょうへいと一緒にいたいけど おれももう大人だから なんとなく それが許されないって事をわかってしまっていた 「なぁ、お前なんでそんな無駄なこと考えるようになったんだよ」 『なんでって、』 「俺お前の事不安にさせてるか?」 『ちがう、きょうへいはわるくないって』 「どうすればお前が不安になんないのか教えて」 『それは、だから、』 きょうへいは悪くないんだ ペットのおれが勝手にペット以上の事求めて 勝手にもやもやしてるだけだから 『おれ、不安じゃないよ、何ともない』 ペットじゃなくて おれのこと好きになってなんてわがまま 言えなかった だから不安じゃないって言って 不安じゃない顔してきょうへいにキスをした

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