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第148話

大人げない事はわかっていた ただ、1人で冷静になりたかった じゃないとあいつに酷いことを言ってしまいそうだったから 家に帰る事はできず 適当なビジネスホテルに泊まることにした 祈織から何度も電話はかかってきていることには気付いていた しかし、出たところで何を話せばいいかわからず放置していたら 諦めたのか 祈織からLINEだけ入って 連絡は来なくなった しかし、1人でいても考えるのはあいつの事ばっかりだった 飯食ったかなとか 泣いてんじゃねえのかなとか ちゃんと寝る前におむつ履いたかとか 不安な事ばっかりだった  ただ、いざ家に帰ろうとすると 祈織の言葉を思い出しどうしようもなくイライラして携帯を投げたら壊してしまった 『…おれ、きょうへい以外の人とするの、やっぱり浮気なの?』 『だって、おれ、きょうへいと……つきあってねえじゃん、』 勘違いだったのだ 俺は祈織の事が好きで 祈織も、俺の事が好きだと思っていた しかし、俺の勘違いで あいつからしたら 俺以外のやつとするなんてなんともない事で ただ、他のやつより俺には少し懐いていた それだけの話だった 俺のことが好きな訳じゃない 刷り込みだった 依存だ 俺のペットとして飼い主に捨てられないように行動していただけなのだ 犬が飼い主に懐いているのと一緒だったのだ 恋愛感情とは違うものだった なのに俺が勝手に勘違いして 勝手に怒っていただけだ 1晩じっくり考えたら落ち着いてきた 俺が結局1人で勝手にイライラしていただけだったのだ 帰るか、とチェックアウトギリギリの時間までうだうだしてしまったが 家に帰ることにして 往生際悪く 真っ直ぐ家には帰らず 適当に飯を買ってから家に向かった ふぅ、とひとつ息を吐いてから 鍵を開け家に1歩踏み入った時だ 『きょ、』 と、驚いた祈織の顔 そして、びちゃ、とあいつの足元に水が溜まっている事に気付く 「あ、漏らした?間に合わなかったか?ちょい待て、タオル取ってくるから」 と、あまりにもいつも通りの言葉が出て自分でも少し拍子抜けしてしまった 祈織を風呂に送り出して とりあえず俺は片付けてリビングに戻り 買ってきた物を温め昼飯の準備をした あいつが出てきたらちゃんと話そう そう思う気持ちと 何にも話したくない気持ちが俺の中で競っていて堪らなくイライラした 落ち着いたと思っていたのに よく考えれば 最近ケンカばっかりだった 引越しの事、 見合いの事 高橋との合コンの事 あいつも俺に不満が溜まっているのかもしれない だから、浮気なんてしたんだ いや、付き合ってねえんだから浮気じゃねえか 『きょうへい、でた、』 「おお。飯食った?」 と、何も考えずに 聞いたけど 祈織はすぐに俺に近寄ってきて抱きついた 『……帰って、こないかと思った』 「いや、明日帰るってLINEしたろ、」 『そうだけど、』 と、ゆっくりと俺から離れ 俺の足元にお座りをした祈織 『ごめんなさい、おれ、きょうへいに、謝りたくて』 「…なんで、謝るんだ、?」 『…おれ、あきらくんと、悪いことしたから』 「悪いことって思うのか?」 『……わからなかったんだ、最初…友達同士ならするって、昔、汰一に聞いた事あったから…していいのかと思ってた』 こんな事、聞きたくねえ 「…もういいよ、」 仕方がない事なのだ 『よくないじゃん!きょうへい怒ってんじゃん』 「…そりゃ……怒るだろ、」 『きょうへい、おれのこと、きらいになった?』 「嫌いになんてなってねえよ、」 『どうしたら許してくれるの?』 「だからもういいって」 『そうじゃねえじゃん、ちゃんと教えてって』 「怒る俺が間違ってたんだよ。1人で考えて分かったから」 『おれが、悪いことしたんじゃん、なんできょうへいが間違ってるとか言うんだよ』 「だって別に付き合ってるわけじゃねえんもんな。悪かったよ、変なこと言って」 と、足元に座る祈織の頭を撫でようと手を伸ばすと 祈織はその手を払い立ち上がる 『そうだけど……きょうへいは…そうおもうの、おれが、…』 「ごめんな、勝手に俺がイラついてただけだ。お前は俺のモンじゃねえ」 『なんで…そういう事、言うんだよ、』 「本当の事だろ」 『ゆるしてくれてないじゃん、おれ、ちゃんと謝るから、きょうへいが嫌ならもうしないし、きょうへいに嫌われたくない、』 「許してないとかじゃねえよ。大丈夫。イライラしただけ」 『大丈夫じゃない、嫌いにならないで、突き放すなよ』 「お前が何しても俺はお前の事嫌いになんねえから」 『でも、』 「…俺はお前の事、大事だし。許すとか許さねえとかの話じゃねえんだよ」 『じゃあどうすればいいの?おれ、きょうへいに捨てられたくない』 「どうしようもねえ事だろ…結局は、お前が俺のこと求めるなら俺は今まで通り応えるだけだよ」 『そんなん、おれ、どうしようもねえじゃん、』 「俺が許す許さないの話じゃないだろ?俺はお前の事、結局見放せないし、昨日だってお前の事ばっかり考えていた」 『おれのこと、捨てない?』 「あぁ、捨てないから。ごめんな、もうこの話は終わりにしよ。悪かったよ、グチグチ言って」 『…もう、しないから、ごめんなさい』 と、祈織は俺に抱きついてきて 祈織の頭を俺も撫でる こいつの体温、やっぱり離したくねえな 悔しいけど 求められる限り応えることしか俺にはできないのかもしれない

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